ウシマンボウ
| ウシマンボウ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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| 分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| Mola alexandrini (Ranzani, 1834) | ||||||||||||||||||||||||||||||
| シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
| * Orthragoriscus alexandrini Ranzani, 1839[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| ウシマンボウ[7] (牛翻車魚) | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
*Bump-head sunfish[7]
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ウシマンボウとは、フグ目マンボウ科に分類される海水魚である。
形状[編集 | hide all | hide | ソースを編集]
最大で全長332cm、体重は2300kgに達する。
TL162.5cm以上の大型個体は目の上から背鰭の付け根の前 の頭部と顎が突出する。舵鰭は半月状で、軟条数は8-15本(モードは12本)。鎖骨数は8-15本[6]。
体側中央部の鱗は長方形[7]。
背側と各鰭は灰色か暗赤褐色で、腹側はくすんだ白色。腹部は白っぽい。体側に淡い斑紋や不規則な模様がある。体全体に不規則な模様がある。瞬時に暗色に変わることがある[7]。
体側には皺は無い[8]。
外見上の雌雄差は無いが、生殖腺の形状が、雌は単一で球形で、雄は対をなし、細長い棒状である。
生態[編集 | hide | ソースを編集]
世界中の温帯から熱帯に分布する。両極にはいない。
太平洋では、日本[5]、台湾[9]、ガラパゴス諸島[10]、ニュージーランド、オーストラリア[9]、バリ島[11]に分布する。
大西洋では、トルコ、オマーン、スペイン、アドリア海、マデイラ諸島[12]、カナリア諸島[12]、カーボベルデ諸島[12]に生息している。
日本国内においては、北海道[13][14][15]、青森県[15]、宮城県[5]、岩手県[9]、茨城県[9]、千葉県、東京都 (小笠原諸島)[6][16]、神奈川県[17][18]、新潟県 (佐渡島)[19]、富山県[20]、福井県[21]、石川県[22]、三重県[8][23]、静岡県[9]、徳島県[24]、高知県、島根県[25]、山口県[26]、大分県[27]、長崎県[28]、鹿児島県[29]、沖縄県 (久米島・渡名喜島)[6][30]で記録がある。マンボウよりも暖水を好む。
好む水温は16.2~26.9℃。マンボウ科の中でも好む水温は広く、ヤリマンボウとカクレマンボウと重なる[31]。
分類[編集 | hide | ソースを編集]
本種は、長い間マンボウと混同されてきた歴史がある。
記載[編集 | hide | ソースを編集]
- 1834年 - “Orthragoriscus alexandrini“の原記載となる簡易的な記述がRanzaniにより書かれる。
- 1838年 - Ranzaniが発表した書籍でO. alexandriniの図と簡易的な記載が行われる[1]。
- 1883年 - Enrico Hillyer Giglioliがゴウシュウマンボウ(Orthragoriscus ramsayi)を新種記載した[2]。
- 1951年 - Fraser-Brunneによってマンボウ科が再検討され、マンボウ属はマンボウ(Mola mola)とゴウシュウマンボウ(Mola ramsayi)の2種とし、O. alexandriniはマンボウのジュニアシノニムとした[3]。これ以降この2種が有効であると言われて来た。
遺伝子的な再検討[編集 | hide | ソースを編集]
- 2005年
- 2009年12月25日 - 世界中のマンボウをmtDNAのD-loop解析にかけた結果からマンボウはA-Cの3群に分かれるとされ、AグレードとBグレードの間では形状的な差が存在するとされた[6]。
- 2010年4月26日 - A種に『ウシマンボウ』という和名が提唱され、是迄使われてきた『マンボウ』という和名はB種の和名になった[9]。
学名の特定[編集 | hide | ソースを編集]
- 2017年12月5日 - 澤井悦郎らが、A種はゴウシュウマンボウ及び、‘‘Mola alexandrini’’と同一であるとし、A種の学名にはMola alexandriniが当てられると判明。Mola molaはB種された[7]。
- 2022年10月13日 - BritzがSawaiらが示した再記載時に使用された単位はセンチメートルであるが、実際はピエデ、オンシア、プントであり、その単位でウシマンボウの原記載にある体長と模式標本と思われる標本の大きさが大きく異なっていることから、真の模式標本ではないとし、ウシマンボウの学名は‘‘Mola ramsayi’’とした。
- 2023年12月13日 - ウシマンボウの再記載をした澤井とマリアンは、Britz (2022)を否定した。大きさの単位はメートルでもピエデでもなく、パリ単位であり、大きさも計測者によって差が出来てしまうと指摘した。標本と原記載の図は一致する点が多いとし、この標本が模式標本であるとした。学名は原記載の記述からやっぱり‘‘Mola alexandrini’’とし、原記載は1938年の論文[1]とされていたが、もっと古い1835年に簡易的な記載があり、それが原記載となるともした。
人間との関係[編集 | hide | ソースを編集]
水族館で飼育された事例は存在しないが、剥製であればアクアワールド大洗 (OIMo-1)とミュージアムパーク茨城県自然博物館 (INM-1-000568)、神奈川県立生命の星・地球博物館 (KPM-NI 31858)、北九州市立自然史・歴史博物館 (KMNH VR 100,123)の4館で見ることが出来る[32][17]。
名称[編集 | hide | ソースを編集]
標準和名の「ウシマンボウ」は東北方言に由来し、牛の様なゴツゴツした見た目に由来する。「マカマンボウ」という地方名もあり、これもゴツゴツした形状に由来する。
「ゴウシュウマンボウ」という名はオーストラリア周辺に分布することから命名された。ウシマンボウの再記載時にオーストラリア以外にも分布していることからウシマンボウの方がふさわしいとされ、採用された[7]。
種小名の“alexandrini“は、模式標本を保管していた博物館の当時の館長に由来している。
出典[編集 | hide | ソースを編集]
- ↑ 以下の位置に戻る: 1.0 1.1 1.2 Ranzani C. (1839). “Dispositio familiae molarum in genera et in species“. Novi Commentarii Academiae Scientiarum Instituti Bononiensis. 3 : 63-82.
- ↑ 以下の位置に戻る: 2.0 2.1 Giglioli E.H., (1883). “Zoology at the Fisheries Exhibition. II.--Notes on the Vertebrata“. Nature. 28 : 313-316.
- ↑ 以下の位置に戻る: 3.0 3.1 Fraser-Brunner A. (1951). “The ocean sunfishes (Family Molidae)“. Bull. Br. Mus. Nat. Hist. Zool.. 1 : 1-120. DOI:10.5962/bhl.part.21630.
- ↑ 以下の位置に戻る: 4.0 4.1 Bass, A. L., H. Dewar, T. Thys, J. T. Streelman & S. A. Karl. (2005). “Evolutionary divergence among lineages of ocean sunfish family, Molidae“. Mar. Biol.. 148 (2) : 405-414. DOI:10.1007/s00227-005-0089-z.
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