初~コロニー到着
(ムービー、聞き取り)
(老爺の声)
もし、あなたが、あなたの知らない間に、別な人間として振る舞っていたら、どうしますか?
別な人間でいる間の記憶は、もちろん無い。
あなたの中の他人が、一体何をしでかすやら。
そんなことが本当にあなたの身の上に起きたら、どうしますか?
オホン。
このお話の主人公は、心の中に別な人格を住まわせています。それも三人も。
どうしてそんなことになったのか。
自分じゃあない自分が三人もいて、平気なんでしょうか。
お話の舞台となる火星には、あらぬ妄想をかき立てる力が、潜んでいるというではありませんか。
おおっ、恐ろしい…
やっかいなことにならなければいいのですがね…ふふふふ…
(小太りで仮面を付けた黒スーツの紳士のムービーが消えていく)
(クリスマスの室内、ツリーの下に宇宙船が置かれている)
(宇宙を宇宙船が飛んでいる)
自動着陸装置、確認。
装置、オン!
目標、シドニアエリア。顔のそば!
ザ・フェイス… 何がフェイスだ…
ちくしょう! 火星人め!
ヌーン、よしてよ。
火星人なんてもう滅んだのよ…
(宇宙船内)
エイプリル:
人間の顔を手に入れて、それで火星人は滅んだ…
なんか妙な感じね。
タトラー船長:
人間の顔が、彼らに災いをもたらした。
今ではそう考えられている。
ヌーン:
火星人のやつら、ハダに合わなかったんだよ、
人間の顔が。
タトラー船長:
地球からバクテリアを持ち帰ってしまった、
そんな説もある。
ヌーン:
けっ、大きなお世話って感じだな。
(アナウンス)
これより火星の軌道に向かいます。
これより火星の軌道に向かいます。
タトラー船長:
見ろ、あの狂おしい輝きを!
タトラー船長:
あれが火星だ!
災いの星、闘いの象徴…まやかしの惑星だ。
ヌーン:
ふん、イヤな感じだぜ、
とりわけ今度の任務はな。
ヌーン:
あそこにはおかしなウワサがいっぱいだ。
おかしなやつらもな。
(アラーム)
ライカ君、ライカ君だね…
そこにいるのは…
エイプリル:
無線テレビよ! 地球からね。
(ライカ、無線テレビを起動。司令官の顔が映る)
オクトーバー司令官:
ライカ君だね… 私はオクトーバー、
今回の任務の司令官を務める。
君を調査隊にすすめたのは実は私なんだ。
君の働きには期待しているからね。
さて、君たちが向かう火星だが、
どうも様子がおかしいんだ。
なんでも顔の形の怪物が現れただの、
世界の破滅が近いだの、
妙な噂が飛び交っている。
これから地球化計画を再開するにあたって、
そんなブッソウなことではいかん。
君たちの任務はうわさの真相を
突き止めることなんだ。
(別の顔が映る)
オクトーバー司令官:
ライカ君、この男を知っているかね。
(誰かの声)
ガリル大佐、先遣隊のリーダーだ。
(通信切れる。タトラー船長が来ている)
タトラー船長:
先遣隊が火星に送られたのは
10年前のことだ。
地球化計画の再開で、
火星に調査のためにやってきた。
ガリル大佐はそのときのリーダーだった。
神は死んだ、光の私…
ナゾのメッセージを最後に連絡は途絶えた。
火星に妙なウワサがはびこるようになったのは
それからのことだ。
我々はウワサの出所をさぐって、
火星はなんでもない、
平和で友好的だと報告しなければならない。
それが任務だ。
(船長、帰っていく)
タトラー船長:
いつまでそこにいる?
私をいらいらさせないでくれ。
着陸準備にかかるんだ。
(ライカ、部屋を出る。四人で集まる)
ヌーン:
でもなんで、ガリルって野郎は姿を
くらませたんだ?
10年になるんだろ、もうとっくに
くたばってるんじゃねぇのか。
タトラー船長:
ガリル大佐は火星が秘めている
よこしまな力に憑かれたのだ。
よほど強い意志の持ち主でない限り、
あらぬ妄想にとらわれてしまうというぞ。
自分を見失ってしまうというぞ。
ヌーン:
へっ、どんな妄想なんだ?
まさか滅んだ火星人をよみがえらそうって、
そんな計画とかじゃないだろうな。
クリスマスだっていうのに、
妄想野郎のお相手か。
こんなところで!
ちくしょう!
エイプリル:
オクトーバー司令官によると、
火星の土がいけないんだって。
土が人の心に悪い影響を与える…
だから私が呼ばれたの。
サンプルを持ち帰って調べるのよ。
地質学的な問題だそうよ。
タトラー船長:
ふふ、地質学的問題? モノは言いようだな。
土だと…ふふふ…
星全体が悪意を秘めているんだ。
ガリル大佐はその悪意に触れたに違いない。
神は死んだ、光の私。
ヌーン:
何だ? 光の私? やつの言葉か。
光の私ってどういうことだ?
輝いてるのか?
火星で、輝いてるってのか。
(アナウンス)
ただいま火星の軌道に入りました。
ただいま火星の軌道に入りました。
ヌーン:
いよいよだ、火星だ。
そこのふたり、用意はいいのか?
ルーキーの無線技師に学者のタマゴの
おネエさん…たのもしいかぎりだぜ。
タトラー船長:
ヌーン、よせ。誰にでも初心者の時期はある。
ライカ、君は宇宙飛行は確か…
エイプリル:
2度目よ。 前は人工衛星の修理。
私とはその時以来。
タトラー船長:
ふっ、人工衛星の修理とはな。
ライカか… ニックネームだな。
本当はなんて言うんだ?
(名前入力。入力した名前にノフが付く)
タトラー船長:
(入力した名前)ノフか。
由緒ある名前だ。
ヌーン:
でもよう、
ずっとずっとライカって呼んできたからな、
これからもライカでいかせてもらうぜ。
(火星着陸ムービー。人面岩を通る)
タトラー船長:
おっ! 見えてきたぞ。
ザ・フェイスだ!
エイプリル:
あれが…顔…
ヌーン:
どれどれ…
人類あこがれのお顔様ってワケか…
エイプリル:
火星人が残したのよ、
顔を忘れないように。
ヌーン:
へん、おかげで俺たちはこのざまだ。
タトラー船長:
さあ、みんな、着陸態勢に入るぞ!
(紫に包まれていく)
ヌーン:
何だ!この紫色のは何だ! 煙か?
タトラー船長:
ヌーン、もういちど着陸目標を確認してくれ!
たのむ!
(ヌーン、出ていく。船内が赤くなってライカ達が揺れる)
タトラー船長:
ヌーン! どうした、
着陸目標からずれたんじゃないのか。
ヌーン、答えろ、進入角が深すぎるぞ、
このままでは火星にぶつかるぞ。
手動でなんとかするんだ!
(船内ではない所に4人が浮いている)
(中年の人物が映る)
ヌーン:
ママ…ママなの、僕が悪かったの…
あああ、違う! ママじゃない、うそだ!
(若い人物が映る)
タトラー船長:
あああ…君は…あああ…まさか!
生きていたのか…いや、そんなはずはないぞ!
(荒れた部屋が映る)
エイプリル:
ここは…私の…どうして?
もうなくなったはずなのに…
(クリスマスツリーと宇宙船のある部屋が映る)
(ライカ無言)
タトラー船長:
みんな、惑わされるんじゃない!
何かの…その…幻覚だ。
ヌーン:
見えたんだ! 確かに。
あれは俺の、俺の…
タトラー船長:
ヌーン、よさないか! これは幻覚だ、
この星の邪悪な力が作用しているんだ。
(暗転)
怪物は心の中にいる。
(宇宙船、なんとか着陸する)
(テキスト表示のナレーション)
あまりにもはるかな昔のこと。
人類は火星人とひとつの契約を交わした。
それは「顔の契約」と呼ばれている。
顔を持たない火星人に、人間の顔を与えることで、
平和と友好を固く約束したのである。
しかし、人間の顔を手に入れた火星人はほどなく滅亡。
やがて火星は、流刑者や密航者によって荒んでいく。
そして星そのものがまるで意志を持つかのように、
よこしまなエネルギーを放ちはじめた。
心の悪を育てる力、イーブルマインドである――
(船内)
タトラー船長:
気を抜くんじゃないぞ。
降りたら勝手に動くな、全員で行動する、
分かったな。
ヌーン:
うまく着陸できた、機関も異常なしだ。
タトラー船長:
ヌーン、もういいぞ。
私たちは着陸すべくして着陸した。
そういうことだ。
エイプリル:
船長、ヌーンのおかげで私たち…
タトラー船長:
この船にアクシデントなどなかったのだ。
わからんのか…
報告書はそうまとめる。 さ、準備だ!
ヌーン:
けっ、とっととガリルって妄想野郎を
とっつかまえて地球に戻ろうぜ。
こんなブッソウな星に長居したくない。
この星には頭がおかしくなった
密航者ばかりだ。
タトラー船長:
密航者だけではない。
流刑者のなれのはても生きながらえている。
エイプリル:
彼らの協力が得られないと、
ちょっとやっかいよ。
ヌーン:
ふん! いよいよとなれば、力ずくでも…
タトラー船長:
さ、用意はいいか。
ライカ、なにをぐずぐずしてる?
君が最初に降り立つんだ。
エイプリル:
ライカ、大丈夫よ。
ハッチを抜けて右よ。
自分のヘルメット、
確かめてね。
ヌーン:
ロケットから離れるんじゃないぞ、
迷子になっても
ママはむかえに来てくれないぜ。
エイプリル:
前の任務もうまくいったじゃない。
今度もきっと平気よ。
ヌーン:
おっかなびっくりなんじゃねえのか?
タトラー船長:
ライカ、君がはじめの一歩を記すんだ。
(無線テレビを起動)
メッセージはありません。
(ドアを開けて外へ向かうと、船長、ヌーン、エイプリルがライカの後に続く)
「忘却の海」
(赤く広い荒れ地に皆で降りる)
ヌーン:
やけに静かだなあ。顔の怪物とやらは
でっち上げなんじゃねぇのか?
火星のやつら、地球から人が来ないように
ウソ言ってやがる… そうじゃねぇのか?
タトラー船長:
着陸予定地を少しずれたが、
なんとかなるだろう。
とりあえずコロニーをめざす。
実は先遣隊が隠れ住んでいるというウワサも
あるんだ。
エイプリル:
ヌーン、コロニーまでは遠いの?
たしかコロニーは、
ヨセミテ台地の上にあるはずよ。
タトラー船長:
ヌーン、どうなんだ、
コロニーまでは遠いのか?
ヌーン:
今いるところは、忘却の海だ。
この先にヨセミテ台地に登る道があって、
それから…
帰納の丘っていう場所を抜ければコロニーだ…
帰納って、なんだ?
エイプリル:
哲学用語よ。
ひとつひとつの事実を集めて、
共通することがらを見つけだすという。
タトラー船長:
うんちくはいらないぞ、
センセイ… あ、いや、エイプリル。
とにかくその帰納の丘を通れば
コロニーに着くんだな?
ヌーン:
ああそうだ、
地球からのご一行様ご到着ってな。
タトラー船長:
よし、コロニーをめざす。
さぁ出発だ、準備はいいな。
ヌーン、ライカの装備を見てやってくれ。
ヌーン:
へん、ちゃんとタンクも背負ってるし、
ヘルメットも着けてるぜ。
小さなハートもピクピクしてるぜ。
タトラー船長:
いかん、砂嵐が来る!
ぐずぐずしてはおれん、急ぐぞ!
暗くなるまでには着きたい。
(4人、歩き出す)
タトラー船長:
はぐれるんじゃないぞ。
タトラー船長:
イーブルマインドには気を付けるんだ。
ヌーン:
何だ? イーブルマインド?
タトラー船長:
火星の邪気だ。
紫色をしているぞ。近づくな。
タトラー船長:
イーブルマインドは妄想をかき立てるぞ、
あらぬことを考えてしまうぞ。
ヌーン:
ちくしょう!ろくでもないぜ!
(砂嵐がひどくなってくる)
ヌーン:
ああ、前が見えねぇ。
タトラー船長:
このままではまずいな。
タトラー船長:
ヌーン、どこかに待避場所はないのか?
ヌーン:
ああ、砂だ…ちくしょう、ざらざらしてきた、
頭ん中までざらざら、ざらざらだ。
エイプリル:
近くに避難小屋があるはずよ。ねぇ、ヌーン。
ヌーン:
あああ、避難小屋だ。
ヌーン:
ご一行は避難小屋に着きました、
そこでおネンネしました、
ヌーン:
目が覚めたらおウチでした。
ヌーン:
火星は平和でした、報告書はそう書けばいいんだ
そうじゃねぇのか?
タトラー船長:
ヌーン、おくれてるぞ。
ライカ、どうした、ペースを上げるんだ!
タトラー船長:
ライカ! なにをぐずぐずしてる、
はぐれてしまうぞ!
(ライカ一人歩いている。砂嵐が収まる)
(あたりが紫色になる)
(入力した名前)ノフ、
またお星さまとお話ししてるのか?
ひゃひゃひゃ、ケッサクだこりゃ!
いつまでいい子でいたいんだ、お前は?
そんな目で私を見るな!
(紫色が収まり、ライカ、倒れている)
(ライカの体から三人が出て来る)
ヨランダ:
今の聞いた?
ウラジミールとセルゲイの声よ。何でまた?
アーネスト:
へん! 俺には見えてたぜ。
ぴかっと光るお宝、俺のお宝だ。
スペーサー:
着陸地点に何かあったな。
お宝かどうかは分からないが、
岩にうずもれていた。
アーネスト、あれには君のパワーが必要だな。
ヨランダ:
ねぇ、どこなの、ここは?
やけにすさんだ場所ね。
せっかくのクリスマスよ、
ここはさびしいわ。
スペーサー:
火星だ。(入力した名前)ノフは
任務で火星にやってきている。
この星の何かが(入力した名前)ノフに作用して、
あんな声が聞こえたんだ。
つらかった子供の頃を思い出した…
(入力した名前)ノフは、忘れてなかったんだ。
ヨランダ:
あーら、作用だなんて、
いやな感じね。
これからアタシたちの出番、増えるのかしら。
それにしてもクリスマス返上なのよ。
宇宙航空隊の無線技師って、
えらく大変なお仕事なのね。
アーネスト:
へっ、結構なことだ。
ちょっとばかしタイクツしてたところだ、
せいぜい楽しませてもらうぜ。
ヨランダ:
じゃあ、ロケットから見えたのは、本物なのね。
火星の顔、あれがそうなのね?
スペーサー:
本物だ。 ザ・フェイスと呼ばれている、
火星人のイセキだ。
今回の任務となにやら関係がありそうだ。
ヨランダ:
ねぇ、ここで顔、作るの?
私たちも人間の顔になるの?
アーネスト:
私たちだと? おい、お前と一緒にするな、
俺はアーネストだ、分かったか!
スペーサー:
あらそいはやめるんだ、アーネスト。
どうする、君が表に出るのか?
アーネスト:
ああ、そうだな。
何が起こるか、分からねぇからな。
スペーサー:
誰か来る。
アーネスト、君の出番はなくなったようだ。
(三人、ライカの中に消える)
(浮遊するものが現れる)
スピリットマン:
ひょひょ、(入力した名前)ノフや、
お前はひとりではないな。
やはりそうだ、
お前はフクザツだ、ひょひょ。
スピリットマン:
この星には悪がはびこっている。
その影響を受けて、お前はどんどん変わるぞ。
人格変容するぞ、ひょひょひょ!
スピリットマン:
オーラだ、悪に触れたらお前の体から
オーラが現れるぞ。
オーラの色で悪の種類が分かる、
ひょひょ。
さあ、心の状態を見えるようにしてやろう。
マインドスコープだ、
(画面にマインドスコープが表示されるようになる)
スピリットマン:
これでお前の心が見えるぞ、のぞけるぞ。
(スピリットマン消える)
(ライカ、起き上がって歩き出す)
(砂煙が起こるのでそれを調べると、布をかぶった小柄な人物が現れる)
えへへへ、びっくりしてる…
ねぇ、そうなんだろ?
オーラだよ、あんたは感応してるんだ。
火星の人間はみんなこうだよ、
あんたを感応させるよ。
(動いていく砂煙を調べるとまた声がする)
この星はひどいよ、いろいろとね。
悪さをしかけてくるよ。
あんた、大丈夫なの? 耐えられるの?
いやな思い出がよみがえったり…
思い出だけじゃなくてね、ウソもホントも
何もかも。 惑わされるかもね。
心が弱いとダメさ。 あんたは…
うーん、読めないな。
強いのか、弱いのか、わからないよ。
さっきの人は読めたよ、ひどくおびえてるよ。
弱いんだね、きっと。
(砂煙消える)
(宇宙船の見える崖の所へ行くと、ヌーンがいる)
ヌーン:
おお、ライカ、平気だったか?
ヌーン:
あああ、砂だ、砂嵐で…
ああ、砂嵐で、頭の中がぐるんぐるんなんだ。
避難小屋はすぐそこだ。
船長達が待ってるに違いない。 急ごう。
ヌーン:
おお、あれだ!
避難小屋が見えたぞ!おほほー!
(画面青くなり、ヌーン、立ち止まる)
変だぜ、あああ、俺…
いやな気分でいっぱいになってきた…
ヌーン:
きっと砂嵐のせいだ、
砂が頭の中にまで入ってきたみたいだ…
ヌーン:
よう、さっきは悪かったな、
ちゃかしたりしてよ。
あんまりいい感じしねぇんだ、今度の任務はよ。
それに船長のやつも。
(画面青くなり、ヌーン、苦しむ)
ああああ、何だ?
ああああ、いやだ、来るな!
こっちに来るな!
ママ…ママなの?
どうして…僕のせいなの…
(ヌーン、後ずさって駆けだしていく)
(ヌーンの走って行った先に避難小屋がある)
「避難小屋」
ヌーン:
はあ、はあ…俺としたことが…くそっ!
いやな思い出がよみがえってきて…
なあ、お前、これ避難小屋に見えるよな?
俺にもそう見える…
ちょっと開けてみてくれ。
扉だよ、そこの扉を開けるんだ。
(扉を開ける)
ヌーン:
大丈夫だ…入ってみよう。
(小屋の中にエイプリル、船長、ヌーン、ライカが集まる)
エイプリル:
ライカ!
おそいから心配したよ! 大丈夫だった?
タトラー船長:
やっと全員そろったな。
ひとまずここで待機だ。
この星は予想以上にひどいことになっている。
暗くなる前に、
なんとかコロニーに到着したい。
ヌーン、コロニーまではどのくらいだ?
ヌーン:
コ、コロニー…
ふふふ、コロニーには誰がいるんだ?
誰かが待ってるのか?
タトラー船長:
ヌーン、どうした?気分でも悪いのか。
ここで夜を明かすわけにはいかないんだ。
エイプリル:
ヌーンは疲れてるのよ。
船長、ちょっと休みましょう。
タトラー船長:
ダメだ。
我々は任務をやりとげなければならない。
ヌーン、コロニーまではどのくらいなんだ?
ヌーン:
うふふふふふふ…
コロニー…コロニー…早くおうちに帰りたい。
ママが待ってるんだ!
タトラー船長:
いいかげんにしろ、キサマ!
私には時間がないんだ。
くそっ、これは任務だ! 私の任務なんだ!
エイプリル:
船長! 隊員の命を守るのも、
船長の役割じゃないの!
ヌーン:
命…いのち…
タトラー船長:
…………
ふ… 仕方ない。
分かった、ここで小休止だ。
エイプリル、ライカ、
君たちは二人で偵察に出てくれないか。
暗くなる前に安全なルートを確保したいんだ。
イーブルマインドにさえ
用心していれば平気だ。
どうやら酸素はうまく供給されているようだ、
もうヘルメットはいらないぞ。
さあ、偵察に出てくれ、たのんだぞ。
エイプリル:
行きましょう。
タトラー船長:
どうした、ライカ?
怖じ気付いたのか…
もうここは地球のようなものだ、
恐がることはないぞ。
ヌーン:
うふふふふふふ…
コロニー…コロニー…早くおうちに帰りたい。
ママが待ってるんだ!
(小屋の外に出る)
エイプリル:
ねえ、ライカは平気だったの、
イーブルマインド…
心に良くない影響を与えるって…
エイプリル:
船長、きっとイーブルマインドに
影響されたのよ…変だもん。
ライカたちより先に小屋に着いてたよね、
そのときしきりに女の人の名前をつぶやいて。
クロエ、クロエって。
なんだか気味悪くて…
前にヌーンから聞いたことあるのよ、
船長とそのクロエって子のこと。
エイプリル:
船長が士官学校時代に知り合った少女…
自分の妹のように可愛がっていたのに、
事故で死んじゃったんだって。
ヌーンが教えてくれたんだけど、
船長はその子の写真を今でも大切に
持ち歩いてるそうよ。
エイプリル:
さあ、この先よ。
ちょっと見て大丈夫そうだったら戻らない?
(エイプリル、先に行く)
(避難小屋の窓の人影に聞き耳を立てる)
違う!本当にいたんだ、あそこに、ママが!
ふっ、犯罪者のか…
獄死したはずだろう、お前の母親は。
いたんだ…僕を追いかけてきた…
死んだ人間がよみがえる…ふふふふ、面白い。
ここはユカイな星だ!
早く、帰りたい。
誰だ?誰かいるのか?
(タトラー船長が外に出て来るのでライカ、身をかがめる)
タトラー船長:
気のせいか…
(避難小屋の入口に戻っても開かない)
(先に進むとエイプリルが走っていく)
エイプリル:
ライカ! こっち、こっちだよ!
私の生まれた家よ、見せてあげる。
ねえ、来て、こっちよ。
(宇宙船の見える崖が紫色になり、さっきまで無かった扉が現れている)
(ライカ、扉を開けて中に入る)
(灰色の荒れた部屋で、声が聞こえる)
いけないわ、その箱を開けちゃ。
中には悪魔が閉じこめられているの…
エイプリル、分かって…お願いよ。
さあ、クリスマスプレゼントは
もうおしまいにして、私のところに来て、
エイプリル…さあ…
(ライカ、扉の外に戻る。扉、消える)
(先へ進むとエイプリルが来る)
エイプリル:
ああよかった、はぐれちゃったかと思った。
コロニーはこの先よ。
イーブルマインドは現れていないみたいね。
砂嵐の気配もない…
ねえ、小屋に戻りましょうよ。
エイプリル:
船長は何が何でも今日中にコロニーに
着くつもりよ。
だったら日が暮れないうちに出発しなきゃ。
それに…なんだか気分がすぐれないの。
(エイプリル、ライカ、避難小屋の前に戻る)
エイプリル:
ねえ…何か変よ…
扉が開けっ放しになってる。
エイプリル:
船長たち、出かけたのかなあ…
戻ってくるとき、
誰ともすれ違わなかったよね…
エイプリル:
ねえ、入ってみない?
(小屋の中には誰もいない)
(奥の部屋に入ると、巨大なおもちゃ箱の中身のような場所に出る)
(大きな扉が開いて大きな人物のシルエットが映る)
ウラジミール:
(入力した名前)ノフ! 何度言ったら分かるんだ!
ロケット遊びばかりしてるんじゃない!
こんなもん!
(ロケットが投げられて壊される映像)
ウラジミール:
セルゲイ兄さんを見習え!
ええ? 見習うんだ、できそこないめが!
(子供の笑うシルエット)
セルゲイ:
よう、宇宙飛行士殿、へへへ、
またヘマをやらかしたのか?
へへへへ、いいこと教えてやろうか?
父さんはお前がキライなんだよ。
お前達がこの家に来たときからな、
キライなんだ。
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。
(シルエットが消え、部屋が青くなる)
(入力した名前)ノフ、聞こえる? ママの声が…
お願い、自分を見失わないで。
ウラジミールはあなたの新しいパパよ。
セルゲイは新しいお兄さん…
あなた、兄弟が欲しいって言ってたじゃない。
セルゲイ兄さんとは仲良くしてね。
(部屋を出る。小屋を出るとエイプリルがいない)
(ロケットの所に戻り、アイテムシンボルに触れる)
おうおう、俺の石だ、お宝だ、
これは俺が見つけたんだ、
手を出すな、ちくしょう!
さっきは悪かったな、ええ?
あやまるよ、ほんとさ。
おわびに、ほら、これをやる。
さあ、食いなよ、俺の目の前で、早く!
ひひひ、腐ったパイだ、お前にぴったりだろ、
男の腐ったやつに腐ったパイだ、
ははははは、ぴったりだろ、
ああ臭ぇ、お前も同じ臭いがするぜ!
(宇宙船内に戻っても誰もいない)
(無線テレビを起動すると司令官の顔が映る)
オクトーバー司令官:
ライカ君…ライカ君だね…
火星はどんな様子かな?
実は火星人について、
新しいことが分かりそうなんだ。
ある昆虫学者が研究を進めていてね、
その成果と言うわけだよ。
もう少ししたら
その昆虫学者から連絡させるよ。
(通信終わる)
(避難小屋の先に行く)
おい、そこにいるの… あんただろ?
さっきのあんただろ?
(砂煙が舞う)
(入力した名前)ノフっていうんだろ?
(砂煙の中から、布をかぶった小柄な人物が現れる)
ダミアヌス:
不思議だなぁ…
あんたって…つかみどころないんだよ。
なかなか読めないからね。
(ムービー。ダミアヌス、マスクを取る)
ダミアヌス:
ライカ…
それがあんたのニックネームなんだろ。
僕はダミアヌス…
へへ、砂の子ダミアヌスさ。
あのふたり、どこに行ったか知りたいかい?
僕が誘導したんだ、
でも途中で勝手に抜け出したんだよ、ふふふ。
(クロエと船長、ヌーンと母親の映像)
ダミアヌス:
あのふたりはね、
この星に呼ばれたってこと。
ふたりとも弱いんだね。
ふふふ、女の子だけ帰納の丘に誘導したよ…
それにしても不思議だなぁ、あんただけは
誘導できなかったよ。
なんでかな…最大のナゾだね。
女の子はこの先、帰納の丘にいるよ。
ちょっと疲れたみたいだったよ。
(ダミアヌス、砂の中に消える。また戻ってくる)
ダミアヌス:
そうそう、あんたにあげるよ、砂のシンパシー。
いい名前だろ。
僕に用があるときには
それで呼んでくれるといいよ。
もっとも、この場所じゃなきゃ、
だめだけどね。
砂のシンパシーを手に入れた。
(ダミアヌス、砂の中に消える)
(砂のシンパシー/ダミアヌスを呼び出す)
(砂のシンパシーを使うとダミアヌスが出て来る)
ダミアヌス:
えへへ、さっそくだね。
あんた、気がみじかいの?
僕が誰かってことだよね。 僕は砂の子、
えへへへへへ、でもオバケじゃないよ。
そんな僕にも分からないことがあるんだ。
どうしてだろう、あんたを誘導できなかった。
誘導っていうのは、その人を導くことなんだ。
ちょっとした遊びだけど、
あんたにはムリみたいだ。
さて、帰らなきゃ、またね。
(ダミアヌス、砂の中に消える)
(もう一度砂のシンパシーを使う)
何も起こらなかった。
「帰納の丘」
(夕陽の差す丘にエイプリルが立っている))
エイプリル:
あっライカ…
またふたりになっちゃったね。
エイプリル:
さっきの子、催眠術でも使ったの?
知らない間にここまで歩いてきた…
変な気分ね。
気をつけなきゃ。
この星に心をうばわれたりしないように。
…ねぇライカ、
ライカはこの任務に志願したの?
エイプリル:
私、この任務のこと
ほとんど知らされてなかったの。
ただ火星の土のサンプルを持ち帰る…
なんでもいいってわけじゃないけど、
急にそういう話になって…
オクトーバー司令官は、
火星の土に含まれてる成分が人に
幻覚をもたらす、そう考えてるみたいなの。
ほんとに急だったのよ。
はじめは乗り気がしなかったけど、
ライカと一緒って聞いて引き受けたんだ。
エイプリル:
ああ、夕陽ね、火星の夕陽…
今日はクリスマスイブね。
火星でクリスマスだなんて…
まだ気分がすぐれないから、
ちょっとここで休んでいくね。
ライカ、先にコロニーに行って。
ヘロデっていう人をたずねるの。
酸素屋のヘロデ。
その人がコロニーを仕切ってるの。
船長たち、もう到着してるかも知れない。
エイプリル:
ここでちょっと休んだらすぐに追いつく。
だから先にコロニーに行ってて。
酸素屋のヘロデをたずねるのよ。
彼が協力してくれるはずよ。
(ライカ、一人でコロニーへ行く)
「ブリックロード」
(誰かの声)
まだだめなのね。
アタシには見えない。
サイコちゃんには簡単なことなのに。
ふん、ラミーのやつ…
まだ何かアタシに隠してるのね。
(ドアを離れ、人が歩いてくる)
サミー:
あら、あなたは… ふふふ、新顔ね。
あなたは…どのタイプなの?
ねぇ、サイコちゃんなの?
サミー:
だったらそこの目玉、扉の前にある
でっかい目玉が見えるはずよ…どう?見える?
サミー:
見えないのね、そうよね。
だったらアニマルちゃんかしら…
それにしちゃ弱そうね。
まさかビジュアルちゃんじゃないわよね、
犬顔だものね。
地球から、でしょ。
何しに来たの、ここはサイテーよ、
どいつもこいつも、うそつきばっかで。
あなたも気を付けてね、
変なことに巻き込まれないように。
(サミー、去る。スピリットマン現れる)
スピリットマン:
ひょひょ、
あいつは見かけにこだわるビジュアル系…
火星の住人はみな悪を秘めてるぞ。
話をすると、お前の心に悪がたまる、
どんどんたまる。
その悪がお前を変えるぞ、
ひょひょひょ。
(スピリットマン、路地の先へ行く)
スピリットマン:
こっちへ来い来い、鏡の部屋だ。
(違う方へ行こうとする)
スピリットマン:
ひょひょ、(入力した名前)ノフや、どこへ行く?
こっちだ、来い来い、鏡の部屋だ。
(大きな鏡のある部屋に行く)
スピリットマン:
さあ、鏡の前に来るのだ。
スピリットマン:
そうだ、(入力した名前)ノフ。
今度は鏡に触れてみろ。
たまった悪でお前は人格変容するぞ。
自分を映して自分でなくなる、ひょひょひょ。
(クリスマスツリーと宇宙船の玩具のある部屋、苦悩するライカ)
スピリットマン:
これはおどろいたぞ、ひょひょ…
(入力した名前)ノフや、
お前の心は思ったよりうんと寒々しいぞ。
全てが止まり、色を失っているぞ…
(ライカ、変身)
スピリットマン:
現れた!
(入力した名前)ノフではない、お前は誰だ?
アーネスト:
おう、俺はアーネストだ。
お前こそ何だ?
スピリットマン:
ひょひょひょ! アーネストか、
見るからにお前はアニマル系だな。
アーネスト:
うるせぇ、俺は聞いてるんだ!
お前は誰だ、さっきもいやがったな!
スピリットマン:
見えていたのか!
(入力した名前)ノフの時も、表が見えていたのか!
アーネスト:
はっきりじゃねぇ、
ぼんやりだ。
お前が呼んだのか?
(入力した名前)ノフを火星に呼んだのか、
どうなんだ、答えろ!
スピリットマン:
呼んでなどいないぞ、アーネスト。
運命の輪が回り始めたのだ、ひょひょひょ。
さあ、自分自身を実感するのだアーネスト。
(スピリットマン消える)
(アイテムシンボルを壊して入手)
タオゴールドを手に入れた。
(タオゴールド/EM値を回復する)
(コロニーの外との道にはスピリットマンがいる)
スピリットマン:
ひょひょ、アーネストや、
何をそんなに急いでいるのだ。
この先に何かあるとでも…
ひょ、まだお前はいろいろを
知らなさすぎるぞ。
アーネスト:
ちょろちょろしやがって、
うるせぇやつだ。 先に行かせろ!
スピリットマン:
ひょ、今はならんぞ、アーネスト。
アーネスト:
なんでだ? 後ならいいのか?
スピリットマン:
この先はまだ早い、もう少し学んでからだ。
さあ、アーネスト、お勉強の時間だ、
ひょひょひょ。
スピリットマン:
ひょひょ、アーネストや、
お前にできることは何だ?
アーネスト:
俺にできること…
へん! 力には自信があるぜ。
(サミーがいたドアは開かない)
アーネスト:
何だこりゃ…鍵がかかってるぜ。
(先へ向かう)
スピリットマン:
お勉強だ、アーネスト。
(スピリットマン現れる)
スピリットマン:
この星には力だけではままならないことが
あるのだ、それを知るがいい。
(敵が現れる)
アーネスト:
へん、現れやがったな、顔のバケモンめが!
スピリットマン:
こいつらはフェイスだ、
顔への妄念が実体化したものだ。
フェイスはお前たちの可能性が好物だぞ。
フェイスの攻撃でEM値がゼロになったら、
お前は消えてしまうぞ、ひょ。
アーネスト:
EM値だと? 消えるだと…
俺はそんなことにはならないぜ!
スピリットマン:
力では勝てんぞ、アーネスト。
お前の心が作り出すマインドコアで、
フェイスの念派をはね返すのだ。
タイミングをうまく合わせてな、
ココロの○ボタンを押すのだ、ひょひょ。
マインドコアを戻すときは、
ココロの×ボタンだ、
それがテクニックだ、ひょひょひょ。
(スピリットマン消える)
(敵シンボルに触ると戦闘)
(戦闘終了)
(鏡の部屋へ行くとスピリットマンがいる)
スピリットマン:
私は鏡の中にいる、
鏡の中でお前を待つぞ、ひょひょ。
(入力した名前)ノフに戻るのはたやすいぞ。
戻るか、どうするか?
戻るのなら鏡に触れてみろ
(鏡に触れずにコロニーへ向かう)
「コロニー」
(入口の機械)
アナタハ トウロクサレテイマセン。
クワシクハ カンリシャニ
オタズネクダサイ。
アーネスト:
ちくしょう!
なにが登録だ、くそったれ!
(鏡の部屋でアーネストからライカに戻る)
(スピリットマンはいなくなる)
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