選択的夫婦別姓「政治の責任を果たせ」…経団連が「早期実現」提言に踏み切った理由を魚谷雅彦氏が明かした

2025年3月6日 06時00分
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 選択的夫婦別姓を巡り、野党による法案提出と審議入りが濃厚になる中、自民党内での議論が再開された。大きな後押しとなったのが昨年6月に公表された経団連の選択的夫婦別姓の早期実現を求める提言だ。経団連ダイバーシティ推進委員会の魚谷雅彦委員長(70)に、提言に踏み切った背景を国際女性デーを前に聞いた。(砂本紅年)

◆DEIの立ち遅れが「失われた30年」の要因の一つ

インタビューに答える経団連ダイバーシティ推進委員会の魚谷雅彦委員長=2月20日、東京都港区の資生堂汐留本社で(市川和宏撮影)

 —提言に至った理由は。
 まず、多様な人材が互いに尊重し合い、誰もが力を発揮できる「DEI」(多様性、公平性、包括性の英語頭文字)の必要性について説明したい。
 私は、日本企業が世界市場での競争力を低下させた「失われた30年」の要因の一つとして、DEIの立ち遅れがあるのではないかと考えている。市場のニーズはグローバル化、多様化、複雑化している。消費者に商品やサービスが選ばれるためには、多様なニーズを理解し、従来の常識を打ち破る発想が必要だ。実際、世界規模で展開する米国企業のトップは多国籍の方や女性、若者も多い。
 「1+1は2」と言っていたらイノベーションは生み出せない。日本でも、ジェンダーや国籍に関係なく障害のある人も高齢の人も若い人も多様な人たちが意見やアイデアを出し合い、「1+1は3でもいいのでは。立ち止まって考えてみよう」となるような人事、組織風土の変革や環境整備が必須だ。ジェンダーでいえば、世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数で、日本は昨年146カ国中118位。私はこのギャップを解消していくことが日本社会をよくする柱となるという信念で、企業経営に取り組んできたし、経団連のダイバーシティ推進にも努めている。

◆先進国の在り方としてこれでいいのか

 —選択的夫婦別姓は、DEIを進める上での課題の中の一つ、と。
 日本で役員や管理職になった女性に話を聞くと、海外出張時のトラブルやキャリアの分断など旧姓使用の課題や不都合は必ずと言っていいほど出てくる。就業の有無にかかわらず、今まで何十年も使ってきたファミリーネームが結婚で変わることが精神的な負担になるという声もある。女性に姓を変えてもらうことに心苦しさを感じる若い男性も増えている。先進国の在り方としてこれでいいのかと思う。

インタビューに答える経団連ダイバーシティ推進委員会の魚谷雅彦委員長=2月20日、東京都港区の資生堂汐留本社で(市川和宏撮影)

 選択制にすれば、変えたくない人は変えなくてもいいし、家族がみんな同じ姓がいい人はこれまで通りにすればいい。選択できないのは日本だけなのだから、多様性を尊重する柔軟な社会に変わっていくべきだ。

◆速やかな解決が日本の発展のために必要

 —自民党内では、旧姓の通称使用の拡充や法制化の意見が根強い。
 多様性の話をしているので、いろんな意見があることは大前提だが、私たちが申し上げているのは、国会で議論して政治の責任を果たしてほしい、ということだ。もともと法制審議会(法相の諮問機関)で有識者が5年余りかけて議論した末に1996年にまとめた案がある。現実的な日々の課題とアイデンティティーの問題のいずれも解決できる方法としては、やはり法制審案に立ち戻るのがベストではないかというのが、経団連の考え方だ。
 夫婦の姓について定めた民法改正から約80年。当時は働く女性は「職業婦人」と呼ばれる数少ない存在だったが、今や80%近くの女性が就業している。若い世代は共働き世帯が増え、家事や育児も分担するフェアな関係になってきた。まさにDEIの公平性(エクイティ)の部分だが、改姓という点では95%が女性に偏っている。社会ニーズの変化で弊害になっているものを取り除き、時代の変化に対応させていくのは、まさに政治の役割ではないか。この課題をしっかり論じてできるだけ速やかに解決することが、日本の発展のために必要だ。

 魚谷雅彦(うおたに・まさひこ) 1977年、ライオン入社。1983年、米国コロンビア大経営大学院修了。1994年、日本コカ・コーラ取締役上級副社長・マーケティング本部長に就任。同社代表取締役社長、代表取締役会長、2013年、資生堂マーケティング統括顧問を経て、2014年に同社代表取締役社長CEO(最高経営責任者)などを経て、2025年1月から同社取締役シニアアドバイザー。2020年から、経団連ダイバーシティ推進委員長を務める。


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    みんなのコメント2件

  • ユーザー
    国際女性デー取材チーム 3月11日10時19分

    魚谷さんへのインタビューを担当した砂本紅年です。

    ハイドランジアさんのご指摘は、その通りだと思います。同僚記者が取材した記事では、野田聖子衆院議員も「自民党が腹を決めれば済む」と言っています。選択的夫婦別姓の問題は、自民党の問題です。保守とは何なのでしょうか。今こそ、その意味が問われていると思います。

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  • ユーザー
    ハイドランジア 3月6日8時32分

    選択的夫婦別姓、同一姓も別姓も選べる、という制度を推し進めるかで、なぜこんなに抵抗があるのか全くわからない。

    子どもの姓など、付帯制度を整える必要があるというならば、
    こういう問題があるので、その準備が整ってからだ、もしくはその問題を解決するにはどうしたらいいか考えようと提起してくれればいいのに、

    国民通念だとか、社会影響だだの、メンタル的な話しか出てこない。

    できないならばできない理由をはっきり公開して、
    解決策を検討しようと、声をかけるのが民主主義なのではないか?

    今の状況は、まともな状況分析もせずに駄々をこねている集団に振り回されているようにしか見えない。

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