コンテンツにスキップ
現在第四回執筆コンテスト開催中。/流行記事大賞2024の結果が発表されました。

ウシマンボウ

提供: 知木ペディア
Last 5 Pages Viewed: ウシマンボウ
ウシマンボウ
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: フグ目 Tetraodontiformes
亜目 : マンボウ亜目 Moloidei
: マンボウ科 Molidae
: マンボウ属 Mola
: ウシマンボウ M. alexandrini
学名
Mola alexandrini
(Ranzani, 1834)
シノニム
* Orthragoriscus alexandrini
Ranzani, 1839[1]
  • Orthragoriscus ramsayi
    Giglioli1883[2]
  • Mola ramsayi[3]
  • Masturus lanceolatus
    (not of Liénard)
  • Mola alexandrini
    Barnard, 1947
  • Pseudomola lassarati
    Cadenat, 1959
  • Mola ramsayi Atlantic group
    Bass et al. 2005[4]
  • Mola mola group A
    Yoshita et al. 2005[5]
  • Mola sp. group A
    Yoshita et al. 2009[6]
  • Mola sp. A
和名
ウシマンボウ[7]
(牛翻車魚)
英名
*Bump-head sunfish[7]
  • Ramsay's sunfish
  • Southern sunfish
  • Southern ocean sunfish
  • Short sunfish


ウシマンボウとは、フグ目マンボウ科に分類される海水魚である。

形状[編集 | hide all | hide | ソースを編集]

最大で全長332cm、体重は2300kgに達する。

TL162.5cm以上の大型個体は目の上から背鰭の付け根の前 の頭部と顎が突出する。舵鰭は半月状で、軟条数は8-15本(モードは12本)。鎖骨数は8-15本[6]

体側中央部の鱗は長方形[7]

背側と各鰭は灰色か暗赤褐色で、腹側はくすんだ白色。腹部は白っぽい。体側に淡い斑紋や不規則な模様がある。体全体に不規則な模様がある。瞬時に暗色に変わることがある[7]

体側には皺は無い[8]

外見上の雌雄差は無いが、生殖腺の形状が、雌は単一で球形で、雄は対をなし、細長い棒状である。

生態[編集 | hide | ソースを編集]

世界中の温帯から熱帯に分布する。両極にはいない。

太平洋では、日本[5]台湾[9]ガラパゴス諸島[10]ニュージーランドオーストラリア[9]バリ島[11]に分布する。

大西洋では、トルコオマーンスペインアドリア海マデイラ諸島[12]カナリア諸島[12]カーボベルデ諸島[12]に生息している。

日本国内においては、北海道[13][14][15]青森県[15]宮城県[5]、岩手県[9]茨城県[9]千葉県東京都 (小笠原諸島)[6][16]神奈川県[17][18]新潟県 (佐渡島)[19]富山県[20]福井県[21]石川県[22]三重県[8][23]静岡県[9]徳島県[24]高知県島根県[25]山口県[26]大分県[27]長崎県[28]鹿児島県[29]沖縄県 (久米島渡名喜島)[6][30]で記録がある。マンボウよりも暖水を好む。

好む水温は16.2~26.9℃。マンボウ科の中でも好む水温は広く、ヤリマンボウとカクレマンボウと重なる[31]

分類[編集 | hide | ソースを編集]

本種は、長い間マンボウと混同されてきた歴史がある。

記載[編集 | hide | ソースを編集]

  • 1834年 - “Orthragoriscus alexandrini“の原記載となる簡易的な記述がRanzaniにより書かれる。
  • 1838年 - Ranzaniが発表した書籍でO. alexandriniの図と簡易的な記載が行われる[1]
  • 1883年 - Enrico Hillyer Giglioliがゴウシュウマンボウ(Orthragoriscus ramsayi)を新種記載した[2]
  • 1951年 - Fraser-Brunneによってマンボウ科が再検討され、マンボウ属はマンボウ(Mola mola)とゴウシュウマンボウ(Mola ramsayi)の2種とし、O. alexandriniはマンボウのジュニアシノニムとした[3]。これ以降この2種が有効であると言われて来た。

遺伝子的な再検討[編集 | hide | ソースを編集]

  • 2005年
    • 5月25日 - 青森県~鹿児島に出現したマンボウ22個体をmtDNAのD-loop領域を分析した結果、宮城県沖で採取された大型マンボウはそれ以外で捕獲された小型個体群との塩基置換率は10.8-12.0と差が見つかった[5]
    • 12月 - Bassらは、調節領域によりマンボウ属は2グレードに分かれ、マンボウとゴウシュウマンボウに対応するとした。この2グレードはそれぞれ太平洋と大西洋のクレードに分かれる[4]
  • 2009年12月25日 - 世界中のマンボウをmtDNAのD-loop解析にかけた結果からマンボウはA-Cの3群に分かれるとされ、AグレードとBグレードの間では形状的な差が存在するとされた[6]
  • 2010年4月26日 - A種に『ウシマンボウ』という和名が提唱され、是迄使われてきた『マンボウ』という和名はB種の和名になった[9]

学名の特定[編集 | hide | ソースを編集]

  • 2017年12月5日 - 澤井悦郎らが、A種はゴウシュウマンボウ及び、‘‘Mola alexandrini’’と同一であるとし、A種の学名にはMola alexandriniが当てられると判明。Mola molaはB種された[7]
  • 2022年10月13日 - BritzがSawaiらが示した再記載時に使用された単位はセンチメートルであるが、実際はピエデ、オンシア、プントであり、その単位でウシマンボウの原記載にある体長と模式標本と思われる標本の大きさが大きく異なっていることから、真の模式標本ではないとし、ウシマンボウの学名は‘‘Mola ramsayi’’とした。
  • 2023年12月13日 - ウシマンボウの再記載をした澤井とマリアンは、Britz (2022)を否定した。大きさの単位はメートルでもピエデでもなく、パリ単位であり、大きさも計測者によって差が出来てしまうと指摘した。標本と原記載の図は一致する点が多いとし、この標本が模式標本であるとした。学名は原記載の記述からやっぱり‘‘Mola alexandrini’’とし、原記載は1938年の論文[1]とされていたが、もっと古い1835年に簡易的な記載があり、それが原記載となるともした。

人間との関係[編集 | hide | ソースを編集]

水族館で飼育された事例は存在しないが、剥製であればアクアワールド大洗 (OIMo-1)とミュージアムパーク茨城県自然博物館 (INM-1-000568)、神奈川県立生命の星・地球博物館 (KPM-NI 31858)、北九州市立自然史・歴史博物館 (KMNH VR 100,123)の4館で見ることが出来る[32][17]

名称[編集 | hide | ソースを編集]

標準和名の「ウシマンボウ」は東北方言に由来し、牛の様なゴツゴツした見た目に由来する。「マカマンボウ」という地方名もあり、これもゴツゴツした形状に由来する。

「ゴウシュウマンボウ」という名はオーストラリア周辺に分布することから命名された。ウシマンボウの再記載時にオーストラリア以外にも分布していることからウシマンボウの方がふさわしいとされ、採用された[7]

種小名の“alexandrini“は、模式標本を保管していた博物館の当時の館長に由来している。

出典[編集 | hide | ソースを編集]

  1. 以下の位置に戻る: 1.0 1.1 1.2 Ranzani C. (1839). “Dispositio familiae molarum in genera et in species“. Novi Commentarii Academiae Scientiarum Instituti Bononiensis. 3 : 63-82.
  2. 以下の位置に戻る: 2.0 2.1 Giglioli E.H., (1883). “Zoology at the Fisheries Exhibition. II.--Notes on the Vertebrata“. Nature. 28 : 313-316.
  3. 以下の位置に戻る: 3.0 3.1 Fraser-Brunner A. (1951). “The ocean sunfishes (Family Molidae)“. Bull. Br. Mus. Nat. Hist. Zool.. 1 : 1-120. DOI:10.5962/bhl.part.21630.
  4. 以下の位置に戻る: 4.0 4.1 Bass, A. L., H. Dewar, T. Thys, J. T. Streelman & S. A. Karl. (2005). “Evolutionary divergence among lineages of ocean sunfish family, Molidae“. Mar. Biol.. 148 (2) : 405-414. DOI:10.1007/s00227-005-0089-z.
  5. 以下の位置に戻る: 5.0 5.1 5.2 5.3 相良恒太郎, 吉田有貴子, 西堀正英, 国吉久人, 海野徹也, 坂井陽一, 橋本博明 & 具島健二. (2005). “日本周辺海域に出現するマンボウMola molaにみとめられた2つの集団“. 日本魚類学雑誌. 52 (1) : 35-39. DOI:10.11369/jji1950.52.35.
  6. 以下の位置に戻る: 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 Yoshita Y., Yamanoue Y., Sagara K., Nishibori M., Kuniyoshi H., Umino T., Sakai Y., Hashimoto H. & Gushima K. (2009). “Phylogenetic relationship of two Mola sunfishes (Tetraodontiformes: Molidae) occurring around the coast of Japan, with notes on their geographical distribution and morphological characteristics“. Ichthyological Research. 56 (3) : 232-244. DOI:10.1007/s10228-008-0089-3.
  7. 以下の位置に戻る: 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 7.5 Sawai E., Yamanoue Y., Nyegaard M. & Sakai Y. (05 December 2017). “Redescription of the bump-head sunfish Mola alexandrini (Ranzani 1839), senior synonym of Mola ramsayi (Giglioli 1883), with designation of a neotype for Mola mola (Linnaeus 1758) (Tetraodontiformes: Molidae)“. Ichthyological Research. 65 (1) : 1-19. DOI:10.1007/s10228-017-0603-6. ResearchGate.
  8. 以下の位置に戻る: 8.0 8.1 澤井悦郎 (2021). “写真に基づく三重県初記録のウシマンボウ, およびマンボウ属の新たな分類形質“. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan 8 : 31-36. DOI:10.34583/ichthy.8.0_31.
  9. 以下の位置に戻る: 9.0 9.1 9.2 9.3 9.4 9.5 山野上祐介, 馬渕浩司, 澤井悦郎, 坂井陽一, 橋本博明 & 西田睦. (2010). “マルチプレックスPCR法を用いた日本産マンボウ属2種のミトコンドリアDNAの簡易識別法“. 魚類学雑誌. 57 (1) : 27-34. DOI:10.11369/jji.57.27.
  10. Tierney M. thys, jonathan whitney, alex hearn, kevin C., weng, cesar pen~aherrera, L. jawad, j. alfaro-shigueto, J.C. mangel & stephen a. karl. (2013). “First record of the southern ocean sunfish, Mola ramsayi, in the Galá pagos Marine Reserve“. Marine Biodiversity Records. 6 (e70) : 1-4. DOI:10.1017/S1755267213000377.
  11. Dewi SLKT, Mohammad M. Kamal, T. Tarsidin & G. Yulianto. (2021). “Sunfish’s (Mola spp.) Habitat Characteristics on their Appearance at Dive Tourism Depths in Nusa Penida Waters, Bali“. JURNAL BIOLOGI TROPIS. 21 (1) : 149. DOI:10.29303/jbt.v21i1.2442.
  12. 以下の位置に戻る: 12.0 12.1 12.2 Wirtz P. & Biscoito M. (2019). “The distribution of Mola alexandrini in the Subtropical Eastern Atlantic, with a note on Mola mola“. Bocagiana. 245 : 1-6.
  13. 山野上祐介. (2014). “北海道初記録のウシマンボウ Mola sp. A“. 魚類学雑誌. 61 (2) : 127-128.
  14. 澤井悦郎, 田村佑輔 & 桜井泰憲. (2020). “写真に基づく北海道2例目および北限更新記録のウシマンボウ“. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan. 3 : 47-50. DOI:10.34583/ichthy.3.0_47.
  15. 以下の位置に戻る: 15.0 15.1 澤井悦郎 & 石黒智大. (2022). “北海道3例目および青森県初記録のウシマンボウ“. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan. 25 : 27-33. DOI:10.34583/ichthy.25.0_27.
  16. 澤井悦郎. (2024). “小笠原諸島から得られた日本最小記録を更新するウシマンボウ“. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan. 41 : 13-16. DOI:10.34583/ichthy.41.0_13.
  17. 以下の位置に戻る: 17.0 17.1 澤井悦郎, 瀬能宏 & 竹嶋徹夫 (2019) “神奈川県立生命の星・地球博物館に展示されていたウシマンボウの剥製標本“. Bull. Kanagawa prefect. Mus. 48 : 37-42. DOI:10.32225/bkpmnh.2019.48_37.
  18. 澤井悦郎 & 山田和彦. (2022). “日本国内で初めて確認されたウシマンボウの座礁記録“. Ichthy Natural History of Fishes of Japan. 18 : 6-10. DOI:10.34583/ichthy.18.0_6.
  19. 澤井悦郎. (2023). “新潟県初記録および日本海で初めての打ち上げ記録となるウシマンボウ“. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan. 28 : 32-35. DOI:10.34583/ichthy.28.0_32.
  20. 澤井悦郎, 山野上祐介, 木村知晴 & 稲村修. (2017). “日本海から2例目 (富山県初記録) のウシマンボウ“. 魚類学雑誌. 64 (2) : 191-193. DOI:10.11369/jji.64-191.
  21. 澤井悦郎. (2021). “写真に基づく福井県初記録のウシマンボウ“. Nature of Kagoshima. 48 : 119-121.
  22. 石川県水産総合センター. (2012). “ウシマンボウ?来遊“. 石川県漁海況情報. 229 : 1.
  23. 澤井悦郎. (2024). ‘‘三重県沖で新たに漁獲されたウシマンボウとそのマスメディア報道について’’. Nature of Kagoshima. 51 : 36-38.
  24. 澤井悦郎. (2021). “写真に基づく徳島県からのヤリマンボウ, ウシマンボウ, およびマンボウ (マンボウ科) の記録“. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan. 10 : 1-6. DOI:10.34583/ichthy.10.0_1.
  25. 澤井悦郎. (2022). “写真に基づく島根県初記録のウシマンボウ“. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan. 27 : 1-3. DOI:10.34583/ichthy.27.0_1.
  26. Sawai E., Yamanoue Y., Sonoyama T., Ogimoto K. & Nyegaard M. (2018). “A new record of the bump-head sunfish Mola alexandrini (Tetraodontiformes:Molidae) from Yamaguchi Prefecture, western Honshu, Japan“. Biogeography. 20 : 51-54. DOI:10.11358/biogeo.22.65.
  27. 澤井悦郎, 山野上祐介, 坂井陽一. (2015). “九州初記録のウシマンボウ“. 魚類学雑誌. 62 (2) : 201-202.
  28. Sawai E. & Nakamura I. (2020). “New locality record of the bump-head sunfish Mola alexandrini (Tetraodontiformes: Molidae) from Nagasaki Prefecture, western Japan“. Biogeography. 22 : 65-67. DOI:10.11358/biogeo.22.65.
  29. Sawai E. & Yamada M. (2020). “Bump‐head sunfish Mola alexandrini photographed in the north‐west Pacific Ocean mesopelagic zone“. Journal of Fish Biology. 96 (1) : 278-280. DOI:10.1111/jfb.14214.
  30. 澤井悦郎, 川本剛志 & 吉田健太朗. (2023). “久米島と渡名喜島沖の水中で撮影されたウシマンボウの記録“. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan. 31 : 14-18. DOI:10.34583/ichthy.31.0_14.
  31. Nyegaard, M., Loneragan, N., Hall, S., Andrews, J., Sawai, E., & Nyegaard, M. (2018). ‘‘Giant jelly eaters on the line: Species distribution and bycatch of three dominant sunfishes in the Southwest Pacific. Estuarine“. Coastal and Shelf Science. 207 : 1-15. 10.1016/j.ecss.2018.03.017.
  32. 澤井悦郎, 山野上祐介, 望月利彦 & 坂井陽一. (2015). “日本国内の博物館関連施設に保管されているマンボウ属の大型剥製標本に関する形態学的知見について“. 茨城県自然博物館研究報告. 18 : 65-70.
Cookieは私達のサービスを提供するのに役立ちます。このサービスを使用することにより、お客様はCookieの使用に同意するものとします。