時代を超えてよく見られる野球 学生スポーツは10代がよく視聴~スポーツコンテンツ視聴者2,400人へのWEBアンケートから➀~【研究員の視点】#568
メディア研究部(メディア情勢)斉藤 孝信
2024年もさまざまなスポーツイベントが開催されました。記念すべき第100回となった正月の箱根駅伝では青山学院大学が2年ぶり7度目の総合優勝。夏のオリンピック(以下、五輪)パリ大会では、日本が海外開催としては史上最多の金メダルを獲得。アメリカの大リーグ(以下、MLB)ではロサンゼルス・ドジャースへの移籍1年目となった大谷翔平選手がチームとしてはワールドシリーズ優勝、個人としても2年連続のMVPに輝きました。
皆さんはこの1年、どんな競技の中継を楽しまれたでしょうか? 今回のブログでは、文研が2024年11月に実施した「スポーツコンテンツ視聴者2,400人へのWEBアンケート」*から「よく視聴する競技中継」の回答結果をご紹介します。
○ 視聴競技ランキング "野球"強し! 五輪イヤーに健闘のサッカー、バレーも上位に
ふだんテレビ放送やネット配信でどんな競技の中継を視聴しているのか、35の競技から、複数回答で尋ねた結果です(表1)。
「日本のプロ野球」が42%でトップ。そのほか、今秋開催された野球の国際大会「プレミア12」などの「野球の日本代表」が2位、「高校野球や大学野球」が4位、「MLB」が6位と、他の競技より選択肢を細分化したにもかかわらず、"野球"が軒並み上位にランクインしています。
野球以外では「サッカー男子日本代表」が3位、「バレーボール」が5位と、今年、五輪などの国際大会で日本勢が健闘した競技がトップ5にランクインしました。
○ トップをキープし続ける"野球" ほかの競技はその年の注目度合いを如実に反映
文研では過去に「日本人の好きなもの」という世論調査を行っていました。その中に「見るスポーツで好きなもの」という調査項目があります。こちらはスポーツを視聴しない人も含めた回答結果で、選択肢も異なるので、今回の結果と単純比較はできませんが、その時代を象徴していて興味深いので、今から41年前の1983年と、17年前の2007年の結果をご紹介します(表2)。
両年とも、「高校野球」と「プロ野球」がトップ2。40年以上の時を経ても、日本で最もよく視聴されているスポーツが"野球"であることがわかります。
1983年の3位「バレーボール」はアジア選手権で男女とも全日本が金メダル。実業団チームの試合も地上波で放送されるなど人気を博していました。また2007年の3位「フィギュアスケート」は、世界選手権の女子シングルで安藤美姫選手が優勝、浅田真央選手が準優勝、男子シングルでも高橋大輔選手が準優勝するなど日本勢が活躍。地上波でも多くの試合が中継されていました。
このように、よく見る競技のランキングはその時代の各競技の活況ぶりも反映するのです。その点では、今回のWEBアンケートで、年間総入場者数が過去最多1,254万人余りを記録した「サッカーJリーグ」や、五輪や八村塁選手のアメリカプロバスケットボール(NBA)での活躍などで注目される「バスケットボール」がトップ10に入ったことは、数年後に「2024年のスポーツ」を振り返る際、大事なトピックになりそうです。
○ 男性はMLB、女性若年層はバスケ、女性中高年層はフィギュアが上位に
表3は、男女年層別にトップ5を集計したものです。
どの層にも共通して「日本のプロ野球」がトップ5に入ります。一方で、属性ごとの特徴もあります。わかりやすいように、全体ではトップ5に入らないのに、その層ではトップ5に入る競技を色付けしています。
男性では40代を除くすべての年代で「MLB」がランクイン。一方の女性では「MLB」は入りません。女性は何をよく見ているのかと言うと、10~30代では「バスケットボール」、40代以上では「フィギュアスケート」がそれぞれ5位以内に入りました。
なお、別の質問では「今後テレビで中継してほしい競技」も尋ねました。全体のトップ5は現在の視聴実態と同じ「野球の日本代表」「日本のプロ野球」「サッカー男子日本代表」「バレーボール」「高校野球や大学野球」でしたが、やはり、特定の層だけでトップ5に入る競技がありました。
<特定の層だけでトップ5にランクインした「今後テレビで中継してほしい競技」>
★Jリーグ:男性10代と40代
★海外サッカー:男性20代
★バスケットボール:女性10~40代
★ボクシング:男性40代と50代
★フィギュアスケート:女性40代以上
★サッカー女子日本代表、陸上競技、相撲:男性60歳以上
★卓球:女性60歳以上
○ メジャーな競技は高年層 学生スポーツは若者で特に視聴が盛ん
アンケートでは「大会の規模・内容」別でも、よく視聴している中継を尋ねました(表4)。
全体では「国内のプロスポーツ」や「大規模な世界大会」が5割超と高くなっています。
男女年層別にみると、「国内プロスポーツ」は全年層で50%を超えていますが、特に男性30代では67%と全体(56%)より11ポイント高く、男性50代(61%)も全体より5ポイント高くなっています。また、MLBやサッカー海外リーグなどの「海外スポーツ」は男性30代(43%)と50代(40%)・60歳以上(50%)で全体(30%)より10ポイント以上、男性40代(36%)でも全体より6ポイント高くなるなど、男性中高年層で高くなっています。つまり、"日常的に中継されるプロスポーツ"は国内・海外ともに男性の中高年層で特によく見られているのです。
これに対して、数年に1度しか開催されない五輪やW杯などの「大規模な世界大会」は、全体では50%であるのに対し、女性60歳以上(63%)では全体より13ポイント高く、男性60歳以上(59%)と女性50代(55%)でも全体より5ポイント以上高くなっています。
"非日常的な特別な大会"は男女を問わず高年層ほどよく視聴される傾向があるのです。
一方で、「学生スポーツ」は選手と同年代の若い人たちで高めです。甲子園などの「全国大会」は女性10代で35%と全体(23%)より12ポイント高く、男性10代でも全体より5ポイント高い28%に達します。なお、「今後テレビで中継してほしい競技」の質問でも、女性10代では「学生スポーツの全国大会」が、「国内のプロスポーツ」や「大規模な世界大会」と同じくらい高くなりました。
このように、全体としてはプロ野球や五輪のようなメジャーな競技がよく見られている一方で、若い人は「学生スポーツ」をほかの年代よりもよく視聴するなど、視聴者の属性によって実態やニーズに違いがあることがわかります。
ネット配信やBS・CS専門有料チャンネルでさまざまな競技の視聴が可能となる中、テレビが引き続き、人々にとって"スポーツ視聴の場"であるためには、時代とともに移り変わる注目競技や、属性によって異なるニーズを的確に捉え、応える努力も欠かせないのかもしれません。
次回は、人々がスポーツ視聴に用いているサービスや「ネット配信で視聴する理由」についての分析結果を報告します。
*「スポーツコンテンツ視聴者2,400人へのWEBアンケート」
WEB調査会社にモニター登録している2,400人に対し、11月8日(金)~11月18日(月)に行いました。スポーツコンテンツの視聴実態やメディアへの意見・要望を把握することが主な目的ですので、「ふだん、テレビやインターネットで、スポーツの中継や番組をまったく見ない」人を対象から除いたうえで、10代・20代・30代・40代・50代・60歳以上の各層が、男女別でそれぞれ200人となるようにしました。アンケート結果の数値は小数点以下を四捨五入しました。