ばくわな実戦ファイル
file09 ワインドアップ作戦(四) 輪っか棒
■ 新ワインドアップ作戦
前回file08キリコとの戦いでは、確保作戦は完全に失敗、最後は紐を噛み切られて逃げられるというショッキングな幕切れとなった。
だがそれだけに学ぶことの多い戦いでもあった。
今回は当然それをどう生かしていくか、という戦いになる。
まずは確保作戦の方である。
これまでは確保作業を少しでも安全に行うために、捕獲現場でネコと直接対峙する前になんとかネコの可動範囲を小さくできないか?ということに焦点を絞っていたわけだが、ネコの行動・習性などは様々で個体差も大きいのでそこまで自動で制御するのは困難、というのが前回思い知ったこと。
ならば実際の確保作業を安全に遂行する方法を考えるしかない、という結論に至った。
今までは確保作業といっても人によって捕獲の目的が違うし、そうなるとネコの基本的扱い方が変わってくるだろうし、そのうえ確保する側の体格・腕力などの個人差も結構あるだろう。となるとまあそのあたりのことは「各個の奮闘に期待する」ですませるしかないか・・・ぐらいに思っていたのだが、ここに至ってはそうも言ってられないか・・・・ということでこの機会に、ばくわなによる捕獲後の確保作業に関して今少し真面目に考えてみることにした。
要は捕獲後のネコの可動範囲を少しでも小さくすることを考えれば良い。重要なのはそれをネコから十分離れた安全圏から行えるかということである。
それもなるだけ簡単に、ということで今回用意したのがこちら。
園芸用のグリーン紐である。固い紐なので細かいロープワークなどには向かないが、対候性はやたら強いので屋外でいくら雨風や太陽光にさらされてもびくともしないという強みがある。
これの先端に、もやい結びでひとつ適度な大きさの輪っかを作る。もやい結びなので引っ張っても小さくなることがない輪っかである。
固く強張った紐なので、少々のことではこの丸い輪の形が崩れないのもこの紐の利点である。
この輪っか部分をばくわなのナイロン紐の根本付近に通してやる。(つまり、ばくわなの紐をこの輪っかに通してから土台のカラビナに引っ掛ける。)
でネコが罠に掛かったらこのグリーン紐を引っ張って輪っかを手繰り寄せれば良い。そうすればナイロン紐につながれたネコの首も自然手繰り寄せることができる。
原理的にはそれだけのことである。
だが実際には罠に掛かったネコは逃げようとしているので、ばくわなのナイロン紐は反対側にピンと張られた状態になっているはずで、その状態からグリーン紐を引こうとしても簡単には引けないだろうことはすぐに想像がつく。
そこでこのグリーン紐の輪っかを長い棒の先端に結び付けてやることにする。
庭木を剪定した際にできた長めの枝がちょうど良さそうだったので、これを使ってみた。
(一応長さを測ってみたらこれで95cmだった)
棒の先端付近にグリーン紐の輪っかを結び付けてから、残りの紐も棒に軽く巻き付けて手元まで持ってきておけば、棒から輪っかが抜けて外れたりすることもなく安心である。
これを先程と同様、ばくわなナイロン紐の根本付近にセットする。
ネコが罠に掛かったら棒を使って輪っかをなるだけネコの首付近までずり上げてやって、それから引いてやれば良いのである。
つまり棒を使って輪っかの操作性を少し改善してやるだけでさほど力をかけなくてもうまくいく・・・はずであるw
■ 紐ガード作戦
次に、噛み切り対策の方である。
今回はこの水道用のホースを使ってみることにした。
これを5cmほどの長さに切って、さらにその筒の先端付近に切り込みを入れてそこにタコ糸を結んでこんな部品を作ってみた。
これをばくわなの紐の輪っかの結び目付近にこのように取り付けてやる。
前回のキリコの動画を見ても、あるいは実際に切られた紐の画像を見てもわかることだが、噛み切られる恐れのある場所は決まっているのでそこさえガードしてやればよかろうというわけである。
これを仕掛けるのだが、これを左画像のように筒を真上に置いて普通に仕掛けると捕獲自体に失敗する。
これだと罠が発動するとホースの筒がネコの首の真上に落ちるがそこで止まってしまう。乾電池おもりは元々たいした力がないのでいったんネコの首に落ちた筒も引けないのです。
筒を落とすのはネコの首の真上ではダメで確実にネコの首の右側に落とし込んでやらないといけない。
それで右の画像のように筒を輪っかにはめ込んで一体化させてさらに少し右寄りにシフトさせて確実に首の右側に落ちるように仕掛けてやる。
これでOK。
■ 実戦確保の瞬間
結果の動画がこちら。
捕獲は問題なし。
この時は夜家にいて捕まったのはすぐわかったのだが、あとは紐ガードの具合はどうかしばらく様子見してみようかと、確かテレビドラマを見ながらちらちらと監視カメラの様子を横目で見ていたのだが…
その思わぬ事態が発生したのは捕獲成功から一時間後のことであった。
この場面を監視カメラを通してリアルタイムで目撃してしまい、激しく動揺したのを覚えている。
私にとっては、まさに絵に描いたようなというか、マンガのような「あぁッ、しまった!」の瞬間であった。
ネコの口、キバによる攻撃を防ぎさえすればと、それだけを考え過ぎてネコの前足の存在をすっかり失念していたのが敗因である。
本来ばくわなの紐の輪がいったん首にフィットしてしまえば、ネコの不器用な手と頭ではそれをゆるめることはできない。
もしネコがアライグマのようなモノをつかむことができるような器用な手を持っていたら、もともとストッパーも何もついていないのだからこんな紐など簡単にゆるめて外してしまうだろう。
あるいはネコも本当に頭が良かったら爪をほんの少し紐に引っ掛けてすっとゆるめるだけで、こんな罠などあっさり無力化してしまうだろう。
しかしそんなネコはいないのである。
それが今回は、ネコの不器用な手でも紐をゆるめることのできる装置をわざわざつけてしまったようなものである。
紐ガード部品をネコが何気なく前足ではらっただけで首にフィットしていた紐があっさりゆるんでしまった。
だが今回のネコは頭悪すぎというか、紐がゆるんだことにまったく気づいてなかったのがこちらに幸いした。
ちなみに、このように手前に前足を入れられるくらいのすき間があると知覚すれば、そこに前足を入れて紐をゆるめて逃げるということはネコも普通にできます。
それくらいの頭はある。
ばくわな開発中のわりと初期のころにそういうネコを実際に見たことがあるのでそれは確かである。(そんなことはとうにわかっていたのにこんな失敗をしたのでなおさらショックがデカかったと言える…)
この時ははもうゆるめる必要もなく、あとはほんの少し首を引くだけ、いやその場で少し頭を下に向けるだけでも紐がポトリと地面に落ちて逃げられていただろうが、まあネコというのは何もなければ前進する生き物なのでこういうこともあるということですね。
危うくもう少しで前回に引き続き連敗を喫するところでした。
不測の事態に愕然としたものの、ここからが今回の本来の新ワインドアップ作戦、輪っか棒を使った確保作戦の力の見せ所です。
いつものように首に紐が掛かっている状態ではなく、腰に紐が掛かっているこんな状態のネコを確保するというのは私としても初めてのことです。
人間でいうところの上半身が自由に動かせる状態なわけで、いつもと違うネコの動きに加えて、ネコとの安全な距離をどう取るかなど確保のリスク難度は高めと言えるでしょう。
体の大きさは標準的な成猫よりやや小さめで、たぶんまだ若いネコなんでしょう。あまり力はなさそうなので今回そこだけは少し安心な点である。ただすばやい動きには気を付けなくてはいけない。
人が近づけばネコは反対側に移動してうずくまってじっとしています。想定通りで、これがよく見る普通の反応です。ここで不用意にネコに近づくのは絶対にやってはいけないというのはfile06で話した通りです。
ネコにしてみればここはじっと反撃の機をうかがっているのですから。
まずはネコとの安全距離を確認しつつ、配置してあった輪っか棒を左手に取ります。
(右手にはショコ棒です。左手の輪っか棒でネコを手繰り寄せて右手のショコ棒で確保、の算段です)
ネコは反対側に陣取って動くまいとより強固に固まっているので、やはりこのままでは紐は引けません。
棒をうまく動かしてグリーン紐の輪っかをネコの方にずり上げていきます。
ある程度まで輪っかを移動させたら棒を上に引き上げて(これがワインドアップ動作である!)、遠く地面にへばりついているネコの体を引き起こしにかかります。
たまらずネコが起き上がってきます。わずかに頭をこちらにもたげたところを、すかさずショコ棒でキャッチです。うまくいきました。
これにて無事確保完了!
かなりスムーズな確保だったと思います。いつもこんなうまくいくわけではない。今回用意した輪っか棒がその威力を十分に発揮した成果と言えそうです。
確保作業というのはまずこちらの安全が第一。それを大前提としてやることです。今回は特に変則的な状態だったこともあり輪っか棒の準備がなかったら、安全を考慮してそれなりの時間をかけざるを得ず苦労していたことでしょう。
ところで、今回確保が決まった瞬間、映像が突然カラーになりました。
これは手前に置いてあったライトにネコが明るく照らし出されたせいで、カメラの明るさ検知センサーが反応して自動で昼間モードに切り替わっただけです。
ただの偶然だったわけですが、それまで荒々しい野生のネコだったものが確保されたとたん普通のイエネコにもどってしまったかのような、あたかもそんな演出・編集がされたかのような映像になっていて、ちょっと面白いところです。
■ 最もスマートな噛み切り対策
紐ガード作戦の方は大失策だったが、そこからのリカバリーで今回の確保作戦の有効性がより深く実感できたようなもので、結果ヨシであるw
あとは噛み切り対策をどうするかという問題が残ったが、現時点でこれといった案はない。
しかし、現実的にはこれは大丈夫なんですよね。
少なくとも普通の人は噛み切り対策みたいなことをごちゃごちゃやる必要はあまりないのです。
ここでいう普通の人とは私も含めてということになるが、身の回りの環境対策の一環として自宅の庭で暇なときに野放し猫を捕まえようかという一般的な人たちのことです。
そういう場合、ばくわなでネコが捕まればすぐわかります。自宅庭でネコにガサゴソされてたら落ち着いて何か他事やろうとはなりません。放置する分だけ庭が荒らされるだけなので、もうなるはやで確保してしまおうというのが常識的な行動なのです。
一方、前回のキリコの映像を見てもわかる通り、ナイロン紐というのはネコが2、3回噛んだくらいでは到底噛み切れません。なので通常はネコがナイロン紐を噛み切る前に確保作業というのはたいてい終わってるものなのです。(私のように実験としてあえて様子見をきめこむみたいなことをしなければ。)
つまり、速やかな確保こそが最もスマートな噛み切り対策と言えるわけです。
■ ばくわなが可能にする計画的捕獲
さらに、ばくわなにはそういう状況を自然に作り出せる大きな利点が実はあるのです。
たとえば市販の箱型捕獲器などを仕掛ける場合、仕掛けてその日にすぐ捕まるなんてことはあまりありません。子猫相手ならそういうこともあるかもしれませんが普通は一か月くらいの間に捕まれば良いかな…程度の話で、警戒心の強いネコの場合は一年たっても捕まらないなんてこともある話です。
なら紐罠だったらどうか、と考えてみると、仕掛けたその日に捕まることもたまにはあるがそれはかなりラッキーな話で、2、3回失敗するのが普通なので仕掛けて10日間くらいの間に捕まれば良いかな、という話になる。
つまり普通の罠というのは仕掛けたとしてもそれでネコがいつ捕まるかはまったくわからない。結局はネコの気まぐれや運次第みたいなことで…
それがばくわなになると話が違ってくる。
ばくわなの場合は仕掛けたその日、その夜に捕まるというのが割と普通にある。
そうなると「今日明日はあまり暇じゃないから時間に余裕のある明後日仕掛けて捕まえれば良い」みたいな話になる。
あるいは「捕まえたネコの処分まかせている○○さんが来週の月曜日は暇だと言ってたから日曜日に仕掛けて捕まえよう」といった具合に確保はもちろんのこと確保後のことまで見通した上での捕獲計画を立てていくことも可能になってくるわけです。
人の出入りや天候その他諸々の事情等を考慮して、最も自分に都合の良い日に仕掛けて捕まえれば良いのだと、回を重ねるごとに自然にそういう思考になっていく。
そのような計画、思考の流れの中では、罠を仕掛けたこと忘れていてネコが捕まっても放置して寝てました、みたいなことは起こらないのです。
■ 噛み切り対策募集中
しかし、ばくわなを使おうという人が上記のような普通の人ばかりでもないでしょう。
たとえば、ネコが捕まっても気づかないようなもっと広大な庭を持ってるような人、あるいは裏山みたいなものがあってその山の中に仕掛けたいというような人、そういう人は夜出歩くなんて物騒な話なので、ふつうは仕掛けた翌日の昼間にゆっくり掛かってるか確かめようという話になるでしょう。
他にも、人に依頼されて…という場合や、何か所かにいっぺんに仕掛けることになったんで…というような人もいるかもしれない。
そのような場合、少なくとも半日ぐらいは放置することになるでしょう。
その間にナイロン紐を噛み切って逃げることのできるネコがどの程度の割合いるかというのも実際にはよくわからないところなんですけどね。
今までも罠にかかった後、2、3回紐を噛んでるようなネコはよく目にしていたがそれくらいでは噛み切れないので、あとはなんとか力ずくで紐を引っ張って逃げようする、みたいなネコが多かったので、半日とか一日くらいで逃げられるネコというのは意外に少ないかも、という気もする。
まあ一定の割合でいることは確かだろうし、たとえ一匹でも紐を噛み切って逃げられるというのは実にわずらわしいことなので、やはりなんらかの対策は考えておきたいところである。
前述したとおり今のところ、良案と言えるものは何も思いついてないのだが。
考えてるとだんだん話が複雑になって来て、実際にやったら捕獲率思いっきり下げるだけで使えないだろうな、みたいな考えに行きつくことが多い。
苦労して作っても捕獲率を下げただけで、さして有効な噛み切り対策にもなってなかったらそれこそ愚の骨頂である。
それなら何もしないでシンプルに仕掛けた方がはるかにましである。
今回のガードを付けるというのもあれくらいなら簡単な工作だし名案かと思ったのだが、実際にやってみたらとんだ愚案であったw
あんな失態を演じるようでは私もそろそろ限界か…と思うこと大で、ここは良い案を広く募りたいところである。
もし何か有望そうな考えがあれば、是非教えてほしいものです。
2025年2月25日
by 皆ショ計画