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 断食と宿便

 体内に蓄積された過剰な脂質を減らすには、食事療法、運動療法、薬物療法があります。

 ここでは、古くから行われている断食の効能を、考えて見たいと思います。
 断食をすると、食べていないのに、便が出て来て、宿便と呼ばれます。上行結腸(右側の大腸)では、逆蠕動が起こり、古い食物残渣が溜まっていて、断食中に宿便として排泄されると考えられます。
 宿便は、「腸管内壁にこびりついた古い便」というように考えるのは、間違いだと思われます。実際、人間で、大腸の内視鏡検査を行っても、そんなこびりついたような便は、見当たりません。食べた食餌は、腸管内をトコロテン式に食べた順番で押し出されて、大便になるのではないです。

 1.断食の効能
 断食には、生命機能(遺伝子の発現状態)をリセットする効果があるようです。

 断食の効能として、
 1)内臓諸器官の休息:胃腸、肝臓、腎臓を休め、機能回復させる、
 2)過剰栄養分の排出:蓄積した脂肪を代謝させる
 3)毒物・老廃物の排出:長年生きていると、脂肪には、様々な「毒素」も蓄積する。脂肪に溶けた「毒素」は、通常の生活では、排出されにくい注1
 4)白血球の増加(注2
 5)潜在生命力の賦活
などが、期待されます。

 絶食時(断食中、冬眠中など)には、肝臓では、ブドウ糖の生成(糖新生)が行われ、血液中にブドウ糖が供給されます。肝臓でのブドウ糖の生成(糖新生)には、筋肉の蛋白質が分解されて生成されるアミノ酸(アラニンなど)が、炭素骨格として利用され、また、脂肪酸が分解(β-酸化)されて生成されるエネルギー(NADH2+など)が、エネルギー源として、利用されます(断食中には、脂肪と筋肉とが、分解されます)。
 カエルなどは、冬季に4カ月程度の期間、エサを食べないで冬眠します。
 冬眠中の動物の体重減少は、脂肪の減少が主です(注3)。
 表1 冬眠後の臓器の重さの減少
 冬眠日数   44日間冬眠  163日間冬眠
 脂肪    -3.19%   -16.28%
 筋肉    -2.02%    -7.63%
 骨    -1.79%    -1.95%
 皮膚    -0.46%    -5.57%
 肝臓    -0.24%    -1.88%
(参考文献の寺井氏等の断食のすすめ」の115頁の表から引用)
 断食により、体内の過剰な脂肪だけでなく、過酸化脂質などの有害な脂肪を減少させることが、可能かも知れません。

 肝臓は、通常、食事を摂取して4~5時間後から、血液を浄化し始めると言われます。
 肝臓が、最低10時間以上の間、血液を浄化しないと、血液は、浄化されず、於血血液粘稠度の上昇を来たす(ドロドロ血液になる)と考えられます。

 2.断食後の消化吸収力の向上
 稲などの植物では、水を与えないようにする期間を設けると、根が丈夫になるそうです(田干し)。
 断食後も、腸の機能が亢進して、栄養の吸収が良くなり、体も脂肪を貯えるように代謝が変化するので、少食でも健康に過ごせるようになるようです。 

 3.安全な断食
 断食では、絶食することよりも、食事を再び食べ始める回復期に、異常に出る食欲を抑えながら食事の量を徐々に増やすことの方が、困難のようです。
 回復期は、重湯を主にして、胃腸や肝臓に、負担をかけないことが、原則のようです。
 同じカロリーの食事を摂取しても、腸で消化・吸収したり、肝臓で代謝するのに必要なエネルギー量(食事代謝量)は、炭水化物の方が、蛋白質(ステーキなど)より、少ないです。

 断食中は、十分な水分を飲む必要があります(成人は、1日1~2リットル)。
 水分は、空腹時に飲むことが大切。水分を、食事中や食後3時間以内に飲むと、胃液や消化液が薄まり、消化吸収が低下します。
 なお、水分としては、お茶など、ビタミンCを含む飲み物が、良いと思われます。

 長期間の断食療法は、それなりの経験のある施設に入所して行わないと、危険です。特に、長期間の断食療法は、腸液の分泌機能を、低下させてしまう危険性が、あります。
 しかし、夕食後から次の日の昼食前までとか(朝食抜きの半日断食)、土曜日の夕食後から日曜日の夕食前まで(1日断食)、水分のみで過ごす程度の断食でしたら、安全に挑戦出来ると思われます。

 成人の腸管内では、1日当り、約10Lの水分が入って、(再)吸収されます。
 腸管内に入る水分は、飲食によって摂取される水分が2L、消化管から分泌される水分(唾液、胃液、膵液、胆汁、腸液などの消化液)が約8Lと言われます。
 急性胃腸炎などで、嘔吐や下痢があると、水分や電解質が喪失し、脱水に陥ります。
 体力が低下している時に、食事(特に、高蛋白食、高脂肪食)を摂ると、消化液として、水分や塩分を消化管に分泌する必要があるので、体内(特に循環血液中)の水分や塩分が、一時的に、腸管内腔に喪失することが、肉体に負担となります。 
 表2 消化液の量と電解質濃度(参考文献の宮田剛氏の表2を引用)
 消化管  分泌/排泄量
 (L/日)
 電解質濃度(mEq/L)  pH
 Na+  K+  Cl  HCO3
 唾液  1.0  20~80  10~20  20~40  20~60  7.0~8.0
 胃液  1.0~2.0  20~100  5~10  120~160  -  1.0~7.0
 胆汁  1.0  150~250  5~10  40~80  20~40  7.0~8.0 
 膵液  1.0~2.0  120  5~10  10~60  80~120  7.0~8.0 
 小腸液  1.0~2.0  80~150  2~8  60~125  20~40  7.0~8.0
 正常便  0.1~0.2  30  75  15  20  6.0~7.5
 下痢便  0.5~17  20~160  10~40  30~120  30~50  
 4.宿便は万病のもと   
 断食中に、宿便が排泄され、腸管内がきれいになります。

 宿便は、「腸管内壁にこびりついた古い便」というように考えるのは、間違いだと思います。
 実際、人間で、大腸の内視鏡検査を行っても、そんなこびりついたような便は、見当たりません。
 食べた食餌は、腸管内をトコロテン式に食べた順番で押し出されて、大便になるのではありません。
 腸管内では、前に食べた食餌が、古い食物残渣として停滞したり逆流しているところに、後に食べた食餌が合流します。
 そうすると、特に、拡張した腸管内に、前に食べた食餌がある程度の量、古い食物残渣として残ります。
 これが、宿便の正体だと、思われます。
 特に、上行結腸では、逆蠕動が起きるので、古い食物残渣(柔らかい)が、宿便として溜まり易いと考えられます。上行結腸(右側の大腸)では、逆蠕動により、肛門側と反対の盲腸側に向かって蠕動が起こり、大腸内の食物残渣が攪拌されます(腸内細菌叢が繁殖し易くなります)。

 古い食物残渣が腸管内で停滞すれば、ウェルシュ菌などにより発癌物質が生じる危険があります。
 食べた肉のアミンは、腸管内でウエルシュ菌により、発癌作用のあるニトソアミンに、変化します。
 また、脂肪分解のために分泌される胆汁酸が、ウエルシュ菌により二次胆汁酸に変わり、腸粘膜を障害します。
 大腸癌は、このウエルシュ菌により生成されるニトロサミン(主犯)が、二次胆汁酸(共犯)により障害された腸粘膜を発癌させるのが原因と、考えられています。
 食物繊維(野菜に含まれる)を摂取する(11g/日以上)と、大腸癌になるリスクが半減します(厚生労働省では、食物繊維を20g/日摂取することを勧めています)。
 内臓脂肪が多い人は、大腸腺腫(大腸癌に進展する)を生じ易く、大腸癌になるリスクが高いと考えられています。
 便秘は、大腸癌の危険因子です(注4)。

 また、古い食物残渣が腸管内で停滞し、腐敗して生じた有害な物質が体内に吸収される危険があります。
 「宿便は万病のもと」と言われるのも、納得がいきます。

 「宿便」を出すには、大腸の内視鏡検査の時に行う前処置のように、下剤と腸洗浄剤で、下痢として出すのが、手っ取り早いと思われます。

 なお、便は、水に浮く方が、体調(代謝)が良い証拠だと言われます。

 宿便により、大腸内の異常発酵などが起こり、産性された毒素が、吸収され、血液を汚し、万病の原因となると言われます。

 宿便があると、手の平に青い血管のすじが浮き上がって見えるそうです。
 宿便が多くなる程、手の平の青すじが太く濃くなって来ると言われます。
 宿便が溜まると、手がひんやりと冷たくなると言われます。
 
 5.腹八分に医者いらず
 宿便の多いような状態では、腸管の蠕動運動が低下しています。
 このような場合、食物繊維は便通を良くするからと、生野菜や果物やサツマイモなどをたくさん食べると、かえってお腹が張ってしまいます。特に、水溶性食物繊維でなく、不溶性食物線維を含む食品を摂取すると、便秘が悪化することがあります。

 宿便を減らすためには、腹八分を心掛けることが、大切のようです。
 カロリー制限と、脂肪摂取制限は、寿命を長くするようです。

 6.スマシ汁断食
 スマシ汁断食(すまし汁断食)では、3合(540ml)の水に、コンブ(昆布)10gと乾燥シイタケ10gを入れて沸騰させ、出汁(ダシ)が出たら、コンブと乾燥シイタケを取り除き、ショー油30gと黒砂糖30g(又は、蜂蜜30g)を入れます。これを1食分とし、昼と夕の2回、飲用する(朝食は、食べない)。この他に、生水と柿茶を、1日1~2L飲みます。

 コンブやシイタケは、グルタミン酸(Glu)を多く含んでいて、断食中に、腸粘膜で、代謝燃料として利用されます。
 スマシ汁断食のように、断食中に、コンブやシイタケの出汁を飲用すると、断食による、腸粘膜の萎縮などが、予防出来るようです。
 
 関節リウマチの治療には、断食療法(スマシ汁断食)が、有効だと言われます:
 関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、自己免疫疾患だが、心臓と小腸の病気だと言う鍼灸の先生がいます。
 関節リウマチは、心臓(血行の悪さ)と、小腸(腸から吸収されるペプチド抗原や脂質)が、発症に関連にしていると思われます。

 興味深いことに、断食中、宿便が排泄される前には、関節リウマチの関節痛が強くなり、宿便が排泄された後には、関節痛が軽快すると言われます。
 腸には、かなりの免疫機能が、備わっていますが、体内へ、肉食などに由来するペプチド抗原や、腸内細菌(悪玉菌)に由来する抗原が、多量に入ることが、関節リウマチなどの、自己免疫疾患の発症に関連するようです。

 なお、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)のロイマ(rheuma)と言う言葉は、BC4世紀頃、ヒポクラテスの時代に、関節疾患に関連して、用いられました。ロイマ(rheuma)は、カタル(catarrhos)同様に、「流れ」を意味し、脳の中にある粘液性の体液が、流れて来たところに欝滞し、粘液分泌過多になり、腫脹や発赤を来たし、病気になると信じられていました。

 水酸化マグネシウム(スイマグ)は、緩下剤として、便秘の改善目的に使用されます。
 水酸化マグネシウム(商品名、ミルマグ:100g中に水酸化マグネシウムを7.2g含む)は、水酸化マグネシウムとして、通常、成人、1日0.9~2.1g(ミルマグとして12.5~29g)を、出来るだけ多くの水(通常約180mL)と共に、頓用又は数回に分割経口投与します。
 水酸化マグネシウム液(商品名:スイマグ:1mL中に水酸化マグネシウムを99.9mg含む)は、断食中に、朝晩20mL(水酸化カルシウム約2g)程、一合~三合の水(180~540mLの水)と飲用すると、宿便の排泄が促進されると言われます。

 7.パーキンソン病と宿便
 パーキンソン病の人は、発病する20年、30年前から、便秘(腸マヒ)持ちの人が多いと言われます。生真面目で頑張る人は、交感神経が緊張して、便秘になり易いです。
 パーキンソン病の人は、不眠に苦しむ人が多いと言われます。

 8.腸内細菌
 ヒトの腸内には、種類にして約500種類以上、数にして100兆個もの腸内細菌が、住んでいます。
 腸内細菌は、善玉菌と、悪玉菌とに区別されます。

 a).善玉菌:乳酸菌(ビフィズス菌、ブルガリア菌、ヤクルト菌)など
 ・食物繊維を分解し、消化、吸収、代謝を助けます。
 ・乳酸、酢酸、酪酸を生成し、腸管内pHを酸性に保ち、ウイルスなどからの感染を防御します。なお、胃内のピロリ菌は、酢酸、酪酸、乳酸によって、抑制されます(特に、酪酸の抑制効果が、強いです)。
 ・乳酸を生成し、腸の蠕動運動を活発にします。
 ・ビタミンB群やビタミンKを産生します。
 ・腸の免疫機能を高めます。

 b).悪玉菌:ウェルシュ菌、大腸菌(毒性株)、ブドウ球菌など
 ・蛋白質(肉類など)を分解して、毒素(アンモニア、アミン、フェノール、硫化水素などの有害物質)を産生します。悪玉菌によって産生された毒素は、血液を汚染します(於血になり、生活習慣病のリスクが高まります)。

 健康なヒトの場合、腸内細菌の80%が善玉菌で、20%が悪玉菌と言われます。
 腸内細菌叢の善玉菌と悪玉菌の比率を、「腸年齢」と呼ぶ人がいます。
 現代では、若い女性の「腸年齢」は、老化し、悪玉菌の比率が増加していると言われます。
 悪玉菌の比率が増加する原因として、欧米型の食生活、無理なダイエット、ストレスの多い生活が指摘されています。
 特に、肉食中心の食生活は悪玉菌を増加させ、反対に、野菜中心の食生活は、善玉菌を増加させると言われます。
 善玉菌は、食物繊維(穀類、野菜、豆類、海藻に含まれる)、発酵食品などを摂取すると、増加します。悪玉菌は、蛋白質や脂肪を摂取すると、増加します。

 消化管系の癌(大腸癌、胃癌、食道癌)の発症は、食生活と関連すると言われます。
 近年、日本人に大腸癌が増加して来たのは、欧米型の高脂肪・低食物繊維の食事をするようになったことが原因と、考えられています。
 疫学的な調査でも、脂肪の摂取量が多い国程、大腸癌の発生率が高いと言われます。
 脂肪(動物性脂肪)は、摂取すると、分解・吸収に必要な胆汁酸(一次胆汁酸)が、肝臓(胆嚢)から、腸管内へ、多く分泌されます。胆汁酸(一次胆汁酸)は、腸管内で、腸内細菌(悪玉菌)によって、代謝を受け、二次胆汁酸に変化します。この二次胆汁酸には、発癌作用があると言われています。

 食べた肉のアミンは、腸管内でウエルシュ菌により、発癌作用のあるニトソアミンに、変化します。また、脂肪分解のために分泌される胆汁酸が、ウエルシュ菌により二次胆汁酸に変わり、腸粘膜を障害します。ウエルシュ菌により生成されるニトロサミン(主犯)が、二次胆汁酸(共犯)により障害された腸粘膜を発癌させ、大腸癌になると、考えられています。
 従って、肉食などで、動物性脂肪を多く摂取すると、大腸癌になるリスクが高くなると、考えられています。
 二次胆汁酸は、コレステロール(卵黄や乳製品に多く含まれている)を含む食品を多く摂取しても、増加します。

 9.ネギと干し苗
 ネギは、植え替える際、土から引き抜いて、半日~数日間、土の上に寝かせて、「干し苗」にしてから、再度、土に植えた方が、成長が良く、サビ病やベト病が、出なくなると言われます。
 ネギは、夏に、1カ月以上、干して、「干し苗」にすることもあります。
 ネギは、干すことで、水分ストレスがかかり、エチレンが生成され、発根が促進されたり、株が太く丈夫になると言われます。
 実際に、ネギを干し苗にして移植した苗は、生着した後、太く成長しますが、干し苗にせずに、直に移植した苗は、生着した後、乾燥に弱く、死滅する苗が多いです。
 断食も、干し苗の根のように、一次的に、腸管に、水分や栄養素の供給を遮断することにより、腸管にストレスを与え、腸管の機能を高める効果があるようです。
 とにかく、断食の効果は、実際に断食を行って、効果を、確認することが、大切です。

 10.断食と血清カルシウム 
 断食(飢餓慮法)を行い、食事を摂取しないと、体はアルカリ体質(アルカローシス)になり、血清カルシウムイオン(Ca2+)が増加し、マグネシウム(Mg)が減少します。
 しかし、断食を1週間以上続けると、体に貯蔵された代謝物質が消費され、血清中の蛋白質が減少し、却って、血清カルシウムイオンが減少すると言われます。この血清カルシウムイオンの減少(低下)を胃腸の消化力の回復の目安に断食を終了し、食事の摂取を再開すると良いと言われます。

 注1:有害金属(鉛、水銀、カドニウムなど)は、脂溶性で、脳にも蓄積しやすいです。有害金属は、からも排泄されます。有害金属(重金属)の排泄量は、尿からよりも、汗からの方が、多いこともあります。

 水銀(Hg)は,総水銀量では、腎臓(皮質0.80μg/g、髄質0.54μg/g)、肝臓(0.50μg/g)、大脳(0.048μg/g)、小脳(0.064μg/g)、心臓(0.033μg/g)、脾臓(0.037μg/g)に多く含まれています。メチル水銀の割合は、腎臓では10~15%、肝臓では50%弱、大脳や小脳や心臓や脾臓では83~88%と言われます。
 毛髪水銀の多くは、メチル水銀です。
 血液中の水銀量は、食事から摂取される水銀量を反映していて、魚を多く摂取する人は、全血の総水銀量が100μg/L程度にまで、上昇することがあります。水銀は、血液中(全血中)では、赤血球の方が、血漿より、約10倍多く、多く含まれています。

 脂肪に溶け易い化学物質などは、脂肪組織などの脂肪に蓄積していると言われます。
 化学物質では、PCB、DDT、ダイオキシンは、脂肪に蓄積し易いと言われます。脂肪に蓄積し易い化学物質は、小腸から吸収され、肝臓で代謝されないと、血液中に増加し、末梢の脂肪組織、皮膚、脳など、脂肪を含む組織に蓄積します。

 断食時(絶食時)は、インスリンの分泌が低下するので、脂肪組織では、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)の活性が上昇し、脂肪細胞中の中性脂肪が分解され、遊離脂肪酸(FFA)として、血液中に放出されます。血液中の遊離脂肪酸濃度が、上昇しますが、遊離脂肪酸は、肝臓では、脂肪酸分解(β-酸化)が亢進し、糖新生のエネルギー源として利用され、また、骨格筋、心筋、腎臓ではエネルギー源として、利用されます。
 その結果、脂肪細胞の容積が、縮小します。
 そうすると、毒素(脂肪に蓄積していた、脂肪に溶け易い化学物質や有害金属など)の細胞内濃度が上昇し、血液中に移動するので、腎臓や汗腺からの排出が、促進されると、考えられます。
 また、断食中は、肝臓には、門脈を介して、消化管から吸収された栄養素が輸送されなくなるので、肝臓の解毒機能が高まり、血中や肝臓内の毒素の代謝が促進すると言われます。
 しかし、断食によって、脂肪に蓄積していた毒素が、血中に移動し、血中濃度が上昇するおそれもありますので、断食中も、水分は、十分に摂取する必要があります。

 なお、正常男性の場合、絶食時には、中性脂肪が分解され、160gの遊離脂肪酸が放出され、その内、40gは、肝臓で代謝され、ケトン体が60g生成されます。

 断食中や、朝食を抜いた際などに生成されるケトン体は、脳で、ブドウ糖(グルコース)の代替エネルギー源として利用されます。
 脳が、ケトン体をエネルギー源として利用すると、脳波のα波が増加しリラックスし、脳下垂体から分泌されるβ-エンドロフィンの量が増加し快感が得られます。

 また、断食で、ボケ(痴呆症、認知症)が治ったと言う話も聞きます。なお、神経細胞膜内コレステロール量が増加すると、Aβ(アミロイドβ蛋白)が、脳内で重合(凝集)し易くなり、脳内に蓄積し、アルツハイマー病(痴呆症、認知症)を来たすと考えられています 

 
注2:断食のような飢餓状態では、肺胞マクロファージの貪食能は、飢餓の2日目に一時的に上昇し、その後は、低下します。肺胞マクロファージのPGE2産生能は、飢餓の2日目以降から、急激に低下します。しかし、肺胞マクロファージのIL-1産生能は、飢餓日数と共に、徐々に上昇します。なお、運動は、肺胞マクロファージの数や貪食能を、増加させます。

 注3:脂肪組織は、脂肪酸を、グリセロール3-リン酸(α-グリセロリン酸)にエステル結合させ、中性脂肪として、貯蔵しています。
 脂肪組織は、皮下、腹腔、筋肉(骨格筋)に多く、体重が70kgの成人には、約15kgの脂肪があります。この量の脂肪のカロリーは、590,000KJ(141,000Cal)で、3カ月分のエネルギーです。聖書には、モーセや、イエス・キリストが、40日間、断食したことが記録されていますが、人間は、40日以上、断食しても、生存可能な脂肪を、貯蔵しています。、

 注4便秘の人は、キャベツや、ゴマを食べると良いと思います。
 グリセリン浣腸は、まず、レクタルチューブを、成人6~10cm、小児3~7cm、直腸粘膜を損傷させないように注意して、ゆっくり挿入します。そして、容器を片手で支え、内容液(日局グリセリン)を徐々に直腸内に注入します。2~5分経過後に、便意が強くなってから、排便します。赤ちゃんに行う綿棒浣腸は、綿棒の先にベビーオイルかオリーブオイルを塗り、オムツを敷いたまま、肛門から1cm程度、綿棒を入れ、棒の部分を、肛門の穴を広げるように、時計回りにグルグル回します。

 便秘は、脂質や糖分(砂糖)が多い食事と同様に、ニキビを悪化させる要因です。ニキビは、皮脂の量(皮脂が過剰に分泌されること)より、皮脂の質(皮脂が固い)ことが、発症の原因と考えられます。

 発癌には、精神的、肉体的ストレスが関与していると言われます。
 真面目な人が、頑張り過ぎることは、癌の原因になるとも言われます。
 ストレスを貯めずに、毎日、楽しく生きる(安心立命の境地で生きる)ことが出来れば、健康には、良いです。

 参考文献
 ・寺井高雄、桜木健古、共著:断食のすすめ 心とからだの完全健康法 増補 柏樹社、1967年.
 ・甲田光雄:小食が健康の原点 たま出版、1998年.
 ・安保徹:免疫革命 講談社インターナショナル、2003年.
 ・鈴木継美、松尾直仁:Hg、内科、61巻6号、1197頁、1988年.
 ・吉岡諄:楽しく食べて元気になる 断食健康法、たま出版、199年.
 ・佐原力三郎:よくわかる最新医学、大腸がん・潰瘍性大腸炎・過敏性腸症候群、主婦の友社(平成18年8月).
 ・東茂由、甲田光雄:栄養学常識のウソを突く-長生きしたけれ朝食は抜きなさい、2003年第3版(2002年初版発行)、河出書房新社.
 ・柳沢文正:健康食入門-酸性体質をかえる-、食と健康の古典3、農山漁村文化協会(1978年第1刷発行、2003年ワイド版第1刷発行).
 ・宮田剛:Q31体液喪失と電解質補給の関係は?、ナーシングQ&A 全科に必要な栄養管理Q&A(・東口高志編集)、64-65頁、総合医学社(2005年).
 ・青木重久:関節リウマチの原因は腸内細菌の乱れ、日経メディカル 特別編集版 2017AUTUMN、007-009頁.

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