第17話 夏休み最終日

 夏休み最終日。

 輝く太陽とは裏腹に、部屋は快適な温度に調整されている。にも関わらず俺を含めた四人は汗塗れ。

 正確に言えば汗だけではないが、細かく描写するのははばかれるので省略する。


 明日から学校にも関わらず、俺達のする事は変わらない。

 常にお互いに求め合い、誰かと繋がっている。


 外に遊びに行く案も出たけど、一人が絡み出せば他の二人も追随する。

 結局、四人でくんずほぐれつの、いつも通りの俺達のまま。


 気付けば夕方。


 窓から射し込む夕日に少しだけ哀愁を感じる。


 もうこの時間が終わるのだと。


 姫華もそれを感じたのか一瞬憂いのある表情を見せる。しかしいつもの笑顔に変わり打ち上げをしようと提案してきた。


 有り合わせの食材すら無かったので、ほとんどはデリバリーで注文した。


 ちょっとしたパーティー。


 各々で好きな物を食べ、好きな物を飲み、好きなように騒いだ。


 ひとしきり騒いで遊んだ所で、姫華が「ちゅーもーく」と言って俺達の視線を集めた。


「なによ〜、ヒメ」

「なになに、いまさらながら告っちゃう?」


 気怠げな咲夜と、煽るリナ。


 俺はと言うと真剣な目で姫華を見る。


「まずはサク、リナ。私の無茶な提案に最後まで付き合ってくれてありがとう。二人じゃなければ絶対に無理だった。きっとケンちゃんもここまで自信を取り戻す事は出来なかったし、トラウマも残っていたと思う」


「まあね。あたしとリナじゃなけりゃここまで上手くいかなかったろうね」


 炭酸ドリンクを飲みながら、ドヤ顔で咲夜が答える。

 

「うん。それは絶対にそう。私一人じゃどんなに頑張っても無理だったよ、きっとケンちゃんに余計な負い目を背負わせてた」


 多分姫華との最初の事を言っているのだろう。

 確かにあそこで姫華だけだったら、俺は負い目を理由に姫華と付き合っていたかもしれない。


「あれはねー確かに、誰かさんが暴走しちゃったもんねー。鼻息凄かったしー」


 リナがその事を茶化す。

 そうあの時の失敗は、過去の笑い話になっている。俺達にもうわだかまりは無い。


「あはっはっ、そうだねー。今でもすっごい鼻息荒いときあるしね」


 姫華もそう言ってネタとして受け流す。


「そうそう。特にバックの時な、お前は腰振り蒸気機関車かってくらいズッコンバッコンだしな、キャハハハ」


 咲夜が笑いながら下ネタを飛ばす。


 散々ヤリあった間柄だけど、こうやって指摘されると、自覚ある分恥ずかしさがある。


「とっ、冗談はこの辺までにして本題に入ります。良いですか二人共」


 笑いに流れかけた雰囲気を姫華が制し、咲夜とリナに視線を向ける。


「なによ、改まって」

「ふぅ、告白じゃないみたいね」


 真剣な姫華の表情から、二人も真面目な表情に変わる。

 二人の表情を確認した姫華が本題を告げる。


「まず私とケンちゃんは付き合いません。その上でこの夏休みプランの延長を提案させてもらいます」


 まず正式にお付き合いしない方針は、姫華とちゃんと話し合って決めた事だ。

 その上での夏休みプランの延長。これは別に俺が彼女達とヤリたいから姫華にお願いしたわけではない。

 確かに二人の心を欲したのは本音だけど、この関係の異常性も理解していた。だからリナと咲夜とは夏休みで終わる覚悟はしていた。


 つまりこの関係の継続を望んだのは姫華だった。

 

 そして彼女は俺に言ったのだ。


「二人も幸せにして欲しい」と。


 それは俺にしか出来ないとも。

 理由を聞くと姫華は笑って言った。


「私達は四人じゃないと駄目だから」と。


 その目はどこか遠くを見ているようで。

 一瞬姫華がこのままだと消えてしまいそうに感じてしまい。気付けば俺は同意していた。


 ただあくまで二人の意思を優先し、けっして無理強いはしないと姫華とも約束した。


 でも姫華は自信有りげに言った。


「二人共、すぐには答えはでなかもだけど、きっと応じてくれるよ」と。


 そして姫華と俺の提案に対して、二人の出した答えは「少し考えさせて欲しい」だった。


 


――――――――――――――――――――


読んで頂きありがとうございます。

誤字報告も助かっております。


続きを書くモチベーションにも繋がりますので

面白いなっと思っていただけたら


☆☆☆評価を頂けると泣いて喜びます。


もちろん率直な評価として☆でも☆☆でも構いませんので宜しくお願いします。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る