気が付くと俺は廃墟とかした教会に居た……と言うか寝ていた。
確か……シドーにメガンテを仕掛けて、相討ち……かどうかは分からないが、深手を負わせたのは確かな気がするし、そうなれば後はロランが片を付けている筈だ。
まーそれは置いといて……何故俺は生きてるのだろうか?
そして、やたらと寒い気がするのは一体……?
そこで、体を起こして見て見ると寒く思うのは当然だった。
何せ今の俺は上半身裸だったし、そして俺がメガンテをしたのに生きてる……いや、生き返った理由もわかった。
体を起こした時に枯れ果てた世界樹の葉が落ちたのだ。
力の盾と隼の剣はちゃんとあるのに、鎧と言うか……服が無くなっているのは恐らくメガンテの威力で消し飛んだせいなのだろうか?
ここが一体どこなのかさっぱり分からないし、ハーゴン率いるモンスターに滅ぼされた街の教会なのかもしれないが……それならばルーラを使用すれば国に帰れるはずだ。
俺はすぐさま脳裏にサマルトリアの城を思い浮かべてルーラを唱えたが……
「ルーラ!……ってあれ? 発動しない!? おかしいなぁ~魔力は枯渇してる訳じゃ無いのにどうなってんだ?」
今まで発動しなかったことは特別な場合を除いて無かったけれど……今回はまた別の事情のような気がする。
まるで俺が居た世界とは違う世界で有るかのような……?
確か……俺達のご先祖様は上の世界から来たって伝承があった気がするし、その時の魔王を倒したことで帰れなくなり、アレフガルドに骨を埋めたって聞いたっけな?
つまり……ここはご先祖様の住んでいた世界なのか?
そう思うと何となくワクワクしてしまい、俺は一目散に外に飛びだしたが……俺の目に飛び込んで来た光景とんでもないものだった。
廃教会からでも分かるが……とある一角から火の手が上がっており、微かにではあるが悲鳴も聞こえていた。
言っては何だが、人の居るところに争い有りって位こういった事は起きてしまうものなのでどうしようもないのだが……それにしてもご先祖様達の住んでいた世界も中々バイオレンスな物だった。
俺はこの世界の住人じゃないし、そもそも俺の国でも無いのだから場を引っ搔きますのは良くないけれど……こんな俺でも勇者の子孫なのだから見過ごすのは目覚めが悪いし、もしロランやルーナに今思っている事がバレたならば鉄拳制裁はともかくイオナズンされてしまうかもしれない。
「はぁ~本当はのんびりしたいものだけど……行くとするか!」
左手に力の盾を持ち右手に隼の剣を握る。
力の盾は傷一つ無く、翳すだけで回復呪文が発動するし問題は無さそうだが……隼の剣がどことなくおかしい。
破壊の剣と似たような気を感じるが……持ち主に害を与える感じではない。
試しに、その辺に転がっている石を切ってみたが……
「……破壊の剣と同じ切れ味だな」
まるで熱したナイフでバターを切るかのようにすんなりと切れてしまった。
疑問に思いつつも、力が低い俺にとってはありがたい事なので良しとしよう。
「さて……人助けするとしよう」
俺は足に力を込めて火の手が上がっている方に向かって走り出した。
俺が火の手の上がっていた場所に着いた時には更なる爆炎が広がっており……その中から、一人の赤髪の少女が出て来たが……
「……あの爆炎から出て無傷かよ。ご先祖様の同郷の住人は化物か?」
誰に聞こえる訳も無いが俺は思わず突っ込でしまった、
「『
赤髪の少女はドヤ顔でそう言ってるが……服燃えてるし……
さて、どうしたものかと考えて居ると、赤髪の少女の元に三人の少女が駆け寄りそのうちの一人が赤髪の少女の服が燃えている事を大きな声で注意し始めた。
「アリーゼ、お前服燃えてんぞ!! 笑止じゃなくて焼死すんぞ!?」
それを聞いたアリーゼと呼ばれた赤髪の少女は右へ左へ大慌てに行動し始めて、何とか燃えていた自身の服の消化に成功したが……
「……ふぅ。まぁ、こういう時もあるわよね! 失敗は何時だって明日の糧! これで私は理想に近づいたわ!」
……一体どんなのが理想なのか物凄く気になるな
「……すっげえ力技で誤魔化そうとしてんぞ、アタシ等の団長……」
「前向きで都合の悪い事は全てもみ消す立ち振る舞い、わたくし達も見習わないといけませんねえ」
「輝夜、アリーゼを侮辱するな! アリーゼはただ、その、少しアレなだけです!」
「庇ってやれよそこは……」
赤髪の少女を団長と言ってる事から、三人の少女達は恐らく団員なのは間違い無いが……彼女達は自警団か何かなのだろうか? そう考えると倒れている黒服の奴らの服を取るのは辞めた方が良いかもしれないな。
勘違いで敵扱いされるのもめんどくさい……しかし、今は情報が欲しいな。
そこまで考えて居ると追い詰められていた黒服が彼女達を見て驚愕の表情を浮かべていた。
「お、お前達、まさか……」
「あら、自己紹介が必要? それなら正々堂々たっぷりしてあげるわ!」
その様子に気分を良くしたのかアリーゼと呼ばれた少女は自信たっぷりに剣を抜き名乗りを上げた。
「弱気を助け強気をくじく! たまにどっちもこらしめる! 差別も区別もしない自由平等、全ては聖なる天秤が示すまま! 願うは秩序、想うは笑顔! その背に宿すは正義の剣と正義の翼! ーー私達が【アストレア・ファミリア】よ!!」
……ファミリア? 良く分からないが……自警団って事で良いだろう。
そう、考えると……寒いとは言え、敵側の奴らの服を奪うっていうのは辞めた方が良いだろう。
ならば何時までもここに居ても仕方が無いので、俺はこの場を立ち去ろうとした時だった。
「……お前に爆撃は効かなくても、加護の無い人にはどうだろうな!」
何やら黒服の奴がそう叫ぶと俺の方に”何か”を投げて来た。
虚を突かれた所為か……彼女達は反応する事が出来ず、その”何か”は放物線を描き俺の元に落ちて来たが……
俺は慌てる事無くその”何か”に魔力を込めて指を向ける。
「……ギラ」
ロンだルギアのモンスターには火力不足の為、今じゃあ使う事もない程の魔法だが……こう言ったちょっとしたことに使うのであればうってつけだと思い俺は唱えたが……
指先から放たれたギラは俺の想像を超えた威力を発揮していた。
最後に使った時よりも二回りも大きな閃熱は”何か”を意図も容易く飲み込み……そして燃やし尽くした。
「はあ!?」
「「「「え!?」」」」
「なんじゃそりゃぁぁ!」
黒服の奴が何か喚いているが……それよりも今俺が唱えたギラの方が問題だ!
目覚めてからまだ、一時間も経っていないけれど……あの威力はおかしい!
一体俺に何が起きてるのだろうか?
「呆けているところ悪いけど……あなた何で上半身裸なの? とりあえず、憲兵に引き渡すから大人しくしていてね」
「あ……ああ」
逃げるなり、なんなり出来たけど……それをすると地の果てまで追いかけて来そうだから、辞めて置くか……
とりあえず、両手を上にあげて降参の意を示して俺は大人しくする事にした。