カナダでは2015年からトルドー首相が政権を率いてきましたが、インフレへの対応などをめぐり支持率が低迷する中、トルドー氏は6日の記者会見で首相を辞任する意向を明らかにしました。与党・自由党の党首も辞任するとしています。
カナダではことし10月までに総選挙が行われる予定で、トルドー氏は「内輪もめをしなければならないのであれば、私は総選挙で最善の選択肢にはなれない」と述べ、与党内からの辞任圧力が決断の要因となったことを示唆しました。
さらに少数与党の中、野党側による不信任案が可決される公算も高まっていました。
一方、トルドー氏は議会下院がことし3月下旬まで休会することを明らかにし、自由党は今後、後継選びを本格化させることにしています。
カナダの公共放送・CBCは、アメリカのトランプ次期大統領による関税の引き上げなどへの対応をめぐりトルドー氏に反発して辞任したフリーランド前副首相兼財務相や、カーニー元カナダ銀行総裁らを候補として挙げています。
ただ、カナダで先月末に行われた世論調査では、自由党の支持率が16%となっているのに対し、最大野党・保守党が45%と大きくリードする情勢となっています。
カナダ トルドー首相 辞任の意向表明 与党 後継選び本格化へ
カナダのトルドー首相が6日、首相を辞任する意向を表明しました。インフレ対策などをめぐり支持率が低迷する中で決断を迫られた形で、与党・自由党はトルドー氏の後継選びを本格化させることにしています。
トランプ氏「カナダの人の多くは51番目の州になることを歓迎」
カナダのトルドー首相が辞任する意向を表明したことを受け、アメリカのトランプ次期大統領は6日、SNSに「カナダの人の多くは51番目の州になることを大いに歓迎している。アメリカはもはやカナダを維持させるために必要な巨額の貿易赤字と補助金に苦しむことはできない。トルドー氏はそれを理解しているから、辞任するのだ」と投稿しました。
そして「もしカナダがアメリカと合併すれば、関税はなくなり、税金は大幅に下がり、カナダを取り囲むロシアや中国の船舶の脅威から完全に守られることになるだろう。一緒になれば、どんなにすばらしい国になることか」として、みずからの主張を改めて強調しました。
トランプ氏はカナダからの輸入製品に対して関税を課す方針に対抗する姿勢を示したトルドー首相について「知事」と呼んでやゆするなど、カナダをけん制していました。
ホワイトハウス報道官「アメリカの頼りになる友人」
アメリカ、ホワイトハウスのジャンピエール報道官は6日、記者団に対し「トルドー首相はアメリカの頼りになる友人だった。彼がカナダ政府を率いたおよそ10年間、われわれは緊密な同盟国であり、隣国として、あらゆる問題で緊密に協力してきた。バイデン大統領は、トルドー首相の協力に感謝している」と述べました。
そして「われわれは同じ民主主義国家として、自由党の新たな党首を選び、新政権を発足させるカナダ国民とともにある」と述べてカナダとの連帯を強調しました。
林官房長官「今後も緊密に連携していく」
林官房長官は7日の閣議のあとの記者会見で、他国の内政に関わることでコメントは控えるとした上で「日本とカナダはインド太平洋地域の重要な戦略的パートナーだ。ともにG7=主要7か国のメンバーとして政治、経済、安全保障、人的交流など幅広い分野で密接に協力しており、今後も緊密に連携していく」と述べました。
インフレ対策への不満を口にする人も
カナダの首都オタワの官庁街に近いレストランで働いている男性は「カナダでの暮らしはとても厳しいです。住宅を手に入れるのは困難で、食料品も、何もかもが高いのです。トルドー首相はもう誰かに引き継ぐときだと思います」と政権のインフレ対策への不満を口にしていました。
また、21歳の男性は「トルドー首相は苦しい立場が続いていたもののアメリカのトランプ次期大統領の関税に関する発表が重要な転換点の1つになったのは間違いありません。誰が首相の座に就いても、今は悪い状況です。このあと起きるあらゆることに対処を迫られることになるのですから」と話し、カナダ政府がトランプ次期政権と向き合う難しさは変わらないだろうと指摘しました。