「苦しむ学生の声を聴く!」 高等教育無償化と学費値上げ

稲葉剛・立教大学大学院社会デザイン研究科客員教授
東大の値上げ方針に反対する学生らが集まった安田講堂前の様子=東京都文京区で2024年9月18日、西本紗保美撮影

 「家庭の経済状況に関わらず、大学・高専などへの進学を希望する全ての若者が、自らの夢を実現できる社会にするために、高等教育の無償化を大胆に進めます」

 昨年10月の衆院選において自民党が掲げた政権公約には、「生まれてきた子供たちが、それぞれの夢や希望をかなえられるよう、質の高い学びの機会を確保することが重要」との理念のもと、高等教育の無償化を推し進めるという政策が盛り込まれていた。

 しかし、今年2月7日、政府が閣議決定した大学等修学支援法の改正案は、2025年度以降、扶養する子が3人以上いる多子世帯に限定して、大学等の授業料・入学金無償化の所得制限を撤廃するという従前からの政府方針に沿った内容だった。

 文部科学省は対象を多子世帯とした根拠として「理想の子供数が3人以上の場合において、理想の数を諦める理由として、子育て・教育費を挙げる割合が顕著になっている」と説明するが、少子化の要因となっている高等教育費の負担は多子世帯に限った話ではなく、「学ぶ権利」を保障するという観点からも、より「大胆」な負担軽減策が求められているのは言うまでもない。

家計の負担が大きすぎる

 もともと日本には他の先進国と比べ、高等教育費に占める家計の負担が大きすぎる…

この記事は有料記事です。

残り2330文字(全文2853文字)

全ての有料記事が読み放題

ご登録から1カ月間は99円!!

※会員ページからいつでも解約できます。

※料金は税込です

立教大学大学院社会デザイン研究科客員教授

 1969年生まれ。一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。14年まで理事長を務める。14年、つくろい東京ファンドを設立。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『コロナ禍の東京を駆ける』(共編著、岩波書店)など。