『転生したらフルフルベビーでした』in ダンジョン


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第2話 : 洞窟の生活


 フルベビアイスがあるならフルベビシャーベットがあってもおかしくない。

 そうだろ? 

 

 

 


 

 

 

 

 ──あれから、一週間が経った。

 

 最初は何もわからず、手探りの状態だった。

 だが、この不可思議な体にも、少しずつ馴染んできた。

 

 目が見えないのは相変わらず。

 それでも、代わりに研ぎ澄まされた嗅覚と振動感知で、周囲を『視る』術を身につけた。

 

 空気の流れの微細な変化。

 地面を這うわずかな震え。

 それらを頼りに、敵の接近や障害物の位置を把握できるようになったのだ。

 

(……俺の世界は、匂いと振動でできているんだな)

 

 かつて人間だった頃の感覚とは、まるで違う。

 だが、今はもう、これが普通になりつつあった。

 

 意外なことに、この洞窟には静寂の時間も多い。

 常に敵が闊歩しているわけではなく、慎重に行動すれば、比較的生きやすい環境だった。

 

 そして──

 

 この一週間で、俺は洞窟の構造を少しずつ把握し始めていた。

 

 この洞窟は、想像以上に広大だ。

 分岐は多く、どの道も終わりが見えない。

 無機質な岩肌が続き、ところどころに苔やキノコが生い茂る。

 そして、奥へ進めば進むほど、確かに沈んでいく……いや、降りていく感覚があった。

 

 つまりここは、ただの洞窟ではないのだろう。

 かつて遭遇したゴブリンに加え、二足で歩き、唸り声を上げる狼のような獣、そして犬よりも巨大な、ヌメヌメとした蛙型の異形。

 見たこともない異形の怪物が、ここには当たり前のように棲息している。

 

 ──もう、疑う余地もない。

 

 ここは、間違いなく異世界だ。

 俺自身も含めて、常識から逸脱した生物ばかり。

 そして、この場所もまた──

 

 ダンジョンと呼ばれるものなのかもしれない。

 

 だとすれば、この奥には、より強大な存在が潜んでいる可能性が高い。

 ならば、今はまだ奥へと進まず、浅いと思われるこの層で生き抜く術を確立するのが最優先だろう。

 

 また、この一週間で、敵……というか、この洞窟に生きる怪物共(せいぶつたち)の生態についても、少しずつ理解し始めていた。

 

 ゴブリンや狼型の二足歩行生物──おそらく『コボルト』と呼ばれる存在は、意外にも群れを成さず、単独で洞窟を徘徊している。

 縄張りを主張するでもなく、一定のエリアに留まることもなく、ただ気まぐれに歩き回る。

 時折、洞窟の岩陰で欠伸をしているのを見かけるほどだ。

 

 まるで野生の獣というよりも、洞窟という環境そのものに馴染んだ漂流者のような動き。

 他の個体と争う様子も滅多になく、ただひたすらに彷徨っているだけ。

 

 一見すると……というか、隙だらけにしか見えない。

 だが、それでも戦うにはまだリスクが高い。

 

 理由は単純。

 俺とヤツらでは、体格が違いすぎる。

 

 まるで大人と赤子……いや、それ以上の差だ。

 俺の武器は噛みつきと吸血だけ。

 対するヤツらは、鋭い爪と牙を持ち、俺の小さな体を一撃で突き刺し、切り裂き、粉砕できる。

 

 いや、それ以前に──

 

 ただの踏み潰しで終わる可能性すらある。

 

 つまり──

 

(……俺、弱すぎるだろ……)

 

 思わず、ぐにゃりと体が折れそうになる。

 人間だった頃なら、絶望とでも表現できる気分だ。

 

 だが、悲観している暇はない。

 生き延びるために、出来ることを少しずつ、着実に進めるだけだ。

 

 次に考えるべきは──食料と水の確保。

 

 俺の主な食料は、落ちている肉片や死骸だ。

 幸い、腐敗がそこまで進んでいなければ問題なく消化できる。

 そして、洞窟内にはコケやキノコのような植物も生えている。

 試しに食べてみたところ、わずかながら栄養になるものもあった。

 

 ……が、一部のキノコは食べると体調を崩した。

 それ以来、慎重に選ぶようにしている。

 

 そして──ある日。

 

 俺は、ゴブリンたちが何を食べているのか気になり、こっそり後をつけてみたことがあった。

 ヤツらの体格を考えれば、コケやキノコだけで腹を満たせるとは到底思えなかったからだ。

 

 果たして──。

 

 入り組んだ通路の先に、小さな空間が広がっていた。

 そこには、驚くほど澄んだ水が湛えられ、周囲には緑が生い茂っている。

 天井の割れ目から微かに光が差し込み、まるで洞窟のオアシスのような光景だ。

 

 ゴブリンたちはそこで水を飲み、豊富に実る果実を食べていた。

 なるほど、『休憩所』のような役割を果たしているのだろう。

 

 俺も利用できればいいが……今は無理そうだ。

 この空間には獣共(ヤツら)が多すぎる。

 単独行動ならともかく、群れの中に飛び込むのは自殺行為以外の何物でもない。

 

 故に──俺の水分補給手段は、コケ。

 

 洞窟の奥に生えているコケへと這い寄り、大きな口でこしとるようにすすりながら、水分を補給する。

 時間はかかるが、今のところこれが最も安全な方法だった。

 

 最初はもちろん怖かった。

 だが、匂いから飲めると判断し、実際に摂取しても問題はなかった。

 

(……意外と高性能だな、俺の嗅覚)

 

 キノコの毒判別にも使えているし、この能力は間違いなく俺の生命線になっている。

 

 そして、最後に体の変化について。

 

 一週間前の俺と、今の俺。

 その違いは、明らかだった。

 

 目覚めてから一度だけとはいえ、ゴブリンの血を吸ったことで、俺の体は確実に変化している。

 

 まず、動きが滑らかになった。

 以前よりも這いずる速度が増し、障害物を察知してスムーズに避けることができるようになったのだ。

 この体にも、徐々に適応してきた証拠だろう。

 

 さらに、この軟体生物のような体の特性を活かし──俺は、自分の意思で形を変えられるようになってきた。

 

 今のところ、せいぜい一文字程度の文字を体で表せるのが限界だが、それでも大きな進歩だ。

 暇つぶしに試していただけだったが、気がつけば意外と楽しんでいる自分がいたというか、楽しめることがこれしかないと言うべきか……。

 

 まぁ、それはいいとして。

 

 そんな日々を送る中で、俺の体には新たな変化──いや、成長が現れ始めていた。

 

 最近、どうも体の下と背中あたりにムズムズするような感覚があったのだ。

 最初は、「コケやキノコばかり食べた影響で、未知の病気にでもかかったのでは?」と不安に駆られたが……違った。

 

 どうやら、新たな突起物が生えてきたらしい。

 

 それはまるで、手や足の芽のようにも見える。

 

 俺の成長がどのような形を取るのかはわからないが、もしこのまま足が生えれば、今よりも遥かに機動力が上がるはずだ。

 何より、このミミズみたいな姿から卒業できる可能性が出てきたのは、大いに歓迎すべきことだった。

 一生このままだったらどうしようかと、正直なところ、密かに絶望しかけていたのだから。

 

 さらに、食事をするたびに、体の奥で微弱な電流が走る感覚を覚えるようになってきた。

 試しに意識して力を込めてみると──

 

(ぐっ……!?)

 

 俺自身が痺れた。

 

(……これ、何かに使えないか?)

 

 痺れるのはともかくとして、もしこの力を自在に操ることができるなら、戦い方の幅は大きく広がる。

 今の俺にできる攻撃は、せいぜい喰らい付き、吸血するくらい。

 だが、電流を武器にできるようになれば──

 

(例えば、敵に噛みついた瞬間に電気を流せば……?)

 

 麻痺させられる? 動きを封じられる? それとも、内部から焼き尽くすことさえ可能なのか? 

 試す価値は十分にある。

 

(…………)

 

 俺は、この環境で生き抜くための最低限の基礎を築いた。

 食料、水、休息。

 この一週間でようやく生きるための手段を確立した。

 

 だが、それだけでは足りない。

 

 この洞窟には、まだ未知の脅威が多すぎる。

 今のままでは、いずれ行き詰まる。

 

 どこかに、もっと安全な場所はないのか? 

 食料を安定して確保する方法は? 

 

 そして──

 

『体』が望むように、俺はもっと強くなれるのか? 

 

 考えなければならないことは山ほどある。

 

 俺は、這いながら次の目標を探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 =====

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も今日とて、洞窟の薄暗い通路を這い進む。

 

(今日は運がいいな。腐肉の匂いがする)

 

 いつもの腹ごしらえ。

 食料がすぐそこにある気配に、心なしか気分が軽くなる。

 鼻を頼りに進みながら、期待に胸──いや、体を膨らませる。

 

 だが、ふと。

 途中で異変に気がついた。

 

 岩陰の向こうから、別の匂いがする。

 

 腐敗臭ではない。

 むしろ、生々しい鉄の匂い──新鮮な血の匂いだ。

 

(……生きた獲物がいるな)

 

 この洞窟で血が流れる状況は限られている。

 天敵に襲われたか、それとも、同族同士の殺し合いか──。

 

(慎重にいくか……)

 

 這う速度を落とし、できる限り音を立てないように移動する。

 洞窟の湿った岩肌に触れ、微細な振動を探りながら慎重に接近。

 

 そして、鼻腔を広げ、獲物の正体を確認する。

 

(……ヌメヌメしたやつか)

 

 蛙型の生物。

 粘液に覆われた皮膚。湿った、低いうなり声。

 その体躯は俺よりも遥かに大きく、明らかにモンスターのそれだ。

 

 だが──

 

 やつは傷を負っている。

 

 以前、遠目に見かけたことがある。

 比較的コケの多い場所を好み、身体全体を粘膜で覆い、

 そして──長く伸びる舌で獲物を絡め取る。

 

 この洞窟の中で、特に厄介な捕食者の一種だ。

 

(……正直、勝てる気はしないんだが)

 

 俺の攻撃手段は、噛み付きと吸血。

 単純な肉弾戦では、舌のリーチに勝ち目はない。

 間合いに入れば、瞬時に絡め取られ、飲み込まれる未来しか見えない。

 

 だが──

 

(……ここで、一度試してみるのも悪くない、か)

 

 ただ生き延びるだけでは、いずれ限界がくる。

 ならば、この機会を使って戦い方を学ぶのも、一つの選択肢だ。

 

 何より──危なくなれば逃げればいい。

 

 幸い、この蛙型の生物は鈍重だ。

 俺のような低速な這いずり移動でも、振り切れる程度の速度しかない。

 ならば、挑んでみる価値はある。

 

 これは、単なる狩りではない。

 俺が、この世界で生き抜くための第一歩。

 

 そして──

 

 最近、俺の『体』が俺の制御から逸脱しつつある。

 

 腐肉の匂いを嗅ぐと、本能が暴走しそうになり、

 ゴブリンや他の生物を見かけると、喉の奥が熱を帯び、ヨダレが止まらなくなるのだ。

 俺の意志とは関係なく、体の欲求が前面に出てくる感覚。

 

 もしこのまま、飢えに抗い続ければどうなる? 

 いずれ、俺の意志が『体』に飲み込まれ、ただの本能に支配された怪物へと成り果てるかもしれない。

 

 それだけは、御免だ。

 

 目の前には、怪我をして、体力を消耗している敵がいる。

 ならば──

 

(挑むしかない……!)

 

 積極的に殺しはしたくなかった。

 だが、殺らなければ殺られる。

 それが、この世界の理なのだ。

 

 恨んでくれて構わないが、悪くは思わないでくれ。

 

(…………)

 

 俺は、慎重に岩陰から頭を出し、獲物の様子を窺った。

 

 ぴちょん、と。

 

 洞窟の天井から、冷たい水滴が落ちる。

 それに呼応するように、ヌメヌメとした生物の体がわずかに蠢いた。

 

 重たい呼吸。

 湿った皮膚が擦れる不快な音。

 奴はまだ、俺の存在に気づいていない。

 

(……今なら、いけるか?)

 

 這う姿勢をさらに低くし、できるだけ音を立てずに忍び寄る。

 

 じりじり、じりじりと。

 

 鼓動が、やけに大きく響く。

 体の震えが止まらない。

 だが、今はそれすらも押し殺す。

 

 息を潜め、体を縮め、狙いを定める。

 

 そして──

 

(……今だ!!)

 

 瞬間、全身の力を解放し、一気に飛びかかる。

 伸びきった体が空間を切り裂き、牙を剥く。

 

「────ッ!!」

 

 鋭く食い込む感触。

 滑るような粘膜を押し破り、俺の牙が奴の脇腹に深く突き立った。

 

 ──が。

 

(……ぐっ!?)

 

 口内に広がる、強烈な苦味。

 胃の奥から込み上げるような、不快な味と感触。

 

(──くっそ、不味ッッッ!!?)

 

 思わず噛む力が緩みかけた、その瞬間。

 

 獲物が暴れた。

 ただのもがきではない。

 全身を使い、俺を弾き飛ばすような激しい抵抗。

 

(待て待て待て待てっ!?)

 

 次の瞬間、俺の体は勢いよく岩肌へと弾き飛ばされ、転がった。

 

「──グギャァァァッッ!!?」

 

 空間を震わせるような、耳障りな叫び声。

 今まで鈍重だったはずの生物が、一転して猛り狂う。

 赤黒く濁った双眼が俺を捉え、ギラリと光った。

 

 ──と思った次の瞬間。

 

 奴は、即座に反撃に出た。

 

 ── 一閃。

 

 長い舌が、まるで鋼鉄のムチのように鋭く伸びる。

 水を切るような唸りを上げ、俺の体を貫かんと迫る。

 

(──ヤバい!!)

 

 本能が叫ぶ。

 

 咄嗟に体を丸め、地面を滑るように回避する。

 

 瞬間、奴の舌が俺のいた場所に叩きつけられた。

 岩肌が抉れ、砕けた石片が弾け飛ぶ。

 

(──なんつー威力してんだ……!? 直撃してたら、即死じゃねぇか!!)

 

 反射的にゾッとし、体が縮こまる。

 あの舌は、ただの捕食器官じゃない。殺すための武器だ。

 一撃食らえば、間違いなく戦闘不能。最悪、そのまま喰われる。

 

(……どうする!? 逃げるか!?)

 

 脳裏をよぎるのは撤退の二文字。

 だが──

 

 否。

 

 ここで逃げたら、俺は一生『狩られる側』のままだ。

 このままじゃ、ただ生き延びるだけの『餌』にしかなれない。

 

 戦えなければ、どこに行こうが死ぬ運命だ。

 

(ならば……!)

 

 俺は荒い息を整え、震えそうになる体を必死で押さえ込む。

 次の一撃で決めなければ、勝機はない。

 

 ──奴の舌が引っ込む、一瞬の隙。

 

(……今だ!!)

 

 腹の底に力を込め、一気に地を這う。

 

「──グギャァッ!!」

 

 俺の動きに気づいた奴が、咆哮とともに舌を弾丸のように撃ち放った。

 

(来るぞ──!)

 

 迷う暇はない。

 避けるか、迎え撃つか。

 

 その選択肢すら、本能が即座に排除した。

 俺は、あえて──

 

 俺の方から奴の舌に噛み付いた!! 

 

(────ッ!!)

 

 ズルリと粘膜が歯の隙間に滑り込み、口内を強烈な苦味が襲う。

 だが、そんなことを気にしている余裕はない。

 

 ──ビリッ!! 

 

 瞬間、俺の体の奥で何かが弾けた。

 

(……っ!? 今の、電流……!?)

 

 全身に走る衝撃。

 まるで稲妻が体を駆け巡るような、痺れる感覚。

 

 驚いている暇もない。

 

 ──牙を通じて、強烈な電流が舌を伝い、一気に相手へと流れ込む!! 

 

「──グギャァァァァッッッ!!?」

 

 獲物の絶叫が洞窟内に響き渡った。

 奴の巨大な体が痙攣し、ビクビクと跳ねる。

 まるで見えない糸に操られた操り人形のように、のたうち回る。

 

 ──が、

 

(……や、やばい!! これ……俺まで巻き込まれてっ!?)

 

 本来、微弱な電流のはずだった。

 だが、興奮のせいか? それとも何かのトリガーが引かれたのか? 

 

 ──放たれた電撃が俺の体ごと包み込み、逃げ場をなくしていた! 

 

(あばばばばばば!!! しびれぇぇぇぇっ!!?)

 

 全身が硬直し、筋肉が収縮する。

 顎の力が抜けず、牙の噛み締めが弱まらない。

 

(くそっ……!! 早く離れないとっっ!!)

 

 全身がビリビリと痺れ、視界が白く霞む。

 強引に牙を引き剥がそうとするが、痺れで思うように動けない。

 

(ま、まずい……このままじゃ……!!)

 

 神経が焼き切れたような感覚に、体は言うことを聞かない。

 もがこうとする意識とは裏腹に、体は硬直し、まともに動けない。

 

 ──だが、その時。

 

 俺の痺れきった感覚の中で、奴の動きが急激に鈍くなっていくのを感じた。

 獲物の鼓動が乱れ、呼吸が浅くなる。

 そして、ガクガクと痙攣しながら、よろめき、

 

「────ガ…………ァ……ェ…………」

 

 岩肌に頭を叩きつける、鈍い衝撃音。

 続いて、しばらくの静寂。

 

 ──ピクリとも動かない。

 

(………………勝った?)

 

 あまりの電撃の威力に自分でも信じられず、しばし呆然とする。

 

 そして、ようやく硬直が解けた瞬間、俺は口を無理やりこじ開け、牙を引き剥がした。

 全身に残る痺れを振り払いながら、地面にゴロゴロと転がる。

 

(……っ、なんかもう、疲れた……)

 

 勝利の余韻に浸る間もなく、疲労と痺れのダメージが先に来る。

 全身がジリジリと焼けるような感覚に包まれ、俺は大きく息を吐いた。

 

 鼻を突く、焦げ臭い匂い。

 洞窟内は静まり返り、先ほどまで響いていた獣の呻きも、今はない。

 

 俺は慎重に身を起こし、警戒しながらゆっくりと近づいた。

 

 ──蛙型の生物は、かすかに痙攣しながら、身体中から煙を上げている。

 焼け焦げた皮膚は裂け、ぬるりとした体液が地面に滴り落ちていた。

 

 そして、動かない。

 

(……本当に、倒したのか?)

 

 信じられない。

 けれど、確かに目の前には、俺が仕留めた獲物が横たわっている。

 

 初めての戦闘。

 初めての勝利。

 

 ……と言っていいのかは分からない。

 

 俺もボロボロだ。

 電流の暴走に巻き込まれたせいで、体はガクガクと震え、痙攣しっぱなし。

 こんなのが毎回続いたら、いずれ自滅しそうだ。

 

 ──けれど。

 

 俺は、勝った。

 勝ったのだ。

 

 弱者として怯え、這いずるだけの存在だった俺が、初めて『狩る側』に回れた。

 

 故に。

 

 これは、俺が強くなれるかもしれないという証明。

 

『狩る側』として生きていくことが出来るかもしれないという証明だと。

 

 今はただ、そう思いたかった。

 

 

 

 

 

 

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