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真冬の琵琶湖でウインドサーフィン中の大学生が漂流・死亡 #専門家のまとめ

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
(写真:イメージマート)

 大学生が亡くなるという痛ましい事故が発生しました。1月15日午後、琵琶湖でクラブ活動としてウインドサーフィンをしていた大学生1人が行方不明となりました。夜になり琵琶湖岸に打ち上げられて発見されました。当日は北北西の風がやや強く吹いていました。この時期の琵琶湖の水温は低く、落水したらドライスーツを着ていたとしても、冷たさは容赦なく襲ってきます。真冬のウインドサーフィンは、果たして安全なのでしょうか。

ココがポイント

近江八幡市佐波江町の沖合約200メートルの琵琶湖で、練習中のウインドサーフィンの帆が折れ、大学生1人が漂流
出典:読売テレビ 2025/1/15(水)

大学生を捜索していたクラブの仲間により岸に打ちあがっているのが発見(中略)ライフジャケットを着てウインドサーフィンの練習
出典:MBSニュース 2025/1/15(水)

死亡したのは同志社大学ボードセイリング部に所属する男子大学生(21)
出典:ABCニュース 2025/1/16(木)

エキスパートの補足・見解

 同志社大学ボードセイリング部は、季節を問わず活発に活動しています。facebookに掲載された活動報告を読む限りでは、1月11日から12日にかけて近江八幡市沖の琵琶湖で正規練習を行っているほか、12月中にも複数の練習を行っているようです。団体活動としての技能や経験については、十分だったように感じます。

 琵琶湖は、真冬の装いでした。Yahoo!ニュースコメント欄に寄せられた経験者の意見として「この時期の琵琶湖での落水・完全沈没は、ドライスーツを着ていても水の冷たさが堪える」といった内容が散見されました。強い風が湖面を駆け抜ければ琵琶湖ならではの高い波が発生するし、救命胴衣を着装していれば湖面を吹き流されることになります。要救助者の体力が続いている「短時間」での、緻密かつ広範囲な捜索が求められることになります。

 水上レジャーでは「まさか」を常に考えなければなりません。自力で航行不能になった時には、周辺の監視船や救助艇が素早く行動し、落水者の早期救助を行うものです。こういった救助技術も含めて、技能や経験を積むことが大学クラブ活動にも求められるかと思います。筆者の自戒もこめて。

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ありがとうございます。
水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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