閉経後の体調不良は「老化」ではなかった
女性ホルモンに振り回された私の話を、ここで終わりにできればいいのだが、ところがどっこい。私は、その後さらに、思いもよらない病に罹患していることがわかった。
閉経して、情緒不安定や月経痛とはおさらばしたものの、頭痛・腰痛・便秘・冷え性・不眠症などは相変わらず。感情の起伏は穏やかになったが、不定愁訴とまではいかないものの、いつもなんとなく落ち込み気味。体形も、猫背やガニ股という、老人特有の体形に近づきつつあった。
だが、体調不良や気分の低迷は閉経前からあったし、体形の変化も、歳を考えれば不思議ではない。だから私は、またもや「これは体質。もう歳だから仕方がない」と考え、治療と呼べるようなことはなにひとつしていなかった。
ところがそれが、大間違いだったのだ。自分ではまったく気づいていなかったのだが、閉経後、いや、おそらく閉経前から、私の体のなかではふたつの病が少しずつ、だが間違いなく着実に、悪化の一途をたどっていたのである。
ひとつは「骨盤底障害」。そしてもうひとつは「GSМ(ジーエスエム〈閉経関連尿路生殖器症候群〉)」である。
膀胱・子宮・直腸が腟から出てくる
骨盤底障害は、経腟出産した女性に起こることが多い。骨盤底筋群は、出産によって必ずダメージを受けるからだ。加齢に伴って女性ホルモンが減少してくると、その影響で筋力が弱ってくる。すると、過去に受けたダメージが顕在化してくるのだ。
最初に現れる症状は、ほとんどの場合、尿もれである。私の場合、最初に現れたのは便秘だった。尿もれか便秘か、人によって現れ方は違うかもしれないが、この病になると、排泄に関わる不調が起きてくることが多い。
進行すると、膀胱・子宮・直腸が落ちてきて腟壁を押し、腟のなかに出っ張ってくる。しまいには、腟壁もろとも、腟口からそれらの臓器が出てきてしまう。昔は「女の脱腸」と呼ばれていたが、現在も、ある日突然、腟口からなにかが飛び出してきて、初めて「おかしい」と気づく人がいる。腟は、腟口を除くと鈍感な臓器なので、骨盤内臓器が実際に体外に出てこなければ、気づけないのだ。
日本人女性の70%が予備軍と言われているほどで、けっして珍しい病ではない。閉経しても改善は見込めず、静かに進行する。
GSМも、女性ホルモンの減少が引き金となって発症する。2014年にアメリカで行われた「国際女性性機能学会」で正式に認定された新しい病なので、知らずにいる女性もいるだろう。だが、GSМは、50代以降の女性の50%に発症するという。これまた、少しも珍しくない病なのだ。この病もまた、閉経しても改善することなく進行する。