超凡夫に転生するのは間違っているだろうか


メニュー

お気に入り

しおり
作:タルタル山賊焼
▼ページ最下部へ


4/4 

過去編
4.超凡夫に転生した凡夫


お久しぶりです。エタりました。

なので投稿します
エピソード0であり、憑依オリ主の過去編です


 ──これは俺がこの世界に転生してからロキファミリアに入団する話だ。それは愚かで情けなく、無様極まりない未熟そのものでしかなかった、そんな俺であった時代。

 思い返すだけで羞恥心と後悔で死んでしまいたくなるような話だが、それでもあの時があったから今の俺がある。

 だから、また同じことを思わないように俺はこうしてその時のことを度々思い出している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺には前世があった。

 トラックか何かの自動車にぶつかって痛みの中で死んだことは覚えてる。それが誰かを庇ったとかじゃなくて、Bluetoothを耳に着けて音楽を聴きながら自転車を漕いでいると、視界の外から車に轢かれて死んでしまったという、なんともありきたりな転生理由だった。

 ぶっちゃけ相手側が悪いと思うけどその確証はない。何せ、ながら運転をしていたため、もしかすると自分に何か非があったのかもしれないのだから……まあ、実際に目でその瞬間を見てないから恨みようがないというのが本音である。

 突っ込んできた自動車の車種はもちろん、車体の色まで分からないとか、もう一周回って何も言えないわ。

 

 まあ、それはそれとして、俺には他に意識を向けなければならないことがあった。この世界に転生してからすぐに気付いたその事実。

 

 

 

「おい、()()()。暇してるなら実が成ってる野菜を採ってきてくれ」

 

「うん、わかったっす」

 

 

 

 そう、俺は何とあのラウルになってしまったのだ。もしやと思いこの世界のことを調べれば下界に神々が降臨しただの、冒険者だの、オラリオだのと、明らかに『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?』の世界の設定そのものだった。

 俺は『ダンまち』のアニメとスマホゲームの『ダンメモ』を以前遊んでいただけの高校生だった。

 結局受験やらなんやらあって『ダンまち』というコンテンツから離れてしまったけど、アニメ五期からまた追おうと思っていたのに死んでしまったため、碌にそれ以降の内容は知らないままだ。

 だが、ラウル・ノールドがどんなキャラクターなのかは知っている。だから、その事実が分かったときは、神という存在に初めて本気で憎悪を抱いたものだ。

 

「ふざけんなよ……せめてベルくんや第一級冒険者にするもんだろ普通は!?それなのに、ラウルとか……【スキル】も【魔法】も発現しない外れも外れじゃないかッ!!」

 

 と、言った感情を抱いてしまうことは無理らしからぬことだろう。どこまでも普通と言われ続ける不憫枠。

 主人公のようなカリスマも無ければ特別なことも何一つもない、言ってしまうとガチャでいるノーマルキャラ程度の存在。無料ガチャでやって来てしまいそうな存在感だ。

 それこそが【超凡人】のラウル・ノールド。仮にダンまちの世界に転生するとして誰がこんなキャラを選ぶというのか。

 

「俺TUEEE系ならまだしもモブキャラ転生って、マジで誰得なんだよ……」

 

「どうかしたのラウル?……うーん、なんだか落ち込んでいるみたいだけど何かあったのかしら?」

 

 それこそ神様からの転生特典で成り上がりも考えたが、転生する際にそのような神と出会ってないことからその線も薄いと思ってる。

 要するに、ただのラウル・ノールドでオラリオの暗黒期を乗り越え、才能ある後輩冒険者を見続けなければならないということだ。

 いや、どんな拷問?

 

 ベルくんの功績を『すげー!』やら『よくやった!』といった言葉を送るモブキャラ。それがラウル・ノールドだ。

 端的に言ってしまうと最悪だった。でも、そう思ったことをどうか許して欲しい。

 何故、生まれ変わっても凡人でなければならないのか?創作物に夢を見るのは現実の自分とは違う存在を見れるからの筈だろう?

 読者の才能や容姿、精神を作品に落とし込んでも、山も谷もない物語が出来上がるだけだ。

 特別な力も技能も持たない俺が、この『ダンまち』の世界でどうやって活躍すればいい……?

 

「アキは確かに美少女だけど、それだけで頑張り続けるとか流石に無理だって……覚醒もしないノーマルキャラで痛いのとか怖いのか乗り越えるとかクソゲーだろ……。

 それに、俺って猫耳は性癖じゃないし、しいていうなら巨乳が俺の性癖だから、別にアキってそこまでタイプじゃないんだよなぁ」

 

 それで言えば、ヘスティア様がタイプド真ん中である。よく分からない変な服だけどメチャクチャエロかわいくて最高。

 機能性とかの側面から『それって本当にいろいろ大丈夫?ちゃんとした服着た方が良くない?』って思わなくもないが、あの性格もあってトータル満点だ。

 

「あとは、ヘスティアファミリアに入った(ミコト)やアドバイザーのエイナ、カサンドラがタイプだったなー。春姫は巨乳だけど獣耳だからあんまし好きにはならなかったっけ。

 シルは……なーんか不穏なフラグがありすぎてお近づきになりたくないんだよなぁ……好きなキャラなんだけどヤバそうな気配がプンプンする」

 

 そんな本当にどうしようもなく、割りと最低なことを考えていた齢一桁の俺の心境は限りなく腐っていたと言ってもいい。

 

「モチベとかマジで無いわー……」

 

 ──つまり、敢えて言葉にするなら、過去の俺は凄まじくやる気がなかったのである。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 ザワザワと落ち着くことのないざわめきがそこでは起きていた。誰も彼も期待と不安を抱えながらそこに居る。

 ここはロキファミリアの『黄昏の館』。ロキファミリアのホームだ。

 何故この場所にこれだけの人が集まっているのかというと、今日がロキファミリアの入団試験だからである。

 集まっている者は集中力を高めたり、持ってきた武器の点検をしていたりするなど、各自が入団試験に向けて準備をしていた。

 そんな中で俺が何を考えていたのかというと……、

 

 

「(農家をやるってなると退屈も退屈だし、転生したからには冒険者やらないと意味ないしなぁ……うーん、まあ、オラリオには娼館もあるし適当に稼いで通って遊んで暮らせばいいか)」

 

 

 そんな心持ちで俺はいたのだ。冒険者を目指した志望動機がこれである。結局、農家のまま暮らして死ぬという人生に納得できなかった。

 望んでこの世界に居る訳でもないし、ラウル・ノールドになりたいなんて望んだことは一度もなかったが、それでも冒険者になることの魅力が上回ってしまった。

 

「この世界が『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?』の世界である事実は変わらない。

 アニメやゲームで夢想した世界に生まれ変わったのなら、存分に楽しまなければそれは嘘だ」

 

 なら、どれだけ不遇な冴えない人生になることが確定しているのだとしても、冒険者にならないでその一生を終えるなんてあんまりだと思った。

 この世界の主人公はベルくんで、彼のハーレムを遠目から見ることしかできない端役に成り下がるしかなくても、冒険者を経験しておきたいと俺はそう思った。

 

 だから、俺は幼少の頃から冒険者になるための特訓を積み続けてきた。

 それこそ、『ダンまち』はハーレム系主人公が死にかけながら、多くの人を救いチヤホヤされるラノベやなろうの物語の系譜ではあるが、ネームドキャラが普通に死んでいくのが自然な世界観であるのだから。

 

「(個人的に原作者が盛り上がりに欠けると判断したら、真っ先に死にそうなキャラがラウルだと思う。なら、少しでも強くならないと途中で死ぬことになりかねない)」

 

 ラウルなんて定食で出てくる漬物みたいなものだ。熱狂的なファンなんかいない。断言するが絶対にいない。

 

「(好きな食べ物で沢庵や河童巻き言い出すくらいの割合だろ。次期団長の器かって言われると、『消去法で考えればそうかも……?』とか思われるキャラだ。

 ぶっちゃけ前世のことがなければ、読者の多くは納得しなかったんじゃないか?後衛で経験があるリヴェリアが指揮をする方がいいとか思ってたんじゃないかな)」

 

 だからこそ、ストーリーに緊張感を出すためとかの理由で消されかねないキャラだと思ってる。

 フィンがラウルを次期団長候補としているのも、ラウルが死んだときのフィンの反応とかで、『きっとおいしい展開になる』とかあの作者は思ってそうだろ?

 ベートの過去で死んだキャラの背景を考えると、結構エグい展開好きそうなんだよね原作者様。 

 その恐怖心から少しでも解放されるように、できる限りの特訓をしてきたのだ。

 

「(フィンを助けるための方法はゲームで見たから問題ないし、ラウルと同じ様にソコソコ鍛えてたまに遊ぶ生活ができると考えれば、まあ悪くはないでしょ)」

 

 端的に言えば、英雄になって華々しく活躍するというのは既に諦めている。なんせ体がラウル・ノールドだ。英雄になんてなれっこない。

 そのため、ラウルがしていたらしい娼館通いなどで楽しむ方針へ変えたのだ。

 

「(欲を見せずに堅実に努力し続けるべきだ。それこそ、ベルくん達の物語を眺める観客気分でいるのが一番良い息を吸えるんだから)」

 

 後ろ向きだとビビりだと言われても、物語の主役になるなんて余りにも現実的ではないことを考えれば、自分の身の程を理解して立ち回るこそ賢い生き方だろう。

 

「ん……?もしかして、あれって……」

 

 今までのことを思い返していると、見覚えがある人影がそこに居た。いや、直接目にしたことは無かったがアニメやゲームで見ていた少女。ラウル・ノールドになくてはならない人物。

 

「(す、すげぇ、リアルのアキだ!俺と同じ年齢……なんだっけ?やっぱりメチャクチャ可愛いな)」

 

 年齢は俺と同じで12歳なのだろうか?例え好みのタイプなのではないのだとしても、美少女に対して何も思わないことなんて男ならありえない。

 それがこの先長い付き合いの少女なら尚更だ。

 

「?」

 

「(おっとやべ!見てたことがバレるッ)」

 

 獣人の勘なのかいきなり目線をこちらに向けるアキに、慌てて視線を背ける。あちらからすれば当然見たこともない男子だ。

 ここで不信感を抱かれてしまえばこれからの毎日に影響が出てしまう。今は試験に集中しなければ。

 

「ふぅー……大丈夫。原作のラウルよりも絶対に多く努力して、現代の知識からより効率的に鍛えられるように考えてきたんだ。今の俺は本来のラウルよりも強い」

 

 それは、純然たる事実だった。それこそ、『この程度で慢心しているのか』と言いたい人も居るかもしれないが、原作のラウルは農家の三男のため戦い方なんて何一つ知らずに、ロキファミリアの一員になったのだと考えられる。

 それに、比べればプラスで鍛えている俺の方が客観的に勝るのは自明の理であり、これは言ってしまえば既に下駄を履いているようなものなのだ。

 気掛かりがあるとすれば、それは試験内容だろう。原作のラウルでも合格できるのなら戦闘力云々の線は薄い。

 そもそも、それなら獣人やドワーフが優先して選ばれるだろう。そして、弱小種族の小人(パゥルム)の一族復興を目指しているフィンが、そのような選定方法を選ぶわけもない。

 それでは、どのような項目を注視するのか。それは、フィンの信念や小人(パゥルム)の目指すべきものを理解していれば自ずと分かる。

 

「と、なれば『勇気』か」

 

 問題があるとすれば俺には前世があることだが、神々は未知を求めるために下界に降りてきたことから考えれば排斥される可能性は低いだろう。

 神ロキは悪神ではあるが下界に降りてからは、眷属を大事にする善き主神として振る舞っていることから、俺を他の神に売るようなことはしない筈だ。

 

「さてさて、ロキファミリアの入団イベントなんてアニメでもゲームでもなかったしどんなのがくるかな!ワクワクとドキドキが止まらねぇ……!」

 

 ウキウキとした気分でロキファミリアの入団試験開始まで俺は待っていた。原作を追うまでの余裕は無かったが、それでも好きな作品の描かれないシーンを体験できるなんて、やっぱり嬉しいものだ。

 

 そしてそんなことを思っていると、ようやくその時がやってきた。




年齢は独自設定です。
4/4 



メニュー

お気に入り

しおり

▲ページ最上部へ
Xで読了報告
この作品に感想を書く
この作品を評価する




秘湯の癒し小町『なごみ郷耳かき店』へようこそ~艶麗な店主のお膝で至福のひとときを~【CV.相良茉優】 [RaRo]
  萌え 癒し シリーズもの バイノーラル/ダミヘ ASMR 耳かき ほのぼの ささやき