実解析や関数解析の手法を駆使することで, 偏微分方程式の解の存在を言うことができる. 解の存在は解の近似や公式を得るための前提となる基礎である. この記事では厳密または詳細な議論は全くしないし, 触れない話題もたくさんあるが, 概要はわかりやすくするよう努める.
1\le p\lt\infty, \Omegaを\mathbb{R}^nの開集合とする. ルベーグ積分を用いて
L^p(\Omega)=\{u:\Omega\to\mathbb{R}\cup\{-\infty, \infty\}\mid \int_\Omega |u(x)|^p dx\lt\infty\}
と定義し
\|u\|_p=(\int_\Omega |u(x)|^p dx)^{1/p}
d(u, v)=\|u-v\|_p
と定義するとL^p(\Omega)はd(u, v)を距離とする完備な距離空間となる. これはあらゆる関数の集合において偏微分方程式の解の存在が言える根底にある. また
L^\infty(\Omega)=\{u:\Omega\to\mathbb{R}\cup\{-\infty, \infty\}\mid \mathrm{for\,some}\,M\ge 0, |u(x)|\le M \,\mathrm{a.e.}\}, \|u\|_\infty =\inf\{M\mid |u(x)|\le M \,\mathrm{a.e.}\}, p\lt\inftyのときqを1/p+1/q=1となるように定めp=\inftyのときはq=1と定めると, u\in L^p(\Omega), v\in L^q(\Omega)に対して関数不等式
|\int_\Omega u(x)v(x)dx|\le\|u\|_p\|v\|_q
が成り立つ. これはL^p(\Omega)において距離の三角不等式が成り立つことなど多くの関数不等式の証明に使われる.
L^p(\Omega)の部分距離空間として重要な関数空間にソボレフ空間がある. これは関数の或る種の大きさを弱導関数を込めて測る空間である. まず多重指数とその長さおよび多重指数による滑らかな関数の導関数を定義する. \alphaをn個の非負整数の組, |\alpha|=\alpha_1+…+\alpha_n,
\partial^\alpha \varphi(x)=(\partial^{|\alpha|}\varphi/\partial{x_1}^{\alpha_1}…\partial{x_n}^{\alpha_n})(x)
とする. u\in L^p(\Omega)の弱導関数がvであるとはvが
\int_\Omega u(x)\partial^\alpha\varphi(x)dx=(-1)^{|\alpha|}\int_\Omega v(x)\varphi(x)dx
を\overline{\{x\in\Omega\mid \varphi(x)\neq 0\}}が有界かつ\Omegaで滑らかな任意の\varphiに対して満たすことである. uが滑らかならば部分積分により通常の意味の導関数と弱導関数は等しい. vを\partial^\alpha uと書く. ソボレフ空間W^{m, p}(\Omega)を
\|u\|_{m, p}=\sum_{|\alpha|\le m}\|\partial^\alpha u\|_p
が有限なu全体の集合とすると, W^{m, p}(\Omega)は\|u\|_{m, p}から定まる距離について完備な距離空間になる. 偏微分作用素は適切な仮定のもとでソボレフ空間を定義域とする閉作用素となる.
u(t)を1変数tの\mathbb{R}^nに値をとる関数とする. Aをn\times n定数行列とするとき常微分方程式
du/dt=Au
の初期値問題の解は行列の指数関数を用いて
u(t)=e^{tA}u(0)
と表される. ここでuを関数空間に値をとる関数, Aを稠密に定義された閉作用素とするとき偏微分方程式
\partial u/\partial t=Au
の初期値問題の解は作用素e^{tA}をうまく定義すると
u(t)=e^{tA}u(0)
と表される. ここから非斉次または非線型偏微分方程式
\partial u/\partial t=Au+f(u)
の解が積分方程式
u(t)=e^{tA}u(0)+\int_{[0, t]}e^{(t-s)A}f(u(s))ds
を満たすuとして縮小写像の原理(バナッハの不動点定理)を用いて存在が証明される.
(END)