ベート・ローガがよく口にする『雑魚』にどんな意味が込められているのか知らないあなたでは無い。
だが、どういう事情があれ、 同じファミリアの大切な仲間を悪く言われたのだ。ここで言い返さないで、なにが仲間かっ!!
意を決したあなたは、寡黙なままに、料理のお駄賃をカウンターテーブルに置くと、席を立つ。
「──さん?」
黙って立ち上がったあなたにシルさんが反応する。
相手が
今こそあげるべきだろう、弱者の咆哮を!!
だがしかし今はまだ
あなたは、スゥーと、肺いっぱいに空気を吸い込みむと、己が出せる最大の声量で叫んだ。
ロキのペッタン神ぃ!! と……
「だぁーれぇがぁペッタン神ぃやてぇぇえええ!!! 」
案の定、ブチギレる
同時、あなたは神の恩恵による最大脚力で、出入口のスイングドアを突っ切り、豊饒の女主人を飛び出し、そのままダンジョンの方角へと駆けていく。
□□□
「おいっ!! 今、ウチのことをペッタン神呼ばわりした、命知らずな馬鹿は何処のどいつやっ!!
ロキは、自分の平たい胸を揶揄し、都市最大派閥のファミリアの主神に喧嘩を売るような真似をした
神であるロキをこんな風に揶揄う輩など、
(ってことは何処ぞの子供があないな失礼極まりない発言しおったんか? 天下の【ロキ・ファミリア】の主神のウチ相手に? マジでどこのアホやねん!!)
怒り心頭といった様子で犯人を探す主神に、フィンが至って冷静に告げる。
「ロキの探している相手なら、もうこの店には居ないよ」
「なんやてっ!?」
「あの走行速度から見て、Lv1の駆け出しといったところか」
リヴェリアが見解を話す。
「リヴェリアの話が真実なら、ガハハハハ!!!
ガレスは、酒の入った大ジョッキ入った片手に、愉快に大笑い。
「フィン、リヴェリア、自分ら、そいつの
「いや、私が見た時には丁度店を出る寸前で、後ろ姿しか捉えられなかった」
「僕はまぁ少しだけど目視できたよ」
「ホンマかフィン! どないなやつだった?」
「黒髪、碧眼の10代の見た目をした
「容姿は整ってる方やったか?」
「まぁ、かなり良い部類には入るんじゃないかな」
「せ、性別はっ!?」
食い気味に訊ねるロキ。ちょっと高揚しているようだ。
「何故、性別をそんなに気にする……」
ジト目を向けるリヴェリア。
「そんなん決まってるやろ。野郎だったなら、ボコさなウチの気が済まん! でも、アイズたんやレフィーアみたいに可愛い女の子だったら罰ゲームと称して可愛い格好させて、ご奉仕してもらいたいって思うやん普通!!」
「聞いた私が愚かだった……」
頭が痛いと言わんばかりに、こめかみの辺りを押さえるリヴェリア。
「で、そこのところ、どうなんやフィン!!」
フィンは、やれやれと肩を竦めてみせる。
「なんというか、とても中性的な容姿と身体付きをしてたからね。正直、性別は、はっきりとは分からなかったよ」
「えええ……いっちゃん重要なところなんにぃ」と心底残念そうな声を出すロキ。
「あ、そうや、親指!! フィンの親指ならわかるんやないかっ!?」
「んーそれが変な話なんだけど……」
「変な話? どうしたん? 言ってみ?」
「……親指曰く、どちらとも言い難いらしい……」
「ふ〇な〇っこキターーーーー!!!」
謎テンションで勢いよく立ち上がり、両手を開いてあげるロキ。
「いやまてよ……男の娘という可能性もあるんか……くっ、どっちなんや!」
「またわけのわからないことをいっとるわい、うちの主神は……」
と、ガレスが呆れ交じりの苦笑い。
「何時ものことだろう……」
諦念のため息をつくリヴェリア。ふと、アイズがずっと扉の方を見ていることに気づく。
「どうしたアイズ?」
「……ううん、なんでもない」
アイズはそういうがどこからどう見てもなんでもないようには見えなかった。
「いや、でも、うん。一つだけ言いたいことが。……私、ベートさんのこと(無神経なところ)嫌いです」
「グハッ!?」
「「ベートが死んだあっ!! この人でなしぃ!!!」」
アマゾネス二人の楽しげな声が響く。
□□□
あなたはダンジョン六階層でベルと合流、その後、夜中から朝方までの間、共にダンジョンでモンスターを倒しまった。
日が昇る頃、流石に無視できないレベルで疲弊したとことでダンジョンから帰還し、二人してボロボロの姿で街路を歩き、
その道中、あなた達の帰りが遅いことを心配して街中を探していたヘスティアさまに遭遇。
ベルは、その胸の中で滾る熱い想い、決意をヘスティアさまへと伝えた。
「……神様、僕、強くなりたいです」
ダンまちの名シーンの一つ。
そんな場面を眼前で目撃したあなたは、自身の胸が熱く熱く滾り、昂っているのを自覚する。
また
……特に選択肢が現れることもなく、名シーンをこんなまじかで見れたことに、ただただ尊い感情に没頭する事ができたのであった。