日本大医学部付属板橋病院(東京都板橋区)を巡り、東京地裁(江口和伸裁判長)で10日、行われた初公判で、無罪を訴えた元日大理事の井ノ口忠男被告(67)と医療法人グループ「錦秀会」元理事長の籔本雅巳被告(64)。被告らは大学に損害を与えたとして起訴されたが、弁護側は大学の利益になるよう値引き交渉も行っていたと、真っ向から反論を展開した。
起訴状などによると、両被告は、日大医学部付属板橋病院の建て替え工事や医療機器のリース契約を巡り、高値で契約を結ばせるなどして日大に計4億円超の損害を与えたとされる。
検察側はこの日の冒頭陳述で、建て替え工事を巡る事件について「(両被告は)業務に関与していない籔本被告の会社に受注会社から2億2000万を支払わせた」と指摘。原資を拠出した日大に、損害を与えたとした。リースについても、「業務に関与していない籔本被告の会社を介在させた」ことで契約が高額になったとしている。
一方、弁護側は、日大の財産に損害を与えていないと背任罪が成立しないと反論。「(籔本被告側は)受注業者から2億2000万円を受領しており、日大はなんら損害を被っていない」と訴えた。さらに、リースに関しても「(日大側に)価格交渉についての情報を提供していた」などと、業務に貢献していたと主張。井ノ口被告は交渉で値引きも実現していることから、「自らの利益を得る目的はない」と説明したほか、日大が実際に支払ったリース代が医療機器の市場価格と比較して高額とはいえないとした。