郷土芸能担う若者に言いたい「ありがとう」 わっかフェス出演のゆず

川村さくら

 フォークデュオ「ゆず」の北川悠仁さんと岩沢厚治さんが3月26日、富山市のオーバード・ホールで、郷土芸能とコラボする音楽イベント「わっかフェス」(三菱商事・朝日新聞社主催、北陸朝日放送特別協力)に出演する。昨年の秋田での開催に続いて2回目。富山でのステージは2010年のコンサート以来、15年ぶりだ。

 2月11日、わっかフェスに出演する団体と事前交流会があった。参加したのは、富山県の「富山県民謡越中八尾おわら保存会」「新湊・二の丸町獅子方若連中」「南砺平高校郷土芸能部」、石川県輪島市の「御陣乗太鼓」の4団体と、おわら保存会と共演する横浜国立大の「みんけん(民謡研究会合唱団)」の学生たち。交流会の後、朝日新聞のインタビューに応じ、音楽の力や若者への思いを語った。

 ――5団体のパフォーマンス、いかがでしたか。

 北川 圧倒されました。若い子が多くて、前の世代の方にサポートを受けながら、一生懸命やっている姿に胸を打たれました。若いときって流行に興味を持ちがちなのに、数ある文化から郷土芸能を選んでくれてありがとう、って言いたい。自分たちを通じて彼らのことをいろんな人に知ってもらいたいです。

 岩沢 (ステージ上の)特等席で見せてもらって心おどりましたね。自分の中の日本人の心が震えました。あと、若者たちが礼儀正しかった。南砺平高校の皆さんはステージに上がるときと下がるときに一礼していて、運動部と変わらないんだなって感じました。

 ――印象に残ったのは。

 北川 二胡(にこ)や馬頭琴みたいな楽器(胡弓(こきゅう))が出てきて、古い時代から大陸と交流があったんだろうなあと。郷土芸能には土地柄が表れますが、秋田は「なまはげ」とか派手なものが多かった。北陸はじっとこらえるみたいな強さを感じました。ものすごく興味深くて、歌や踊りに込められた意味を本番までに勉強します。

 岩沢 (風の盆の)笠は雪深い土地ならではだなと感じました。顔がよく見えないのも奥ゆかしい。

 北川 でも振り返ったら後ろ姿は茶髪で。昔は黒髪しかいなかっただろうけど、今の時代でやってる感じが見えて、それはそれであり!

 岩沢 足首を見ても「ミサンガついてる!」って思った。

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わっかフェスの事前交流会に参加した、岩沢厚治さん(右)、北川悠仁さん(右から2人目)のデュオ「ゆず」=2025年2月11日午後、富山県射水市、金居達朗撮影

 ――富山はどんなイメージですか。

 岩沢 ゆずが路上ライブで歌っていたころ、毎週来てくれていたのが富山の子で、ますずしを持ってきてくれたことがありました。それが僕の富山デビューでしたね。2010年以来、また富山で演奏できるのはうれしいです。

 ――地元・横浜の横浜国立大学のみんけんも今回富山で一緒に出演します。「横浜の郷土芸能は市歌です」と言っていました。

 岩沢 小学生のとき体育大会とか一堂に会するときは必ず歌わされ、いや、歌わせていただいて……。

 北川 言い方ね!

 岩沢 これが意外と我々しか知らない。

 北川 おーっと危ない。「しか」だけに?

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わっかフェスに出演する「ゆず」の北川悠仁さん(左)と岩沢厚治さん=2025年2月11日午後、富山県射水市、金居達朗撮影

 ――石川から輪島の御陣乗太鼓が来てくれました。かつて上杉謙信が攻め込んできた時に鬼や亡霊になりきって太鼓を打ち鳴らす奇襲で追い払ったのが起源とされています。

 北川 自分は元々歌舞伎や能など伝統芸能が好きなんです。浅草の楽器屋さんと仲良くなったことをきっかけに、26歳で一尺七寸の和太鼓を買って、師匠に習っていました。10年くらいやって、発表会に出たことも、コンサートで披露したこともあります。

 感覚が分かるからこそ、御陣乗太鼓はすごかった。面をかぶって大きくない太鼓を3人で全力でたたいている。とんでもない速さの餅つきみたいなもので、相当練習して間合いの感覚をつけないといけない。話を聞いたら、小さい頃から50年やっているということで合点がいきました。

 パフォーマンスは本当に気迫があって怖かった……。鬼気迫る様子からは、今も仮設住宅で暮らしながら全力で演奏するみなさんの覚悟も感じました。能登から参加してくれて、わっかフェスの輪はより大きくなった。

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わっかフェスの事前交流会で参加者に話しかける「ゆず」の北川悠仁さん(右)と、それを見守る岩沢厚治さん(右から2人目)=2025年2月11日午後0時57分、富山県射水市、金居達朗撮影

 ――お二人はこれまで積極的に被災地で演奏しています。

 岩沢 今の時代はスマートフォンで簡単に音楽が聴ける。でも我々は音楽を発する側なので、その土地に行って生で目の前でライブをすることを大事にしています。東日本大震災のあと、アーティストにも自粛ムードが漂う中、被災地で「自粛なんてしないで。ゆずさんはどんどん歌ってください」って声をかけてもらったことが思い出深いです。

 北川 東北の被災地で何度か演奏させていただきました。涙を流したり手拍子をしたりしながら聞いてくれる。僕らがパワーをいただいたし、皆さんにも少し元気を与えられたんじゃないかなと。そういう「交換」ができた。24年4月には能登でも音楽をして、同じ経験をしました。音楽でみんなが一つになって、それぞれがいろんなものを交換して明日へ踏み出す。そんな力がある。

 ――フェスの名前にもある「輪」とはどんなイメージですか。

 北川 日本の心じゃないですか。字は違いますが、今の元号「令和」にも「わ」がある。この国はつながりを重んじてきた。わっかフェスでもその根源にたちかえることが大事。それは未来に必要なピースだし、僕たちは音楽でその一端を担っていければいいなと思う。

 岩沢 個人ではできないこと。大勢でするから「輪」。コンサートはお客さんなしでは成立しないし、今回も越中の魂にゆずも交ざって大きなわっかを作りたいです。

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わっかフェスの事前交流会に参加した、北川悠仁さん(奥左)、岩沢厚治さん(奥左から2人目)のデュオ「ゆず」=2025年2月11日午後、富山県射水市、金居達朗撮影

 ――今回のフェスで多く活躍してくれる若い世代に期待することはありますか。

 北川 この社会、世界情勢の中で若い子たちはもうすでに必死にがんばっている。彼らがもっとわくわくしたり夢を描けたり、そういう環境を自分たちが作っていくことの方が大切な気がします。

 ――ポップスと郷土芸能がわっかになることによる力は。

 北川 化学反応がおもしろい。ステージでの音の作り方が違うし、そもそも興味があっても郷土芸能の方と接点を持つのが難しい。わっかフェスという機会をいただいて、自分たちは挑戦できた。秋田でもすばらしい化学反応ができたし、富山でも会場のみなさんに「わーっ」と驚いてもらえると思います。

 岩沢 ジャンルが違っても根にあるものは同じで、人前に出ることが嫌いじゃない。絶対お嫌いじゃないんです。だからその秘めたるものを出してくれたらお互いやりやすい。

 ――わっかフェスへの意気込みを。

 岩沢 ゆずをきっかけに富山がめちゃくちゃ盛り上がる日になったらいいですね。(新湊・二の丸町獅子方若連中の)獅子舞のかけ声はもう即戦力。

 北川 郷土芸能と交ざり合って、名前の通りいろんな世代のお客さんたちと一緒に大きな輪をつくって、最高の一日にしたいです。

1日限定のオンライン配信、4月20日に

 わっかフェスは4月20日(日)に1日限定で無料配信します。申し込みはhttps://stagecrowd.live/8837729125/別ウインドウで開きますへ。締め切りは同日午後9時(受け付け状況により早く締め切る可能性があります)。視聴可能時間は同日午前0時から午後11時59分までです。

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この記事を書いた人
川村さくら
ネットワーク報道本部|大阪駐在
専門・関心分野
人権、差別、ジェンダー、サブカル

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