チームの敗戦は、監督が一身に責任を負う。2番弘田から、バース、掛布、岡田のクリーンアップで得点をもくろんだベンチの選手起用は裏目に出た。

「あんなんプロとして恥ずかしいプレーです。くせ者タイプの木下にまんまとやられた。不注意といえばそれまでだが、だれも気付かなかったということになりますわな」

また吉田さんは「ヘッドコーチ」のポジションに重点を置いた。監督を支える“番頭”は作戦面はもちろんのこと、チームワークを構築するカギと思っていたからだ。

開幕から衝撃的なサヨナラ負けを喫した試合後のことだ。コーチ会議の冒頭、三塁コーチの一枝修平さん(日刊スポーツ評論家)が「あのプレーはコーチの責任です」と切り出した。

そして、その場でコーチ全員から罰金を徴収したのだった。ヘッドコーチの肩書は気心の知れた土井淳さんで、守備・走塁担当の一枝さんは“ヘッド格”だった。

吉田さんは、一枝三塁コーチに全幅の信頼を置いた。逆にユニホームを脱いだ一枝さんが、最後まで吉田さんを「監督」と慕ったのは、2人の間にあるキズナの証しだった。

高齢になった一枝さんが体調を崩した際も、吉田さんは真っ先に兵庫県内の病院に見舞っている。その後も「一枝はどうしてますか?」と常にその様子を気に掛けた。

監督の吉田さんにとって“隠し球”は「気の緩みととられても仕方がなかった」という屈辱だった。ただ組織を束ねるリーダーとして簡単に弱みを見せるわけにはいかない。

だが腹心の一枝さんが率先して責任の所在がコーチにあることを明確にすることで、“親分”の吉田さんが受けたショックを和らげ、監督を孤独にしなかった。

そして吉田さんも「勝ち負けの責任はわたしにある」と自身も罰金を差し出すのだった。監督、コーチが一蓮托生を確認し、チームも“一丸”になっていった。

因縁の広島戦。初代日本一監督が天国から「勝ちきるまで油断はあきませんで。締まっていけよ」と見守っている。勝機はチーム一丸にあると言わんばかりに…。【寺尾博和】

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