「──皆、ロキファミリアの入団試験に集まってくれて嬉しく思う。団長のフィン・ディムナだ。今日は僕とガレスが試験官として立ち会う。どうか、君達の可能性を僕達に見せてくれ」
そこに居たのは金髪の少年……いや、他でもない彼こそがこのロキファミリアの団長だ。彼が試験に来た者に見えるように姿を現した。
実際に今の声を聞いて試験に挑む者の中で、フィンを舐めている者はいない。彼の声を聞いて畏敬と緊張を抱いている者ばかりだ。
「ッ……やべぇ、あれが本物の『
『ダンまち』の世界の中で指折りの知恵者にして、最高の指揮官。その言葉を聞いて持ってるカリスマがラウルとは別次元のものだとその肌で理解する。それぐらい見て分かる明確な違いがあった。
その覇気のある声を聞いているだけで、こんな俺でも血が沸騰するように高まってくる。流石は英雄候補と言われるだけの人物だった。
「まずは、ガレスとの五対一を僕達が割り当てたグループを組んで行って貰う。それを見て君達がどんな戦いに向いているのかどうかを見させて貰おうかな」
その声を聞いてそれぞれの受験者が覚悟を決めいる中で、俺は一人得意気に呟いた。
「よしっ、俺にとって最高の試験だ!」
◇
『Lv.5』ガレス・ランドロック。ロキファミリアに所属するドワーフであり、現在のロキファミリアで最も強い冒険者の一人。
将来、
「く……っ!!」
「ほうっ、避けるか」
向かってくるガレスの速い拳を避ける。拳圧が顔の隣を通りすぎて冷や汗が身体中から溢れ出した。
「(危ね……ッ!めちゃくちゃ手加減してるんだろうけど、見切れるギリギリ!今まで何もしてなかったら何もできずに今の一撃で伸びてた……!)」
何事も無理なものは無理。割り切ることこそ重要だ。だからこそ、俺は冒険者になるために努力を続けてきた。それが、この世界を生きるために必要なことだと考えて。
「(走り込みを五歳の時から続けてきたし、授業で習った剣道や柔道を思い出して陰で練習してきた。使う機会は来ないだろうけどボクシングなんかの動きによる見様見真似の練習も含めての練習も。
お手製のミットを作ってミット打ち練習をずっとしてきたんだ。兄ちゃん達に頼んで練習相手になって貰ってな!)」
……まあ、最初は『頭がおかしくなったのか?』とでも言いたげな顔を家族はしてたけど、農家の暮らしでの娯楽なんかそうは無いから、結局兄ちゃん達も楽しんでやってたんだよな。
……あと、のめり込み具合ではなんか俺以上だったのはちょっと引いた。まあ、木の棒をチャンバラよりもよほど安全だし、全力で殴っても痛くないと来ればそれは楽しいだろうさ。
なんだかんだ、冒険者には誰でも憧れる世界だしな。
そんな過去を思い返しながら、そのままバックステップで距離を取る。そしてグループを組んだ他のメンバーがガレスに襲い掛かる。
「(逃げる姿を晒して、冒険者として相応しくないと思われるのは最悪ッ。『勇気』を示すのが今回の試験の目的だ!なら、攻めつつも無理な攻撃はしないように気を付ける!)」
まあ、それもガレスの匙加減によって一蹴されてしまうのだから本当にどうしようもない。
だけど、それをやるかやらないかで言えばやった方が絶対にいいのは明らかなんだ。『冒険者は冒険をしてはいけない』それも頭に入れて戦うことも忘れずに。
「みんなタイミングを大事にするっすよ!」
「う、うん!分かったわ!」「…………チッ」
声を出しながらガレスを取り囲む。グループメンバーはなんとあのアキが居るグループだった。
原作キャラ同士の縁と考えれば、この組み合わせも運命かもしれない。
入団試験で連携などしても意味がないと考えるかもしれないが、ここの団長はあのフィン・ディムナだ。戦略を蔑ろにすることはまずありえない。
「(……ポイントを稼げ。実力じゃあどれだけ頑張っても獣人なんかの異種族に
だから、一直線に
それこそ、『連携だぁ?ハンッ!そんなみみっちい真似なんざしてたまるか。俺は好き勝手にやらせてもらう。うおおおおおお───ぷげらばッ!?』と、そこの地面にめり込む哀れなグループメンバーのように。
あるいは、そのくらいの才能がなければそもそも冒険者になるだけの資格がないとでも、思っているのかもしれない。
だが、
「(こちとら、冒険者やら英雄への憧れとかは既に
彼らと自分との違いは、自分自身の可能性を信じているかいないかの違いだ。どれだけ運転技術を磨いたとしても、軽トラックを運転してF1で優勝することなんてできない。
だからこそ周囲の人間を好き勝手に使ってでも攻略することに対して、躊躇うことなんか一つもない。
勝てなくてもいい。自分の才能なんて見せ付けなくてもいい。必要なのは如何に役立つ人材であるかの自己アピールだ。
「まさか、初めて顔を突き合わせた面々でグループを組めと言われて、指揮官を据えての連携をして挑み掛かってくるとは思わなかったぞ。
ふははっ!なかなか、やるものよ!」
貸し出された剣を握っているが、相手がガレスだと爪楊枝にしか思えない。ぶっちゃけ、その気になれば素手で壊せるのではないだろうか?あり得ないといえないのがこの男の恐ろしさである。
結果的に10分間耐えきったのは俺達のグループのみだった。
◇
そして、二次試験にして最終試験は団長との面接だ。
口八丁の嘘なんてすぐにバレてしまうだろうし、もしかするとどこかにロキが居て嘘かどうかを見破ってくるのかもしれない。間違いなく俺にとって鬼門中の鬼門だ。
フィン団長からの質問に一つ一つ嘘偽りなく答えていく。
そして遂に最後の質問となった。
「さて、これで最後だ。君が冒険者を志すのはどうしてかな?」
これで娼館通いをしたいからです!なんて言えば流石に良い印象は無いだろう。
それこそ、ロキ辺りは面白いとか言ってくれそうだけど、リヴェリアを筆頭としたエルフ派閥や女性眷属からは、間違いなく白い目で見られることになると思う。
美女ばかりのロキ・ファミリアで女性から嫌われるのは、割りとガチで尊厳が終わりかねないし、そこで信用問題になれば連携などで齟齬が生まれて死活問題になりかねない。
流石に理由が馬鹿馬鹿しくて、これが原因で死んでしまったファミリアの仲間に申し訳なさ過ぎる。
……嘘はバレる可能性が高いから、それとなくボカして……、
「(原作のラウル・ノールドより)強く、カッコイイ冒険者になることが俺の目標で夢です!」
ハイ、完璧!これは俺の紛れもない本心だ。ラウルを少しでも超える冒険者になって、しなければならない必要な役目を原作よりも楽に乗り越える。
これさえできれば何も問題はない。原作は崩壊することはないし、俺は俺で好きに楽しむことができるのだから。
「うん、よく分かったよ。ありがとう」
実技も面接もどれだけ思い返しても明確な間違いはなかったと思う。結果発表まであと数十分だろうか。
なら、どうせだしアキと少しでも仲良くなっておこう。
これから同じロキ・ファミリアの仲間に……──いや、相棒になるんだから。
「ラウル・ノールド、──不合格」
「……は?」