終末のその先を望むのは間違っているだろうか


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作:こねねご
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一話


初めて書きます
よろしくお願いします


 オラリア西地区、酒場や宿屋が多数構えている。その中に一際騒がしく、様々な声が飛び交う酒場があった。

 

 店内から一人の少年が脱兎の如く飛び出してくる。扉を開き走り抜けるその手つきは荒々しいながら、どこか気遣いが捨てきれない優しさが感じられるものだった。都市中央部へ走り抜ける少年は涙を流しながらもその目には彼の髪と同じ真っ白な篝火が灯っていた。

 

 

 

 

 

「お邪魔するよ」

 

 扉を開けて一人の青年が来店する。

 

「遅かったじゃないか、きちんとお金を落としていきなよ」

 

「毎度思うんだけど、客にその対応まずくない?もうフレイヤファミリアの台所じゃないんだよ、ミア」

 

「うるさいね、ここではアタシが法なのさ。さっさと飲み食いしな、せっかくの金づる(ロキ・ファミリア)なのに宴会が盛り下がっちまってたら台無しだよ」

 

 綺麗な店員がいることで人気なこの店にしては珍しく静かになっていた空間に声が響く。平時喧騒飛び交う酒場にあって、これほど小さな会話が響くのはいっそ違和感すら感じた。

 

「なんでこんなに盛り下がってるの?てかなんでベートは縛りあげられて踏まれてるの?」

 

「酒の席だ、そういうこともあるさね。何よりあの犬っころ(凶狼)だしね。内容は知らないよ」

 

冒険者というものは無法者だ。酒が入って酔いが回り、態度や粗暴の悪さに拍車がかかる。彼はファミリア内でその傾向が顕著にでる人間だった。彼の酒癖の悪さは知っている。故に酒が入った彼が問題を起こすのは容易に想像できる。

 

「なるほど…」

 

ベートがなにかやらかし、後ヒリュテ姉妹に縛られたのだろう。ベートの頭を踏むいとやんごとなき妖精の王女(リヴェリア・リヨス・アールヴ)からは怒りの波動を感じる。

 

「ごめんミア、迷惑かけたみたいで…」

 

「アンタのファミリアが原因で売り上げが落ちるようなことは許さないよ」

 

今夜はできる限りお腹に詰め込もうと決心し、ファミリアのもとに向かう。

 

「遅かったな、とっくに宴会は始まっているぞ」

 

ベートの頭を踏むのをやめ、リヴェリアがやってくる。彼女は酒は飲まない。今夜も例に漏れず酒の類を遠慮しているのだろう。反対にフィンはかなり飲んでいるのかおどけた調子でちゃちゃをいれる。

 

「宴会どころか問題まで発生している有様だけどね」

 

いや彼はただ飲んでいるのではなく飲まされているのだろう。誰にとは言わないが。

この二人はロキ・ファミリア創設の時の原初の眷属、三首領。残る一人のガレス・ランドロックは飲み比べで忙しくこちらに来る余裕はないらしい。

 

「ごめん、ドロップアイテムとか採取物の換金は早めに終わったんだけど、アミッドの検診と小言が長くなって」

 

「ああ戦場の聖女(デア・セイント)か、彼女との縁は貴重だ、その言も聞いておいて損はないよ」

 

「その通りだ、そもそもお前はひたむきすぎる。レベル8()のステイタス強化とはいえ単身バロールに挑むなどと…戦場の聖女が文句をいうのも当たり前というものだ」

 

「あはは、手厳しいな…ところでなにがあったの?ベートのことだし予想はつくけど」

 

ベートは凶狼という二つ名を持つ第一級冒険者だ。その二つ名に違わず

苛烈な性格と威圧的な雰囲気を持ち合わせている。格下や弱者を雑魚と言って憚らない。彼の持つ実力主義的考え方は狼人のなかでは珍しくもないが、彼の持つ過去がそれを加速させ、あまりに先鋭的になっている。

 

「きみの予想通りだと思うよ。ダンジョンで見かけたらしい駆け出し冒険者を馬鹿にして嘲笑っていたんだ。それをリヴァリアに折檻されたってとこだね。まぁ他のメンバーも話を聞いて同じように笑ってたんだけどね」

 

「ベートたちが笑っていた冒険者は私達のミノタウロスを逃すという不手際の災を受けた被害者だ、ベートだけでなくそれを笑っていた者も同じように恥知らずが過ぎる」

 

お前はその時の共に行動していなかったからミノタウロスの件も知らんだろうが、と付け足す。

 

「なるほどね、そりゃリヴェリアがいて助かったな。そのまま誰も注意せずファミリアが増長してたら目も当てられないよ」

 

「そうだね、いかにベートの在り方を知っていてもこれを是認することはできないからね」

 

「だがその話題で盛り上がっている最中、店から飛び出していく者がいた。おそらく件の少年なのだろう、悪いことをした」

 

もともとミノタウロスのことで謝らねばならなかったのに此度のことでまた謝るべきことが増えてしまった。

 

「その子はどんな子なんだ?所属しているファミリアとかは…」

 

「分からん、というかその少年を見たのは直接助けたアイズとベートだけなんだ。ファミリアも名前も不明だ、歳の頃はアイズに聞けばわかるだろうが」

 

謝罪しようにも相手がどこの誰だかわからない。ギルドに聞けばなにかわかるかもしれないが、詳細な個人の方など聞けるわけもないし逆の立場ならまだしも、都市一線級のものが駆け出しの情報を求めるのはかえって迷惑がかかってしまいかねない。

 

「アイズも今回のことをずいぶんと気にしているようだ、できることなら謝りたいとおもっているはずだ。話を聞いてみるか?」

 

「うん、その少年のことを聞いておきたい。アイズの心のケアは母親(ママ)にお願いしようかな」

 

「誰が母親(ママ)だ。というかアイズのケアは私に丸投げか、全く」

 

どうせ放っておく気ないくせにと口を尖らせるが、冷たい視線によって黙殺された。

 

「アイズ少し話をいいか」

 

リヴェリアが声をかける、確かにアイズの表情は優れないようだ。

 

「どうしたのリヴェリア」

 

「お前が思い悩んでいる少年のことをこいつに教えてやってくれ、お前が謝りたいと思っているのならこいつもそれに協力してくれるだろう」

 

「宴の最中なのにごめんね、その子のこと教えくれる?」

 

アイズとリヴェリアの間にはただのファミリアの仲間以上の絆がある。彼女がベートたちの誹りを止めたのも、ファミリアとしての品位を守るためという理由もあったが、なによりアイズの感じている苦痛を察してのものでもあった。

 

「少年の名前が分からなくとも容姿や使っている武具、歳の頃はわかるか?」

 

「ううん、さっき店員さんが()()って呼んでた」

 

「…ベル?」

 

青年の顔が驚愕に染まる。しかしそれに気づかずアイズは続ける。

 

「うん、歳は私より少し下だと思う。多分、ヒューマン?兎人(ヒュームバニー)かも、真っ白な髪で真っ赤な目をしてた」

 

「…」

 

「武器は駆け出しって感じだったけど、そういえばアレク(青年)が昔使ってた刀?とよく似た短刀を使ってた」

 

「…」

 

青年は明らかに動揺した様子だ、それに気づき2人が声をかける。

 

「アレク…?」

 

「どうかしたか?」

 

彼が絞り出すように言う。

 

「…こだ」

 

「………え?」

 

「真っ白な髪、真紅石(ルベライト)の目、俺の小太刀、ベルだ」

 

「「…」」

 

「ベル・クラネル俺の息子じゃねーか!!」

 

喧騒を取り戻していた酒場に青年の声が響く。

 

「は?」

 

酒場に1拍の静寂が訪れたのち、

 

「はあああああああああ─────────ッ?!!」

 

轟音がオラリアの日の暮れかけた空に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





「アレクトール・ベーオウルフ」レベル8
リヴェリアと同じ『アルヴの王森』出身
王族の遠い系譜であり、祭事を司る一族出身、代々精霊と親和性をもつ
森がドラゴンに襲われた際、精霊の恩恵を持ってリヴェリアひいては森林を守り、ベーオウルフの名とリヴェリアとの婚約をアールヴ王から授けられた(二人がそれぞれ森から出て行ったので白紙に戻っている)
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