ダンまちに転生憑依者達が殴り込みに行く話


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作:アニタマ
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夜の酒場 騒乱の巻 その2


 ここ、『豊穣の女主人』にて次々と運ばれてくる料理やお酒に舌鼓を打つこと約一時間。多少ローブや帽子、眼鏡などで変装紛いのことをしていた僕たちではあるが、時間が経つに連れそれも全く意味を成さなくなった。

 

 

「あひゃ、ひゃひゃひゃひゃ!もっと酒を持ってこぉ〜い!」

 

 

 その一例が、この完全に出来上がってしまったクソ面倒な荊軻だ。どうやら彼女も最初はここまで飲むつもりはなかったのだろうが、

 

 

「すいませーん、そろそろ果汁酒のお酒の割合を減らしてくださーい」

 

 

 しれっとウェイトレスに果汁酒のお酒と果汁の割合を変更するようお願いしている天才ロリのせいで見誤ってしまったのだろう。

 なんとも間抜けな話ではあるが、これは天才ロリも予想外の騒ぎっぷりなのだろう。その証拠に僕をチラチラと見ている。さながら、親に怒られたくない子供のようだ。まぁ、後で両方共に処分は下すが。

 

 

「ギャラハッド、良いのか?」

 

「アキレウス、お前も分かるだろう?もうアレは止まらない…」

 

「しかし、もう件の少年も来ていますし…、何より、もうすぐロキファミリアの方々も来てしまいますよ?」

 

 

 確かに、もう時間も無い。それに今回は僕が騒動を起こすつもりは一切無かった。さて、正直言ってこの状況をどう落ち着かせたものか。

 

 …いや、それ程まずい状況ではない、か?

 

 酒場で冒険者が騒ぐことは、主婦が市場で値切りをすることと同じ程に当たり前の事だ。何より変装については多少バレるくらいが丁度良いってものだ。そう考えるとこの状況も「その程度の状況」と言える。

 

 

「今は放置だ。ダ・ヴィンチ、『ロキファミリア』が来たら眠らせろ」

 

 

 僕の言葉にマシュとアキレウスとダ・ヴィンチは頷き、また各々が注文した料理を食べ進めていく。

 

 さて、時間にして一時間、ここまで僕たちはこの『豊穣の女主人』にて様々な料理に舌鼓を打ってきたが、ようやく僕のたちの二つ目のお目当ての登場となった。

 

 

「ご予約のお客様、ご来店にゃ!」

 

 

 そのお目当ては『ロキファミリア』。格上殺し(キリングスレイヤー)を体現する都市最大派閥の一つ。そして『僕たち』の良き友であり、好敵手であり、難敵でもある。

 

 ダ・ヴィンチは僕の指示通り荊軻を眠らせ、呼延灼が布団を掛けていた。先程まで騒がしかったテーブルがいきなり静かになった事で他の客は少しこちらを気にかけたようだが、何故か皆、不自然なほどに、その視線を元に戻していった。

 

 

「皆んな、ダンジョン遠征ご苦労さん!今夜は宴や、思う存分飲めぇ!」

 

 

 神ロキの音頭でロキファミリアのテーブルの方も宴会が始まった。見れば、ジークとアストルフォはいないようだが、金時はこの宴会に参加している様だ。だが、少し遠いからだろうか、彼は僕たちのテーブルに気付いてはいない様だ。

 

 …そう言えば、速攻でバレると思っていた僕たちの変装だが、思いのほか今の所クロエにしかバレてはいない。

 

 

「あの、質問よろしいでしょうか?」

 

「ん?どうした?」

 

「何故、私たちの存在を『ロキファミリア』の皆様は気付かれないのでしょうか?」

 

 

 それは僕も気になっていた。特に皆んな特別な変装などはしていないはずなのだ。だとするなら第一級冒険者達がこぞって気付かないのは少しおかしい様にも感じられる。

 

 

「あれ、マシュは聞いていなかったか。今マシュが掛けているその眼鏡に認識阻害が付与されているんだ。」

 

「「えっ」」

 

「効果範囲は約二メドル程だが、その範囲内にいる全ての存在は正確な認識がされなくなる。」

 

 

 なんだ、その超ご都合アイテム。いや、そんなアイテムを製作出来るのはただ一人しかいない。

 

 

「何、何?ワタシの話かな?」

 

「あのダ・ヴィンチちゃん、私、聞いてないんですが」

 

「…あ、眼鏡のこと?ごめーん、伝え忘れてた!てへ⭐︎」

 

「可愛く言ってもダメです。」

 

 

 マシュはお気に入りの眼鏡をいつの間にか改造されたことを怒っているのか少し口調がいつもより固くなっている様に感じる。

 そして何故、また僕に一言も告げずにアイテムを改造、製作したのかも聞かなければならないな

 

 

ガタン

 

 

「ベルさん!」

 

 

「…名シーン、見逃した。」

 

 

 その少年が走り去った後を見て僕は思う。これからあの少年は幾多の試練を乗り越え、最新の英雄として駆け上がって行くのだろう。迷い、立ち止まり、時には転んで血も出るだろう。だが、それでも、あの少年は止まることはしないだろう。

 

 さて、名シーンは見逃してしまったが、これから忙しくなるし、いじけている場合では無いな。

 

 ダンジョンにはエミヤが先行して控えている頃か。万が一が無いとも言えないのが、この世界だ。「念には念を」なんて言う言葉もある。保険は幾つ見積もっても困りはしないだろう。

 

 

「あ、クー・フーリンだ」

 

 

 ダ・ヴィンチが「おーい、こっちこっち!」と大袈裟にクー・フーリンに向かって手を振る。だが、マシュがかけている眼鏡の認識阻害のせいか、どうも気がついていない様子だ。

 まぁ、予め席の位置は知らせているし、呼延灼に聞けば分かるだろう。

 

 だが、クー・フーリンは僕たちのいる席に来るわけでもなく、また呼延灼を呼ぶ訳でもなく、彼は吊し上げられているベートの元に歩き出す。

 

 

「ん?おー!クーやないか、どないしたん?ウチらになんかようーー」

 

 

バコン

 

 

「アイツ、やりやがった」

 

 

 突然、クー・フーリンはベート・ローガにその拳を振り下ろす。その赤い目には怒りはなく、憎悪もなく、ただその拳を止めた紫紺の目を持つ金時を写すのみであった。

 

 

「一体なんの真似だい?クー・フーリン」

 

 

 そう問いかけたのはロキファミリアの団長【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナ。彼は、いや、彼の言葉は今のロキファミリアの代表としての言葉だろう。現に、近くにいるロキファミリアの団員たちは怒りと困惑に満ちていた。

 

 

「……」

 

「黙りかい?」

 

 

 そう静かに、しかし鋭い敵意をもってフィン・ディムナはクー・フーリンに問いかける。だが、クー・フーリンはフィン・ディムナの声には全くと言っていい程に耳を傾けてはいなかった。

 

 昔、クー・フーリンは『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?』と言うアニメを知らないと言っていた。だから僕は教えた。ベル・クラネルと言うこの世界にて誕生する英雄の話を。

 その話の中で、この酒場で起こるであろう出来事についても話したが、その時の彼はどうにもベート・ローガの言葉が「気に入らない」と言っていた。

 

 だから、と言うわけでは無いが、ベートの近くに座るよう金時に話しておいて良かった。まさか本当に殴るとは思わなかったが。

 

 辺りは一触即発。他のロキファミリアの面々も酒に酔い、騒ぎ、賑わっていた時とは掛け離れて、静かさだけが残っている。

 

 

「なんの真似だ、クーの兄ぃ」

 

 

 金時はクー・フーリンを真っ直ぐに見つめ、動揺で震えそうになる声を抑え、問う。その質問の真意は『知っていながら何故』と言う意味合いが大きいだろう。

 だが、件のクー・フーリンの顔に迷いはなく、怒りもなく、後悔も無いように見える。ただその行動が『当たり前』でそれが当然の結論のように、クー・フーリンは拳を振り下ろし、金時はそれを止めた。

 

 

「前に言ってたからな。」

 

 

 そう言ってこれまで口を閉ざしていたクー・フーリンはニヤリと笑い、金時により拳を止められていた手を逆に掴み、店の出入り口に向かって金時を投げた。

 

 

バコン

 

 

 そして、物語は冒頭に戻る。

 

 

♢♦︎♢

 

 

 さて、ぐだぐだと、これまでの回想を思い返してみたはいいが結局のところ言葉で止めるのは無理かもしれないな。

 互いが互いに臨戦態勢を維持しているし、何より、もう目がガチだ。本当に、どうしたものか。

 

 僕がこれからの行動を思考し始めたその瞬間、三柱の神が声を上げる。

 

 

「金時、そこまでや」

 

「クー、止まりなさい」

 

「景虎、止まって」

 

 

 一柱はロキファミリアの主神『ロキ』。二柱はデメテルファミリアの主神『デメテル』。三柱はアストレアファミリアの主神『アストレア』。

 それぞれが、それぞれの最大の影響をこのオラリオの都市に持つ。そして神々のその声は己が眷属たちに届く。

 

 

「…チッ」

 

 

 一番にその構えを解いたのはクー・フーリンだった。彼は舌打ちをすると何も言わずその場を後にする。

 

 

「あ!こら、待ちなさい!クー!」

 

 

 神デメテルは自らの眷族が謝罪もせず早々と帰る姿に衝動的に駆け出す。しかし、やはりこの状況の発端となったのが自分の眷属というところに思うところがあるデメテルはクー・フーリンを追いかける足を一度止め、かみロキに、そしてロキファミリアや酒場に向かい「ごめんなさい、また改めて伺うわ」と言いクー・フーリンを追いかけて行った。

 

 

「いいのか、ロキ」

 

「構へん構へん。クーにもデメテルにも色々と借りもあるし、何より、今ここで争う事に意味があるとは思えへん。」

 

 

 そう言ってロキは「飲み直すでー!」と店の中に戻ろうとする。しかし、アストレアがその後ろ姿に声をかけた。

 

 

「ごめんなさいね、ロキ」

 

「ん?どないしたん?」

 

「ウチの子が関係もなく戦いを臨むような真似をしてしまったこと」

 

 

 ロキが「そう言えば」、と金時と景虎を見れば未だ、金時に挑もうとする景虎がいた。

 

 

「金時、クー・フーリンとは立ち合えぬようだが、是非一戦交えようぞ!」

 

「いや、勘弁してくれよ景虎」

 

 

 尚も執拗に金時に嬉々として挑もうとする景虎にとうとうアストレアが一言。

 

 

「景虎、いい加減にしなさい」

 

「…はい」

 

 

 それだけで景虎は叱られた犬のように「しゅん」として、「ごめんなさい」と金時に言い、それ以上は何も言わなかった。

 

 

「貴方も、夜遅くにごめんなさいね」

 

 

 次にアストレアはアルジュナに向け、謝罪を口にした。

 

 

「…はぁ、今回は大目に見ます。しかし、以後このような事のない様に」

 

 

 流石のアルジュナも女神からの真っ直ぐな謝罪の言葉には、これ以上場を収める必要もなく、そして自らの仕事も終わりを告げたと結論を出す他ない。

 

 

「分かったわ、ありがとう」

 

 

 女神アストレアの感謝の言葉を受け、ガネーシャファミリアは「それでは」と一言残し、酒場を後にした。

 

 

「ほな、解散ー」

 

 

 ロキが「ぱんぱん!」を手を叩き、野次馬たちは解散していく、そしてロキファミリアもまた、酒場に入り、夜を明かしていくのだった。

 

 

 …そう言えば、僕、今回なにもしてないな。

 

 

「と、言うか、…アイツらは何処に?」

 

「あ、皆さんなら帰られましたよ」

 

 

 僕が周りを見渡し、つぶやいた言葉にシルさんが答えてくれた。

 …え、いつ?

 

 

「ガネーシャファミリアがきてすぐにゃ」

 

「マジカヨ」

 

 

 続いてアーニャが答えてくれたが、そんな前からいなかったのかよ。確かに声もしなかったし、今思えば気配もなかったけど。

 

 

「あと、ミア母ちゃんが『また手伝いに来い』って言ってたにゃ!」

 

「あ、はい」

 

 

 多分、今回の騒動を止められなかった責任を取れって事なんだろう。そう思えば、まぁ、安いもの、と考えられなくもないな。

 

 何はともあれ、今回の騒動は一段落、次に何か起こるとすれば『怪物祭』での事件が、『三つ』あることだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーさて、オモシロくなってきたな。

 

 

 

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