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作:ぱーぷる
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序章〜Prologue〜
序章


作者はダンまち原作ほぼ未履修のためガバ設定の可能性大

多分その内書き直します


 

 

 

「ーーー起きろ(・・・)

 

 ダンジョン。

 迷宮都市オラリオに存在する、凶悪なモンスターの坩堝。世界唯一の地下迷宮。

 そんな数多の階層に分かれた無限の迷宮のその一角。

 フードを浅く被った少年が、言葉を紡ぐ。

 

 だんっ、と血肉が溢れた地面を踏み鳴らす。

 その衝撃か、言葉の魔力か。

 大気が揺れて、フードが捲れ上がる。

 

 凄惨な光景に似つかわしくない程に、正反対な処女雪色の髪が揺れ、その狭間から覗く紅玉の瞳。

 その眼下に広がるのは、死闘の末に撃ち倒した強敵。

 

 先ほどまで人体を一捻りで簡単に損壊させるほどの膂力で大剣を振るっていた両腕は断絶され、その巨体を支えていた両脚は捻じ曲がり、その名を畏怖させていた頭部の象徴である双角は砕けていた。

 

 猛牛ミノタウロス。

 

 階位を一つ昇格させた者へ現れる登竜門にして、恐怖の象徴。

 そんなミノタウロス通常個体の体躯と比べても遥かに巨躯。

 赤銅色であるはずの毛並みは黒く。

 その異常個体が、血海に沈み込む様に横たわっている。

 赤い海に沈んだ体から、暗い魔力が湯気の様に沸き上がる。

 

 その毛並みよりも、黒く暗い影の色。

 

 影が自立する様に動き、その体を形成しようとしてーーー

 

 ーーーばつんっ。

 

 弾け飛ぶ。

 少年が嘆息する様に息を吐き、

 

「起きろっ」

 

 また同じ言葉を吐いた。

 先程と同じ様に動く影は、少年の期待とは裏腹にもう一度同じ結果を招く。

 

「ダメ、なのか」

 

 疲弊した体に、目の前の現実が追いつかない。

 憔悴した心身を労る様に、深く呼吸を続ける。

 

「……起きろ」

 

 祈りにも似た言葉。

 疲弊し果てた全身から、枯渇する程に精神力(マインド)を注ぎ込んだ一言。

 その魔力が届いたか、はたまた祈りが神に通じたのか。

 

 影は体を作り、その口からは雄叫びが上がった。

 

「ーーブモォォオオオッ!」

 

 まるで帰還雷撃。

 地上から天を穿つように、地下深くに押し込まれた憎悪をまるで天界の神々に訴えかけるような。

 轟き吠えるその咆哮が、空間を軋ませる。

 顕現した相貌。

 

 撃ち倒した時よりも、一回りほど小さくなったその体躯。

 砕き、折り、斬り捨てた体は生前の時の様に真新しく、影の様に真黒の体。

 先程と違うとすれば殺意を孕み、溢れ出る闘志を堪えた眼光が、今は此方側に主君を敬う様な敬愛の瞳に変わったことか。

 

「良かった。成功した」

 

 死体からその魂の情報を上書きし、自分自身の手足の様に扱えるこの世の掟から背く様なそのスキル。

 影の尖兵として生まれ変わらせるその力は、一個体に対して三度のみ呼び掛けることが出来る。今まで抵抗された事はなく、三度目を失敗して迎えれば文字通り二度と呼び起こす事は出来ない。

 

 ここまで戦った強敵なのだ、是非ともその手腕を自分の下に置いておきたかった。

 安堵し、胸を撫で下ろした。

 

「そういやレベルはーーーっと、3つも上がってる(・・・・・・・・)! それに、称号も」

 

 『猛牛殺し(オックススレイヤー)

 

 本来、神にしか見えない背中に刻まれたステイタスとはまた別のシステムに記載された称号。

 その効果は、

 

 猛牛系の生命体と対峙する(・・・・・・・・・・・・)際、ステイタスの超高補正。

 

 このダンジョンに、猛牛系と称されるモンスターの種類こそ少ない。しかし、その効果は破格である。

 

「3つ上がった分のポイントは、帰ってから振り分けよう」

 

 目の前に表示されたステイタス画面に、満足げに呟いてふと視線を感じ振り返る。

 目線の先に、つい先程眷属に加えたミノタウロスがこちらを物言いたそうに見つめていた。

 

「……何か用? あれ、名前が付けれるのか」

 

 ミノタウロスの上部に表示された画面。

 ナイト級と書かており、名称部分が『

???』になっていた。

 少年の声に頷く姿に、随分と可愛らしくなったな、と思いくすりと笑う。

 

「そうだなぁ、名前か」

 

 ふむ、と手を顎に添えて首を傾げ思考する。

 幼少期から、祖父と田舎に暮らし、その際飼育していた動物達がいたがそのどれもが食べるために飼育していた事もあり名付けは今までしてこなかった。

 深く考える事数分、ふと先程の咆哮を思い出し閃いた。

 

「思い付いたよ、君の名前」

 

 雷鳴の様なその咆哮。

 雷霆をも幻視した一撃。

 猛々しいその巨躯を持つミノタウロスの名は、

 

「ーーーアステリオス。君の名前はアステリオスだ」

 

 その名を告げた瞬間、ミノタウロスの上部の名称が書き換わる。

 その名前が書き換わる頃、身を震わせたミノタウロスーーアステリオスは歓喜し、咆哮をあげる。

 雷光の名に恥じぬ様な雄叫びを。

 

 「気に入って貰えてよかったよ、それじゃあ帰ろうか」

 

 そう呟き笑んで、少年ーーベル・クラネルは踵を返し、自身のファミリアの主神が眠るホームへと歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕だけレベルアップな件

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョン都市オラリオ。

 

 突如として溢れたモンスターを地下深くに押し込めてバベルという巨大建造物による蓋をし、モンスターから生まれた魔石や素材を特産品として発展した世界唯一の円形迷宮都市。

 

 約千年前から続くその都市。集まる冒険者達が織りなす英雄譚。

 吟遊詩人により謳われて、羊皮紙に詰め込まれたそんな冒険(ゆめ)に憧れて人は集う。

 

 ベルもその一人だった。

 

 祖父が行方不明になり、泣き崩れ路頭に迷っていた矢先、目に入ったのは祖父が読み聞かせてくれた英雄譚。

 何度も何度も読み聞かせを願い、文字を読める様になった頃には、ページが擦り切れ文字が掠れる程に読み込んだ。

 その物語にベルは、かつての憧憬を思い出した。

 

 祖父が残した少しばかりの財産を元に、この迷宮都市に夢を馳せて。

 

 路銀も尽きる頃に到着し、心機一転。

 ここから神の眷属として、冒険者の一人となり、いずれはあの英雄譚の様に!

 凶悪なモンスターを千切っては投げての激闘を繰り広げて、そこで偶然助けた美人な冒険者と恋仲に落ちるラブロマンス!

 

 そう夢みたのも束の間、ベルの目の前にある試練の数々に心が折れかけた。

 否、折れていた。

 

『一昨日来やがれ』

 

 そう宣告された数は両の手では足らず。

 神に一目すらも出来ず、門番に門前払いを食らい、彷徨いついた路地裏でベルは項垂れていた。

 路銀も尽きて、宿代も無くては泊まれる場所も、この唸る腹に枯れた喉を潤わせる事も出来ない。

 性根が臆病でネガティブなベルの心に、ぼんやりと暗闇が落ちていたその時だった。

 

『君、そんな所でどうしたんだい』

 

 頭上から落ちてきた声に灯の光を見た。

 ふと顔を上げた先に見えた、自分とは正反対の色の髪。長く伸びたそれを二つに結い上げたツインテール。

 垂れ下がった前髪の下で、つんっと上向いた睫毛。真ん丸と大きく開かれた此方を心配そうに見下げたあどけない瞳。

 先程の声を紡いだ唇は、端正かつ小ぶりで水気を含み艶やかに。

 線が細いが、どこか丸くまるで無垢な幼い少女の様な造形を作り上げていた。

 しかし、その相貌の下。

 ベルが今まで見てきたどんな人よりも、またどんな武器を持ってしても敵わない様な双丘に神を見た。

 

『神様』

『突然どうしたんだい? そうだぜ、ボクは神の一柱。炉の女神ヘスティアさ』

 

 竈門の炎を司る炉の女神ヘスティア。

 少年ベル・クラネルとの出逢いの一端であった。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

「……それじゃあ、行ってきます。ヘスティア様」

 

 物音一つない部屋(・・・・・・・・)へ言葉を掛けて、ベルは扉を閉めた。

 

 あの頃路頭に暮れて、その矢先に拾ってくれたヘスティアにより念願の眷属となったベル。

 あの頃は、その華奢な背中に刻んだ神聖文字(ヒエログリフ)に心躍り、ギルドの担当受付嬢に色々と言われながらもダンジョンの座学を行いモンスター討伐に繰り出していた。

 

 日々少しずつ上がるステイタス。

 ヘスティアが、バイト先から持ち帰って来てくれたじゃが丸くん。

 それを頬張りながら、毎日の様に更新されていくステイタスが書かれた羊皮紙を食い入る様に見つめ、展望をヘスティアと一緒に語っていた。

 

 なんで冒険者に憧れたのか、そう言われて語った夢の一端にヘスティアが頬を膨らませて拗ねてしまったりとあった。

 

 順風満帆とは行かなかったが、充足した毎日だった(・・・・・・・・・)

 

 そんなある日の事だ。

 ヘスティアに悲劇が襲った。

 

 

 

 

 ーーー溺睡症(できすいしょう)

 

 

 

 

 神の血を刻んでダンジョンに繰り出す冒険者には、縁もない症状の一つ。

 

 しかし、血を刻まない都市外部の商人や、冒険者志望だが神の血を刻む事が出来なかった人々が稀に発症する病の一つ。

 ダンジョン固有の歪な魔力が原因とされている。

 

 耐性の無い者がその魔力に当てられると瘴気の様に蓄積し、器が限界を達するとまるで眠り姫かの如く突然の睡魔により眼を覚ます事がなくなってしまう。

 

 ヘスティアが罹ったのもその病気だ。

 

 唯一の対処法としてあるのは、霊薬(エリクサー)の投与。

 万能薬(エリクサー)は存在し得るが、その上位存在である霊薬の投与である。

 

 過去一度だけ、その霊薬から目覚めた事例が存在する。

 

 霊薬があるのは、ダンジョン深層にあるごく稀に現れる宝箱にある迷宮産。

 その一度というのも、かつて存在したゼウスファミリアとヘラファミリアの眷属が行った深層攻略で発見された物だ。

 

 現状の高位冒険者では到達し得ない階層でのドロップ品。

 その為、罹ったが最期。人々は、二度と目覚める事のないものとして処理を行う。

 勿論、その中には一縷の希望に馳せて、生命維持を行うために治療院に入院させる者もいるが起きた症例はない。

 

 しかし、神は別だ。

 

 神の場合、超越存在(デウスデア)ではあるが全智零能。人と同じく病に罹るが、今回の様な不治の病の場合の対処法は天界送り(・・・・)である。

 

 下界での存在を殺した所で、神は神だ。

 天界にて目を覚ます。

 無論、その後下界に降り立つ事叶わぬが死ぬわけではないからだ。

 それ故に、天界送り。

 

 通常許されぬ行為だが、そも下界に降りてきた神達の理由は飽くなき好奇心と暇が高じた故だ。

 勿論、その中で人々と対峙する事により下界での存在意義を見出す神もいるが。

 ただ、眠ったままでは本末転倒である。それ故に、いつ目覚めるかわからぬ故の天界送り。

 

 そんな事実を前にして、ベルは折れかけた。

 

 やっとの想いで手繰り寄せた運命の糸、しがみついて漸く刻まれた家族(ファミリア)としての証。

 

 しかし、ベルが唯一の眷属になったから溺睡症に罹った様な物だ。

 勿論、運もある。

 だが、ベルが冒険者を目指さなければ。

 

 あの日、ヘスティアから差し伸ばされた手を拒んでいれば。

 

 そう考えたが、天界送りには出来ない。

 抱えた夢が潰えそうになっても、このまま二度とヘスティアが目を覚ます事がなかったとしても。

 あの時、自分の手を引き上げてくれたヘスティアに。

 消え掛かっていた自分の炉に火を焚べてくれた恩神に。

 燃え尽きぬ様に薪を焚べても、決して灰を被せるような事はしてはいけないと思った。

 

 だから、ベルはもう一つの手段を取った。

 これからステイタスを更新する事も、ましてや階位(レベル)を上げる事さえ叶わぬとしても。

 その無力な肉体に鞭を打たせ、冒険者パーティの中にはいり運搬役(サポーター)として生きる事を選んだ。

 

 それだけでは足りないから、ヘスティアがしていたバイトを店主に無理言って引き受けた。

 

 少ない賃金からなんとかやり繰りを行い、ヘスティアの神友でたる医療神たるミアハに願い乞い生命維持を行いながらも来る時に備えて高位冒険者に依頼する為の金を貯める。

 

 自分の夢は一度止まっただけだ、神様が目醒めたらその時にやっと時を進めるだけなのだ。

 

 そう言い聞かせて、ベルは今日もダンジョンに潜る。

 大きなリュックを背負い、せめてもの矜持でヘスティアが元気な頃に一緒に選び買ったナイフを腰に携えて。

 




評価良ければ、たらたらと書き続けると思われ
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