〜ゼファー〜
白ひげと一緒に行きつけの酒場に入る。
「親父、やってるか?」
「なんでぇい!まぁた来たのかよ!」
「おう、此処の肴はウメェかんな」
「けっ!そんなこと言ったてビタ一文負けねぇかんな!!」
そう言いながらでも嬉しそうな親父である。
カウンターでは白ひげが収まりきれないから奥のテーブルに行く。
「なんでぇい今日はまたデッカイ奴と一緒だな。あんたもロキ・ファミリアなんか?」
「いんや、俺はポセイドン・ファミリアだ」
白ひげがそう答えると親父は白ひげの手を取り興奮する。
「あんたらポセイドン・ファミリアには感謝してんだ!!あんたらのお陰で新鮮な魚料理が提供できてんだ!ありがとう!!」
「おっおう」
「よおし!今夜は俺の奢りだ!!好きなだけ飲んで食ってけ!」
「よっ!親父太っ腹!!」
「オメェは金とるぞ」
「なんでだよ!!」
「冗談だ馬鹿野郎!酒はいつものでいいのか?」
「ああ、頼む」
「あいよ、ちっと待っとけ」
親父はそう言って酒を取りに行った。
親父が出してくれた酒と肴で楽しく飲んだ。
ラウルは潰れちまったけどな。
「ゼファー、今のオラリオをどう思う?」
「何だいきなり?」
「オレァお前が来る前のオラリオを知ってる。あの頃は今よりも笑顔がたくさんあった」
白ひげがしみじみとそう言うと親父も頷いていた。
「そうだなぁ。あの頃はゼウスとヘラファミリアがいてくれたから闇派閥なんかに怯えなくてよかったなぁ」
「詳しく教えてくれないか?」
俺がそう言うと親父が話してくれた。
3年前までオラリオのトップファミリアはゼウスとヘラファミリアだった。
しかしゼウス達が3代クエストである黒竜討伐に失敗してしまった。
そこにトップの座を狙っていたロキファミリアとフレイヤファミリアが疲弊しきっていたゼウスとヘラファミリアを襲い、オラリオから追放したのだという。
確かに戦術としては当たり前の行動だがその後が問題だ。
トップになったロキとフレイヤファミリアでは闇派閥の抑止力にはならなかった。
「今では闇派閥が暴れまわり皆ビクビクしながら生きてるよ。孤児も増える一方さ」
フィン達がたまにコソコソしてたのはこれだったのか。
帰ったら問い詰めるとするかな。
「やったんなら最後まで責任取ってやれって言っとけゼファー。これ以上カタギに迷惑かけんなら俺が黙っちゃいねぇともな!」
「わかったよ。おめぇを敵に回すのはもうころごりだしな」
そんな話をしながらしばらく飲んでいたら外が騒がしくなった。
何事かと外を見てみると「闇派閥だああっ!!」って声が聞こえてきた。
「ラウル!おめぇはここで親父を守れ!!」
俺はそう言って騒ぎの中心にかけていく。
そこではガラの悪そうな奴らが一般人を切りつけていた。
その光景は今まで何度も見てきた。
こいつらはアホな海賊共と全く同じだ!!
俺は今にも切りつけられそうになっている人も前に立ち、覇気で硬化した腕で剣を受ける。
剣は俺の腕に当たるとバキーンと音を立てて砕けた。
「何だてめぇ!!俺の楽しみを邪魔すんな!!」
男は砕けた剣を捨てて殴りかかってくるがまったくもってなちゃいねぇ。
こんなへなちょこパンチで俺が殺られるわけねぇだろが!!
男のパンチを軽々躱して顔面を思いきし殴る。
「ゲパァ!!」
男は吹っ飛び建物の壁にめり込んだ。
それを見ていた他の闇派閥の奴らが俺を囲み武器を構えていっせいに襲いかかってきた。
しかしどいつもこいつも戦い方がなっちゃいなかったから全員地面にめりこませてやった。
「そこまでよ!!」
声の方を見ると赤い髪をポニーテールにした小娘が腰に手を当てて威張っていた。
「私達正義のアストレアファミリアがきたからには好きにはさせないわ!」
「アリーゼ、もう終わってるようです」
「団長様がなかなか起きないから出遅れてしまったみたいですよ?」
赤髪の後ろにいたエルフと黒髪の娘に指摘されている。
こいつらがフィンの言っていた治安維持をしているアストレアファミリアか。
それにしても正義ねぇ。
海軍時代の俺もあんな感じで海賊共を捕まえてたたのかねぇ。
そう思っていたらエルフがこちらにやってきた。
「あの、お話を聞きたいのですが」
「ああ、俺は近くで飲んでいたんだが外が騒がしくなって出てみたらそこの人が襲われていたから助けただけだ」
「そうでしたか。貴方の行動は素晴らしいものだ」
「こいつらってLV3とLV4よ!貴方強いのね!どこのファミリアなの?」
「ロキファミリアだLVは3だ」
「紫色の髪の少年。貴方様は最近有名な黒腕ではないですか?」
「ああ、確かに俺の二つ名は黒腕だが?」
「輝夜知ってるの?」
「逆に何故知らないのですか?このアホ団長様は」
「輝夜!アリーゼを悪く言うな!!アリーゼは少しあれなだけだ」
いや何のフォローにもなってねぇよ!!
「なんのフォローもできないポンコツ妖精は黙っとけぶぁあああかめ!!」
「ポンコツと言うな!!」
なんか言い合ってるからもう帰って良いかな?
周りを見ると一緒にきたはずの白ひげがいなくなってた。
あの野郎めんどくさくなって逃げやがったな!!
俺も飲み屋に戻ろうと歩き出したら目の前に赤髪がいた。
「まだなんかようか?」
「貴方からは正義の匂いがするわ!私達と一緒にオラリオを守りましょう!!」
正義の匂いってなんだよ。
俺はコイツラみたいな正義なんてもう掲げてねぇしファミリアの奴らが無事ならどうでもいいと思ってる。
昔の俺なら躊躇いなく手を取っただろうが今は違う。
「俺は自分と家族に降りかかる火の粉を払うだけだ。あんたらみたいな正義なんてもんはもってねぇよ」
俺はそう言って赤髪の横を通り過ぎて飲み屋に戻っていった。
飲み屋につくと白ひげが呑気に酒を飲んでいた。
「てめぇ!面倒事を俺に押し付けやがって!!」
「グラララッ!あの小娘たちは正義を掲げてるんだからオメェに任せたほうが良いだろう?」
「あいつらが掲げてんのはガキの理想だよ。現実が見えてねぇ、いや見ようとしてねぇのか」
席について親父が出してくれた酒を一気に飲む。
「ずいぶん荒れてんじゃねぇか」
「アイツラを見てると何も知らなかった頃の自分を見てるみたいで嫌になんだよ」
何も知らず海軍の掲げていた正義を信じていた頃を。
腐った上層部と天竜人の命令を聞いて罪のない民間人を見捨てていたあの頃を。
きっと海賊がいなくなれば世界が平和になると信じていたが大切なものを失い世界に絶望し世界を憎んだあの頃を。
「今になって思うよ。お前とロジャーが羨ましいってな」
「はん、天下の海軍大将様が海賊を羨ましがるとはなぁ。いや、そんだけ世界がおかしかったのか」
「そうだろうな。きっとこれからオラリオはもっと荒れるだろう。アイツラの正義じゃ何も救えねぇ」
「聞き捨てならないわ!!」
そう言いながらバーンとドアを開けて入ってきたのはさっきの赤髪たちだった。
「私達の正義じゃ何も救えないってどういうことかしら?」
「そう言うなら貴方様はさぞ立派な正義を掲げているのでしょね?」
黒髪は丁寧な言葉遣いだがキレているのがわかる。
エルフは何も言わずにこちらを睨んでいる。
「グラララッ威勢の良い小娘たちじゃねぇか」
「笑い事じゃねぇだろう!まったくめんどくせぇ」
はぁとため息をついて頭を抱える。
「説明して!私達の正義じゃ救えないってどういうこと?」
話さないと帰らないって顔をしている小娘たちがいたんじゃゆっくり飲むことも出みねぇ。
まったくどうしてこうなってしまったんだろうか?