ダンまちに転生憑依者達が殴り込みに行く話


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作:アニタマ
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始まりの前に


僕は、俗に言う『バッドエンド』と呼ばれるモノが嫌いだ。

後悔の涙に溺れる最後。絶望の顔を貼り付けられた最後。

そう言ったものが嫌いで仕方がない。

 

何故、悲しみを抱えたまま終わらなければならない。

何故、苦しみに苛まれながら終わらなければならない。

何故、『あんな顔』で終わらなければならない。

 

助けを求め、生を叫んだ者たちが不条理の死を遂げて何故『お前達』は、そんなにも平然としていられるんだ。

 

大切なものが亡くなったのに、

 

昨日までの幸せが無くなったのに、

 

ーーもう、戻ってこないのに、

 

何故、受け入れてしまうのか。

 

何故、もっと抗わない。

 

何故、何故、何故。

 

考える度、間に合わなかった自分に腹が立つ。

弱かった自分に腹が立つ。 

『選んだ』自分に腹が立つ。

 

受け入れてしまう自分に腹が立つ。

 

 

だから僕は『バットエンド』と言うものが嫌いだ。

 

そんなものを受け入れる位なら僕は、幾度でもこの道(正義)を踏み外そう。

 

そうでなければ

 

もう全ては見えない。

もう全ては分からない。

もう、全ては救えない。

 

それだけはダメだ。

 

それだけはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()

 

 

 

 

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

突然だが、転生と言うものを信じるだろうか。

よく創作などで描かれる異世界転生、または異世界召喚などでも構わない。

おそらく、多くの人が『信じない』と答えるだろう。

 

 

さて、何故僕がそのようなことを突然問いかけたのか、その理由はーー

 

 

 

ーー僕が所謂、転生憑依者と言われる『転生者』だからだ。

 

 

 

こうなったのには何か深い理由や使命があるわけではない。

むしろ何もないと言っても過言ではない程に何もない、と言うのが現状である。

 

 

しかし、そのような僕ではあるが、これがまた孤独と言う訳でもない。

この世界、【ダンまち】とも言われる創作の、いや、最早現実となったこの世界には僕の他に14人の転生憑依者が存在する。

 

 

そして皆、これまた面白い程の運命のご都合主義のおかげか、この世界におけるレベルは軒並み3以上で、皆必ず一つはチート魔法、またはチートスキルを持っていると言う、なんとも言えぬブッ壊れ性能となっている。

 

それもその筈。

何故ならば、僕たちは皆、FGOといわれる古今東西の英霊の姿形をもって転生したのだから。

 

 

正に一騎当千、万夫不当の戦士たちだ。

 

 

大言壮語など存在はしない。

何故なら、それらは全て叶えて来たのだから。

 

故に、僕たちは英雄として讃えられ、賞賛され、成してきた。

 

 

それそのものに後悔などない。

元は小心者の一般人であった僕であろうと、誰かを救いたいと願い、今日まで歩んできた道は、例えどのような英雄たちの前であろうと胸を張れる程に歩んできた道だ。

 

それは他の転生者(同胞)も同じ思いのはずだ。

 

しかし、その道も、もうすぐ分水嶺を迎えることとなった。

 

 

その分水嶺とはーー

 

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

人には、多かれ少なかれ『習慣』というものが存在していると僕は思う。

 

例えば、朝起きて歯を磨く。

毎日三食必ず摂る。

夜、寝る時は枕を使う。

 

と言った具合に誰しもが何らかの『習慣』を身につけていると僕は思う。

 

では何故、そう言った習慣が存在するのか。

僕の考えはこうだ。

 

 

ーー無意識下による自身の確立、又はそれによる精神の安定。

 

 

理由は簡単、「僕がそうだから」なんて理由だ。

だが最近、本当にそうなのではないか、そう思う事も増えて来た。

何故なら、僕が『習慣を求め、習慣を壊している』からに他ならない。

 

そして、僕のその『習慣』というのはーー

 

 

「何をしている?」

 

 

オラリオの城壁で立ちつくす僕に、一人の女性が声をかけて来た。

 

その声は、まるで春に寄す小夜風のように優しく、その髪は真暗な夜に吸い込まれてしまいそうなほど美しい。

そして、このオラリオでは少し珍しい、

しかし、彼女が纏う服はこれ以上のものは無いと思わせる、着物の女性。

 

 

「かぐや」

 

「あぁ、そうだ。

いつか、お前に「阿呆」と罵られた輝夜だ。」

 

 

月の光に照らされる大和美女。

これほど絵になるものは無い、そう言わしめるほどの魅力が彼女にはあった。

 

 

「呼び出しに答えてくれて感謝する。」

 

「いや、構わんさ。

それで、私をこんな時間に呼び出すなんて、一体どう言う用件だ?」

 

「二つ、頼み事がある」

 

「ほう?お前からの頼み事とは、()()この都市に危機でも訪れたか?」

 

「、、、」

 

 

冗談めかしにそう言った、かぐやのその言葉に僕は沈黙をもってその答えとした。

かぐやは、その沈黙の意味を理解したか、「チッ、予感が当たってしまったか」と目を細め、悪態をつく。

 

 

「それで、そのオラリオの危機に我らにどう動けと?」

 

「明日からの七日間、マシュ()を見ていて欲しい。

これが、一つ目の頼みだ。」

 

「二つ目は?」

 

「これを持っていて欲しい」

 

 

そう言って僕が手渡したのは銀色の花の細工に蕾が翡翠の石に白い雪を散りばめ、美しく飾られた『髪飾り』

 

 

「これは、薔薇か?」

 

「それは『印』だ。」

 

「『印』?」

 

「あぁ、これを肌見放さず持っていて欲しい」

 

 

僕のその言葉に、かぐやは暫し考えるように数瞬、目を閉じ「分かった」と答える。

僕は、かぐやのその言葉に安堵し肩の力を抜い「だが!」

 

 

「私からも一つ、頼みがある」

 

 

安堵した瞬間、僕の眼前に人差し指を突き出し、かぐやは頼みを申立てて来た。

 

 

「その内容は?」

 

「こ、今度、お前の一日を、、、くれ

 

「ん?すまない、聞こえなかった」

 

 

向き合った状態ではあったが、かぐやは俯き、小さい声だったため僕には聞こえず、もう一度、今度は聞こえるように彼女に少し近づく。

 

ぐいッ!

 

彼女に近づいた拍子に襟首を掴まれ、彼女に引っ張られる。

 

 

「今度、お前の一日を私にくれ!」

 

 

月明かりに照らされた彼女のその顔は、ほんのり赤く、まるで恋する乙女のように可愛らしく、綺麗だった。

僕はそんな彼女を前に声を失い、ただ、彼女の美しさの虜になっていた。

 

 

「、、、あ、あぁ、是非」

 

 

その言葉を聞いた彼女は掴んでいた手を突き放し、「ま、またな!」といって走っていった。

僕はその後ろ姿を見ながら、着物ってああやって走るんだ、などと、この訳の分からない胸の高鳴りを誤魔化すように思考をずらした。

 

 

リン!

 

 

ーー鈴の音が鳴った。

 

 

「こんばんは」

 

 

妖艶に微笑みを携えたその女は、まるで最初からそこにいたかのように城壁に座っていた。

 

 

 

「まるで、タラシのようでした」

 

 

薄紫の綺麗なショートヘアのメガネをかけた彼女。

前世では、とびっきりのファンだった僕が、この女と過ごしてきた日々のせいで今では本当の彼女をあまり思い出せないでいる。

 

 

「、、、会議の内容は?」

 

 

だから、多少ぶっきらぼうに返してしまっても問題はないと思う。

 

 

「物語は始まりました。

皆には原作に沿わせるように指示を出しましたが、どうされますか?」

 

 

、、、見た目が完全な純真ヒロインのナスビちゃんなのに、とんでもない違和感だ。

中身が本人ではないとはいえ、その姿形で腹黒秘書のようなムーブはしないでほしい。

 

だが、それを言うなら、僕も似たようなものか。

 

 

「レベル6以上の闇派閥(イヴィルス)以外の転生者達に通達してくれ。」

 

 

僕たちは、強き英雄(彼等)ではない。

 

彼等ほど心は強くないし、彼等ほどの使命と言われるものもない。

 

命は大事にしたいし、仕事なんてしくないけど、皆んなが働いているなら、自分も何かしらしないと落ち着かない。

 

『器』ってやつもそんなに小さくはないと思うけど、大きくはないと思う。

 

ただ、運命に弄ばれただけのちっぽけな一般人。

 

人が死ぬことが嫌な、誰かの笑顔が好きな、どこにでも居る普通の一般人達。 

 

 

だからーー

 

 

「『祭り』を行う」

 

僕たちに『力』があるって言うなら僕たちの夢(ハッピーエンド)の為に利用するだけだ。

 

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