朝のダンジョン前は人が多い。
朝早くからダンジョンに潜り、できるだけ長く探索し、多くの収入を得る。
そういった思考の冒険者は多く、空が白み始め、周囲が薄く見えるようになった今くらいの時間帯は人が多くなっている。
「さて、ベル君達はいるかな?」
前日に頼んだから、今日は無理かもしれないが、歩きつつしばらく待ってみよう。
フラフラと歩き回り、道行く人々の中にベル君達を探す。
装備の確認をするもの、準備運動をするもの、作戦を確認しているもの、ダンジョンの雰囲気に慣れず強ばった表情をしたもの、色々な人々を尻目に歩き回る。
と、前方に周りをキョロキョロ見回している見慣れた白髪が。
「ベルく──」
「おい。」
「あ、あなたは……」
声をかけようとした時、別の冒険者がベル君に声をかける。
一般的な冒険者らしくガラが悪く粗野な雰囲気を放っており、ベル君の友人という雰囲気でもない。
「お前、あのガキとつるんでんのか?」
冒険者は嘲笑とも見下しとも感じられる悪意を滲ませた視線を、少し先にいたリリに向ける。
サポーターを冒険者の下に見る偏見というのは、確かにある。だが、あの男がリリに向けていた視線には、それ以外の感情も含まれているようだった。
「となると、何も知らねぇってわけじゃあるまいな?」
「な、何がですか……?」
「惚けんな。お前、俺に協力しろよ」
ベル君に肩を組み、周囲から聞き取れないよう小声で話す。近くで耳を澄ませる俺には、全て聞こえているんだがな。
何が何だか分かっていないという様子のベル君に、下衆な根性を伺わせる笑みを浮かべて誘いをかける。
「一緒にあいつを嵌めるぞ」
「なッ!?」
ほう。
「そんな顔すんなって。お前だって、あいつの溜め込んだ金を狙ってんだろ?冒険者同士、協力して役たたずな荷物持ちからたんまり巻き上げようぜ。な?」
サポーターへの偏見があることは知っていた。見下されているのも知っていた。だが、ここまでだったのか。
サポーターの存在がダンジョンにおいてどれだけ助けになることか。
素材やポーション、軽装や砥石を持つことに集中してもらい、ダンジョンという少しの重さが命取りになりかねない場所で、俺たち冒険者が荷物を気にせず、身軽に動ける事の心強さが何故分からない。
まして、他者の必死に貯めた金を盗む為だけに、人の命を弄ぶという発想が邪悪そのものだ。許してはならないものだ。
この男、手指を切り落とし二度と冒険者を名乗れないようにしてやろうか……
「嫌だ」
ピシャリと、ベル君が答える。
それまで慌てていた様子とは無縁の毅然とした声。
それほど大きな声でもないだろうに、耳にというか、心に響くような力強さ。
肩を組みでいた男から離れ、腰を落として戦闘態勢を整える。
「絶対に、嫌だ……!」
声には怒りが滲み出て、構えには感情の昂りと同じような力みがあった。
「テメェ……この糞ガキがぁ……!」
勧誘が上手くいかず、青筋を浮かべ苛立った様子の男だったが、ベル君が都市内で構えてたことによって、周囲から注目が集まっていることに気づくと、悪態をつきながら去っていった。
「ベル様?」
「リリ?いつからそこに……?」
俺が声をかけようとする前に、ベル君の先にいた様子のリリが近づいてくる。
ベル君はリリの突然の登場に驚いた様子だ。かく言う俺も思わず人影に隠れてしまった。いやなんか、気まずいというかね……
「あの冒険者様と、何を話していらしたんですか……?」
「えっ!?い、いやぁ、大したことじゃないよ!せ、世間話とか?うん!!」
ベル君、それはあまりにも無理がある……。
バタバタと腕を振り乱し、目線があっちこっちと泳ぎながら、嘘だと丸わかりの誤魔化しをするベル君。
まぁ、嘘がつけないほど素直で純粋な人間ということで、いい事だと思おう。
実際、上手い嘘をつけるほど嘘に慣れた人は居ない方がいいしな。
「そ、それよりリリは!?絡まれてたみたいだけど、大丈夫だった?!」
あぁ、冒険者に絡まれてたから背の低いリリのことが見えなかったのか。気づかなかったわけだ。
「はい、大したことありませんよ、さっさと行きましょう」
どこか空虚な笑顔を見せるリリ。
リリは心配げな表情を浮かべるベル君に背を向けて、足早にダンジョンへ向かう。
前に会った時よりも目深にフードを被り、力なく俯きながらベル君を尻目に歩くリリ。
「もう……潮時かぁ……」
ポツリと呟かれた言葉が、俺の耳に届く。
潮時、他の冒険者がリリを嵌めようとしていることをベル君が知ったから?いや、この場合は嵌められるようなことをリリがしているからか?
分からないが、リリがベル君とのパーティーを解消しようとしているというのは理解した。
「やぁ、ベル君、リリ」
「わぁっ!?!?」
「えっ!?ズィーヤさん!?」
まぁ、それに関して俺にできることは少ないので、普通に声をかける。
俯いていたリリは突然前に現れた俺に気づかず、もう少し重心が前にあったらぶつかるところだった。
驚いた瞬間に声をかけた結果、恐らく珍しいであろう、リリの驚愕の声を聞くことが出来た。
「どうしてここに……?」
「あ、やっぱり前日の言伝は無理だった感じね……いや、この前誘ってもらった共同探索、2人さえ良ければ今日やりたくてね。2人が来るのを待ってたんだよ」
「そうだったんですか……僕は嬉しいですけど……どうする?リリ……」
「……ベル様が良いというのなら、リリとしてもお断りする理由はありません!ズィーヤ様、今日はよろしくお願いします!」
「あぁ、足を引っ張らないように頑張るよ」
こうして、俺達の共同探索が始まった。
「はァっ!」
「おぉ、凄い速さだな」
「ベル様ぁ!前に出すぎないようお願いしますよ!」
ダンジョン上層7階層
俺が初めての階層に多少緊張していると、早速キラーアントが襲いかかってきた。
事前に決めていた通り、キラーアントとの戦いに慣れているベル君に先に戦ってもらい、キラーアントの急所や習性を改めて確認する。
「やっぱり関節が急所になるのか……あの甲羅はベル君のナイフでも貫けないのか?」
「うーん……貫けないことは無いんですけど、力も速さも関節よりずっと必要ですし、確実に倒せる自信がなくて……」
「なるほどな……ベル君のナイフでもそうなのか」
なら、俺の魔法じゃ少し怪しいか……?いや、まずは試してみる方がいいか。
やらずにできないよりは、やってできないの方がいいだろ。
「『深く望むは我が理想 未だ見えぬ羨望の果て 嫉妬に汚れた泥の理想 変われ、変われ、変われ 嫉妬を満たせ 羨望の道を駆けろ
普段よりも多く精神力をつぎ込んで貫通力に優れた槍を作り上げる。
3秒ほど使い、これまでよりも硬く鋭い、代わりに刃が小さくなってしまった貫通特化の槍がてきあがった。
「おぉ……これが、ズィーヤさんの魔法……」
「リリの目からしても業物な槍が、たった3秒ちょっとで……」
「まぁ、鍛錬の成果ってやつだな」
槍を振り回し、具合を確かめる。
流石自分で作っただけはあって、よく手に馴染む。
一通り体に馴染ませて、いつでも戦える状態になった時、ベル君が疑問の声をあげる。
「あれ?ズィーヤさんって、ここに来るまで腰の短剣で戦ってましたよね。短剣がメイン武器じゃないんですか?」
「あぁ、それね。俺は魔法の特性上、大体の武器を使えるようにしてるんだよ。だから、明確にこれがメイン武器!みたいなのはないんだよね。強いていえば、最近は槍をよく使ってるから、槍がそれに当たるのかな?」
「えっ!?だ、大体って……それ、体が間違えちゃいませんか?」
「はははっ、体が間違えるか。……前にはあったが、鍛錬で間違えないように矯正したからな……」
ベル君は心底驚いた様子で白目を向いて固まってしまった。
リリもこれには驚いたのか、目をいっぱいに広げて驚いた表情を浮かべている。
「まぁ、俺は魔法があるから鍛錬しただけで、普通に武器を使うならステイタスや本人の体格にあった武器が一番だよ」
俺がそう締めくくった時、ちょうどキラーアントが数匹現れる。
キラーアントは1体であればそれ程厄介ではないが、複数体現れた時が厄介だ。
1体ずつトドメを刺さなければ仲間を呼ばれ、仲間に対応している間にも増え続け、数の暴力によって窮地に追い込まれることになる。
腰を深く落とし、槍をいつでも放てるよう構える。チラリと視線を後ろに向け、ベル君とリリの様子を確認する。
2人とも臨戦態勢へと移行しており、いつでも戦えるという様子だ。複数体との戦いも経験しているんだろう。
本来ならパーティーとして迅速に各個撃破するべきなんだろうけど……
「悪いな2人とも、今回は俺1人で
「え?でも……」
「危険すぎます!ズィーヤ様はこの階層は初めてなんですよ!?」
「もちろん、危険だと判断したら参加してくれて構わない。寧ろガンガン助けてくれ。ただ、俺がここでどこまで戦えるか確かめたい。頼む」
キラーアントが近づいてきている以上、構えは緩められず言葉だけになってしまったが、許して欲しい。
「……分かりました。危ないと判断したら僕も参加します」
「ベル様?!」
「リリ、少し離れよう」
「……ありがとう、ベル君」
さて、2人の足音が遠くなっていくと同時にキラーアントの足音が大きくなる。
ソロなら絶対にこんなことしなかったんだが、パーティーって事にテンションが上がってしまったのだろうか?それとも、ベル君にできるならという慢心?
「……いいや。戦えばわかることか」
戦闘を走るキラーアントの眉間の当たりを狙って突きを放つ。甲殻によって微かに抵抗されたが、貫通特化の槍は硬い殻を突き破り、全身を貫いて灰に変えた。
先頭が殺られたキラーアントは構わず行進を続け、2匹が同時に襲いかかってくる。
上下からの攻撃。だが、懐に入る前に飛んできたの悪手だったな。
下を這う個体を横に避けて無防備な首関節と腹部の関節に一撃ずつ与え灰に変える。
そして、上の個体は下から頭まで貫通させて槍を振り下ろすことで地面に叩きつけ、魔石に変える。
残り2体。
正面突破は無理と悟ったのか左右に別れて挟み撃ちをしてくる。
俺から見て右を走る個体へ突貫し石突きで吹き飛ばし、無防備になった腹部の魔石へ突きを放ち灰に変える。
振り返ると足元まで辿り着き、口を開いたキラーアントが見える。
「危ないっ!」
「ズィーヤ様っ!!」
キラーアントの開けた口に槍を差し込み、捻ることによってキラーアントのハサミを回避し、その勢いのままに投げ飛ばす。
飛ばされたキラーアントだが、空中で体勢を整えて直ぐに攻撃へと転身する。
真っ直ぐに突進してくるキラーアントの進行上に槍の穂先を置き、キラーアントが避けようと体を曲げた瞬間に突きを放つ。
頭を避け、首関節から腹部を貫き下腹部から穂先が現れたところで、キラーアントは魔石を残して灰になった。
キラーアントの体液が付着した槍を振り回すことで綺麗にし、残った体液は手ぬぐいで拭い落とす。
「さて、どうだった2人とも」
一通りの手入れを終えて、二人ヘリ振り返る。
個人的には上々の戦いだったんだが、2人のお眼鏡には
「す、凄かったです!!槍がビュンビュンって!そ、それに構えたと思ったら先にいて、わかんないですけど凄かったです!!」
「お、流石ベル君。正直でいいねぇ〜」
暗いダンジョンの中でも分かるほどキラキラと瞳を輝かせて凄い凄いと頻りに褒めてくれるベル君。
技術的で理解できてないところもあったんだろうけど、素直な感想を伝えられるというのは、気恥しいが少し気分がいいな。
はっ!こういう風にベル君は人を誑し込むんだな……ベル君、恐ろしい子っ!
「ズィーヤ様、本当に凄い動きでしたね……敏捷ではベル様の方が勝っているはずなのに、ズィーヤ様の方が速かったように感じます」
「リリ、魔石の回収ありがとう」
「助かったよリリ」
俺とベル君が雑談している間に魔石を回収して稼ぎを増やしてくれるリリ。稼ぎが増えるのはいいんだが、魔石の回収ってめんどくさいんだよなぁ……上層の魔石は小さいし、暗くて見えにくいし。
「いえいえ、リリにはこれくらいしかできませんから。それで、ズィーヤ様のあの速さの秘訣はなんなのですか?」
「あ、それ僕も気になってました。なんか、目で追えるのに追い切れないみたいな……見えるけど分からないみたいな、そんな感じでした」
「あれは所謂『技』だよ。純粋な速さじゃなくて、技術で速く見せてるんだ」
リリは何となく理解した様子だったが、ベル君はよくわかっていない様子だった。
まぁ、ベル君って考えるより体で覚えるタイプっぽいもんね。
「そうだな……例えば、こう足を踏み出して走り出すよりも、足を抜いて体重で加速してから走り出す方が速く走れるみたいな話だ」
2つの走り方を見せてやれば、ベル君も理解してきたのか口を開けて「おー……」と惚けた声を出していた。
「他にも色々技術はあるんだが、それらを組み合わせて本来のステイタスよりも速く強く戦える。これが『技』だ」
「なるほど……ズィーヤさんは、誰か師匠みたいな人はいるんですか?」
「俺は全部独学だよ。多分、専門家から見たら未熟も未熟だろうさ」
近づいてくるニードルラビットを蹴り上げ、槍で脳天を穿つ。微かに痙攣する死体から迸る脳液や血が槍を伝い、槍を振り払った頃には魔石と灰に変わっていた。
ニードルラビットに気づかなかったのか、ナイフに手をかけて固まっているベル君に笑みを向けてやる。
「ベル君も、これくらいはできるようになるさ」
それからはリリから指導を受けつつ、初めての連携や役割分担の経験をして探索を続けた。
魔石で皮袋が重くなってきた頃。俺たちが地上に上がると、日が傾きこれから夕暮れになろうという時間だった。
「じゃあ、今日はありがとう2人とも」
「いえ、僕らこそ凄く助けて貰っちゃって……ありがとうございました!」
「ズィーヤ様のおかげでリリも安心してサポーターの役割を全う出来ました!ありがとうございました!」
頭を下げる2人に手を振って、帰路に着く。
腰からは、今日の稼ぎで膨らんだ皮袋が重たく揺れ動いていた。
慣れない疲労と確かな充足感を携えて、夕焼けに照らされながら俺は神様の元へ帰るのだった。
「はぁ……!はぁっ……!っつぁ!………な、んなんだよ……!糞がっ……!」
月光の届かない裏路地を駆ける男。
何者かに追われ、酷く憔悴した様子で先の見えない暗闇を走り続ける。
酒場の喧騒は遠く、街灯もない闇の満たす裏路地には男の走る音だけが虚しく響く。
「なんで、俺が……こんな目に……」
体力の限界が来たのか、それまで酒を呑んでいた弊害が出たのか、壁に寄りかかり荒くなった息を整えようとする男。
ドクドクと跳ねる鼓動と治まるどころか狂ったように早まる呼吸。落ち着けようと胸元を握りしめるが、滲んだ汗が手を濡らすだけだった。
「なんだ……なんだってんだよ……畜生……!」
目の前に広がる暗闇に向けて、腰に携えていた剣を抜く。
冒険者としての経験と勘が、暗闇に自分を害する存在があることを予感させ、緊張を加速させる。
背中を壁に押し付け、前方の的にのみ集中する。
遠く酒場の楽しげな声すら聞こえてきそうな静寂の中で、緊張の糸が少しだけ緩んだ。緩んでしまった瞬間。
「ガッ?!」
男の頭上から鈍器が振り下ろされる。
暗闇の意識が路地裏の暗闇よりも深い黒に染められる直前、倒れる自分の目の前に降り立つ誰かの影が見えた。
「……ん、あ?」
頭から響く鈍痛によって目が覚めた男。
月明かりの淡い光に照らされ、男の縛りつけられた椅子とベッドが1つ横たえられただけの殺風景な部屋。
悪態をつこうにも口を猿轡で抑えられ、くぐもった呻き声にしかならない。
男が椅子から抜けだそうともがいていると、目の前の扉が開く。
扉からは青い瞳以外の顔を隠し、全身を黒の装備でまとめた男が立っていた。
「起きてたのか……丁度良かった。こっちも準備が終わったところなんだ」
「んぐぅ!ぐごがぎぃ!」
「騒ぐなよ。近所迷惑だろ」
ガチャガチャと音のなる箱を男の前に下ろし、口につけられた猿轡を外す。
「テメェ!どういうつも──」
覆面男の拳が縛られた男──ゲド──の顔面に突き刺さる。折れた前歯ば暗闇を舞い、鼻からは血が勢いよく出はじめた。
「大声出すなよ。今何時だと思ってるんだ」
覆面の男は箱の中をガサガサと漁り、大きなペンチを片手に持って痛みに喘ぐゲドと目線を合わせる。
「リリルカ・アーデを嵌める計画の内容と、お前の他のメンバー全員について教えろ」
「はぁ……?なんでそんなぶっ!?」
「教える以外の選択肢はないんだよ。さっさと答えろ」
「ぐっ……て、めぇぶぁっ!」
「ほら、悪態つく暇があるならさっさと答えろ。計画の内容と、他メンバーについて」
「な、なんでてめぇなんかぐっぁ…」
「学習しないやつだな、ほら、早く言えよ。じゃねぇとくたばっちまうぞ」
月光だけが照らす部屋の中で尋問する声と打撲音、男の呻き声だけが響く。しかし、徐々に打撲音は減り、呻き声の代わりにボソボソと答える声が響き始める。
夜半も過ぎ、神も人も眠りについていた時間に、ようやく尋問も終わった。
「よし、これだけ情報があれば何とかなるな。物覚えが悪くて困ったが、間に合ってよかった」
「…………」
「……それにしても、これは掃除が大変そうだなぁ……」
今や言葉を発さず、俯いたままのゲドの血と体液に塗れた床や返り血で汚れてしまった壁と己の体を眺め、男は大きくため息をつく。
「まぁ、便利な魔法のおかげで楽ではあるんだがな……ふんっ!!」
男が壁を殴りつけると、壁全体にヒビが入り泥色の外壁がボロボロと崩れていく。壁が崩れ切るとヒビは地面にまで伝播し、体液に汚れた地面も砕けて泥に変わる。
泥が魔力に変わり、白い壁に木が敷き詰められた床というありふれた部屋に変わる。
「よし、後はこの男にポーションをかけて、外に放置したら終わりっと」
血濡れのゲドを引き摺りながら部屋から出ていく覆面の男──ズィーヤ。
ズィーヤの居なくなった部屋には、変わらず月光が差し込み、数瞬前の惨劇が嘘だったかのような静寂が広がっていた。