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第二十二話 かりそめの終わり

 今回で本作は終了となります。五ヶ月以上にわたりお付き合いいただきまして、誠にありがとうございます。

 かくして台風十六号は息絶え、史上最悪の気象災害は幕を下ろした。

 後には莫大な損害と、多くの死者が残された。


 今回の台風で死者の出る被害を受けた国は、フィリピン、中国、台湾、韓国、北朝鮮、アメリカ、日本の合計7カ国にわたった(分断国家や事実上の独立国家は分離して数えている)。


 まず、フィリピン。

 首都マニラを始めとする諸地域で壊滅的被害が発生。死者・行方不明者は400万人に至った。観光地は軒並み破壊された。高潮により低地の家屋は沈没し、経済的被害も想像を絶するものとなった。

 中国では香港や深圳(しんせん)市、その他上海市などの華南から華中の沿岸地域が暴風雨による小規模な被害を受けた。幸運にも、死者は100人に満たなかった。

 台湾では暴風により20棟ほどの家屋が倒壊。その他高潮によって二百近い家屋が浸水することとなった。養殖用の牡蠣の筏が多数流されたことによる漁業への打撃もあった。

 韓国では釜山や蔚山(ウルサン)を中心として土砂災害や浸水害といった災害が発生。また、釜山南部で最大風速毎秒57mを記録した。死者は173人であった。

 北朝鮮は直接的被害こそ軽微だったものの、社会基盤が脆弱なために飢餓などの二次災害が発生した。一説には、倒壊した家屋は1000棟を超えるともいわれるが、政府の秘匿主義ゆえ詳しくは分かっていない。死者も不明だが、200人ほどであるとされる。

 アメリカではサンフランシスコ周辺地域で風水害が発生。未曾有の規模のハリケーンであったこともあって対策がうまく功を奏さず、死者は1500人という、アメリカのハリケーン災害でも有数の値となった。何よりも、アメリカの西海岸にハリケーンが上陸するという歴史上初の異常事態が、アメリカ人の多くに衝撃を与えた。また、在日米軍の被害も大きく、多数の兵器が破損するか失われ、全体の半分近くに当たる1万8100人の在日米軍兵士が死亡することとなった。


 そして、日本。


 札幌市を除く全ての政令指定都市が壊滅。特に三大都市である東京、大阪、名古屋の被害は著しく、この三都市だけで死者・行方不明者は1100万人に達した。日本を代表する大企業の本社の多くが消滅し、農林水産業や工業など、経済の基盤が破滅したこともあり、経済的損害は約2京2000兆円にのぼった。これまでに世界で起きたいかなる災害よりも大きな被害額であった。また、京都をはじめとする日本の観光名所も軒並み壊滅的被害を受け、観光大国の地位からも転落させられた。

 2ヶ月程度の混乱の後、札幌市に首都機能が移転されたが、元の繁栄を取り戻すことはもはや不可能な状態に至った。二次災害を含めた死者・行方不明者は3700万人とされ、これは当時の日本人口の3分の1近くの値である。

 これにより日本はGDP第三位の地位を追われることとなった。日本の2028年度GDPはわずか1530億ドルに過ぎない(2019年度の30分の1程度)。2033年現在においても、日本は各国からの経済的支援(ODA)を受け続けている。農業の基盤が崩壊したため、日本国民の28%が飢餓状態である。

 不幸中の幸いにも皇族は生存し、中国や北朝鮮といった他国からの侵略も受けずに済んでいるが、復興にはあと50年はかかると見られている。


 この他、パラオやロシア連邦などの国家で軽微な被害が出たが、詳細は省略する。


 


「私たちは、日本とフィリピンの二カ国とともにあります」

「ジャパンに10ドル寄付してきたぜ」

「マニラで救助活動中。#actforvictims」


 世界の人々は災害に遭った日本やフィリピンに支援と応援の意を表し、そして暗に自身の無事に安堵した。「よかった、滅びるのがウチじゃなくて」と。


 だがそれは大きな間違いである。今回の台風災害は、偶然の産物ではない。

 人類は有史以来自然を開拓し、都市を築き、機械を開発し、明日の生活をより良いものにしようと邁進(まいしん)してきた。今日よりも明日、今年よりも来年、今世代よりも次世代のほうが快適であり、幸福であってほしいと、そう願われてきた想いの顕現なのである。

 長きにわたって、幾千万、数億もの人々が成し遂げてきた努力の代償(・・)のひとかけらが、この渦なのである。

 人々の勤しみは、決して責められるべきではないだろう。ただ、副作用が出てきただけなのだから。


 もちろん、人類に全ての責任があるわけではない。台風第十六号の発達には、ここ数年の太陽活動の大幅な増幅(太陽活動は2030年までに弱まると予想されていたのだが)や、海流の停滞といった明らかに人類が原因ではない環境異常も原因として大いに関わっているためだ。例えば2031年6月には安定陸塊に位置するパリでM8.1の大地震が起きた。これは現在の地学では説明しようのない異常事態である。

 以上の結果として、人類六百万年の努力と自然現象との合せ技は、この美しい殺戮の雲を作り上げてしまった。そして、これは氷山の一角、崩落した氷棚の一部に過ぎない。


 であれば、どうして日本以外の地域に、この度のような空前絶後の大災害が訪れないと保証できようか? 地球は人類の事情など、一切考慮しないというのに。

 現在、安心している人々の前で、将来、雹が降ったり、竜巻が襲撃したり、地震が地を叩き揺らたり、津波が襲いかかったり、火山が噴火したり、暴風雨が降りしきったりはしないと、一体誰が胸を張って言えようか?


 アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニア、そしてアジア。

 災害の連鎖は終わっていない。

 むしろ今こそ、次々と襲い来る災いの始まりの時なのだ。


 今はまだ、来ていない。ただ、それだけのことなのである。




――『列島壊滅――超巨大台風襲来――』、完。

 本作を最後までお読みくださって、ほんとうにありがとうございます。また気が向いた時でかまいませんので、私の作品を読んでいただければ幸いです。

 もし、本作を気に入っていただけたのでしたら、評価や感想などを送ってくださると誠に幸甚です。


 重ね重ね、本作を読了してくださったことに深い感謝の意を申し上げます。ありがとうございました。

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[良い点] 完結おめでとうございます。 [気になる点] 各地の原発が吹っ飛んで太平洋の汚染がすんごいことになってそうですね。 中国も湾岸部にいっぱい建ててたような覚えが [一言] 実際は、在日米軍は被…
[良い点] いいねほし5とレビューしてみたくなるほどに珍しいテーマの群像劇でお疲れさまでした。 グロくないのがよかったです
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