政府の備蓄米 入札始まる 市場への放出が価格安定につながるか

コメの流通を円滑にするために初めて行われる政府の備蓄米の入札が10日から始まりました。入札にはJA全農など複数の業者が参加していて、市場への放出が価格の安定につながるか焦点です。

入札に参加したJA福井県

入札に参加するJA福井県は取り引きをしている卸売業者から希望する銘柄や量を事前に聞き取っていて、担当者たちが、午前10時の入札締め切りに向けて、入札価格などを記入したデータに誤りがないか確認した上でメールで農林水産省に提出しました。

初回の入札では最も高い価格を提示した集荷業者から順番に落札することになっています。

JA福井県によりますと、落札できる量には上限がありますが、卸売業者からは上限の2倍以上の量を確保してほしいという要望があったということです。

JA福井県米穀販売課の高山祐一 課長代理は「入札が無事に終わりほっとしていますが、実際に落札できるか心配です。生産者と消費者にとっていいバランスになる価格で落札できることを願っています」と話していました。

複数の集荷業者が入札に参加

コメの価格高騰が続く中、農林水産省はコメの流通を円滑にする目的では初めて備蓄米21万トンを放出することにしています。

初回の入札は15万トンが対象となり、10日午前10時に申し込みが締め切られました。

入札の対象となったのは去年とおととしに収穫された「青森県産まっしぐら」や「宮城県産ひとめぼれ」などの銘柄で、一定の条件を満たした集荷業者が参加し、最も高い価格を提示した業者から順に落札します。

農林水産省は「入札の結果に影響を及ぼす可能性がある」として、入札が終了するまで参加した業者の数や名称、それに落札価格などの情報は公表しないとしています。

NHKのこれまでの取材でJA全農やJA福井県、JA熊本経済連など複数の集荷業者が入札に参加したことが分かっています。

落札されなかったコメがある場合には11日も入札が行われる予定です。

今回落札された備蓄米がスーパーの店頭などに並ぶのは今月下旬以降になる見通しで、市場への放出がコメの価格の安定につながるかが焦点です。

入札の手続きは

備蓄米の入札は対象となるコメの産地や品種、それに生産年に加えて、1等、2等などの等級や保管倉庫の所在地などをもとに行われます。

参加する業者は10日午前10時までに希望するコメの数量と価格を示した上で農林水産省にメールで申し込みます。

その内容は農林水産省の担当者によって専用のシステムに登録され、国が決めた最低販売価格を上回る価格を提示した業者のうち、最も高い金額を示した業者から順に落札していきます。

入札できる数量はこれまでの取り扱い実績をもとに業者ごとに上限が設けられているということです。

10日の入札で落札されなかったコメがあれば、11日、同じ仕組みで再び入札が行われ、希望する業者は午後4時までに農林水産省にメールで申し込むことになります。落札された備蓄米は契約手続きを経て、入金が確認されしだい、落札した業者に引き渡されることになっていて、引き取り期限は来月末となっています。

初回の入札で販売は41品種

初回の入札で販売される備蓄米は、あわせて41品種あります。

五十音順では、あいちのかおり、あきさかり、あきたこまち、あきだわら、アケボノ、あさひの夢、えみまる、おぼろづき、風さやか、きぬむすめ、きらら397、こしいぶき、コシヒカリ、彩のかがやき、彩のきずな、ササニシキ、そらきらり、大地の風、つきあかり、つや姫、てんこもり、てんたかく、天のつぶ、とちぎの星、ななつぼし、にじのきらめき、はえぬき、ハツシモ、ハナエチゼン、ひとめぼれ、ふさこがね、ふっくりんこ、ほしじるし、ほしのゆめ、まっしぐら、まなむすめ、ゆきん子舞、ゆめおばこ、夢つくし、ゆめぴりか、ゆめみづほ、となっています。

飲食店からは期待と不安

政府の備蓄米の入札が始まったことについて、長野県松本市の飲食店からは期待と不安が入り交じった声が聞かれました。

松本市中心部にある飲食店では、定食などボリュームたっぷりのメニューが人気で、毎日およそ6キロのコメを炊いていますが、コメの急激な値上がりに頭を悩ませています。

コメ60キロあたりの仕入れ価格は去年4月は9300円でした。

値上がりを受けて供給が安定している銘柄に切り替えましたが、去年9月には60キロあたり1万2300円余りに、ことし1月は1万6500円に上昇しています。

経営は圧迫されていますが、利幅を減らして営業を続けています。

飲食店を経営する藤井國廣さんは「コメが考えられないくらい値上がりしているので、利益は全然ないといっていいくらいです。お客さんのために値上げは考えたくないが、これ以上、上がったら値上げせざるを得ない。備蓄米が流通しても農家の経費が上昇していて価格は変わらない気がする。おいしいコメが安く手に入るようになってほしい」と話しています。

専門家「早ければ4月から5月にも値段が下がってくるのでは」

コメの生産や流通に詳しい宇都宮大学の小川真如 助教は、現状では外食や弁当の製造などのコメの需要も高くなっていることから、備蓄米の放出によってこうした業務用のコメの不足感が解消されれば一般向けに販売されるコメも安くなってくるとみています。

価格への影響が現れてくる時期について小川助教は「備蓄米が比較的割安な価格で落札されれば、一般向けのコメは早ければ4月から5月にも値段が下がってくるのではないか」としています。

ただ、売り渡した集荷業者から原則、1年以内に同じ量を政府が買い戻すことが条件となっていることなどから順調に落札が進むのかどうかがポイントだと指摘しています。

さらに小川助教は「備蓄米の産地や倉庫は東日本に多いので、輸送コストを考えると西日本に比べて東日本では価格が下がりやすいことも考えられる」として、スーパーなどに備蓄米が流通した場合地域によって価格差がでる可能性も指摘しました。

江藤農相「効果がなければさらに追加も」

江藤農林水産大臣は、参議院予算委員会で「今は、極めてイレギュラーな状態で、在庫は十分にあるが店頭価格が非常に高い。21万トンを放出する以上は政策効果がなければ、さらに追加もする。流通のスタックを解消して消費者の苦労を解消できるよう努力していきたい」と述べました。

その上で、原則、1年以内に同じ量を政府が買い戻すことを条件としていることについて「急いで買い戻すつもりはない。1年をこえてもいいと思っている。21万トンを出した効果があまりにもありすぎ、価格が急落するような場面があったら、買い戻すこともあるかもしれないが、柔軟に対応していきたい」と述べました。

スーパーのコメ平均価格 9週連続で値上がり

全国のスーパーでのコメの平均価格は、今月2日までの1週間で5キロあたり税込みで3952円と前の週から13円値上がりしました。

値上がりは9週連続で1年前に比べると94%余り上昇しています。

農林水産省は全国のスーパーおよそ1000店でのコメの販売価格の平均をまとめ、毎週、発表しています。

それによりますと、先月24日から今月2日までの1週間の販売価格の平均は、5キロあたり税込みで3952円でした。

前の週から13円上昇し、9週連続の値上がりとなりました。

1年前は5キロあたり2000円ほどで、94.6%上昇したことになります。

コメの5キロあたりの平均販売価格はことし1月に3600円を、先月には3900円を超えていて、政府の備蓄米の放出が公表されたあとも店頭での値上がりが続いています。

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