オアシス、DICに美術品売却要求 「利益出る事業に集中を」
香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントは7日、インキ大手のDICの美術品保有について、売却して株主還元に回すべきだとの考えを明らかにした。売却オアシスはDICに公開質問を送っており、10日までに回答するように求めている。
オアシスのセス・フィッシャー最高投資責任者(CIO)が日本経済新聞の取材に応じた。DICの保有する美術品の資産価値について1000億〜1500億円と査定していると明らかにし、「資産価値を1500億円と仮定すると総資産利益率(ROA)10%に達するには(美術品で)年間150億円を稼ぐ必要がある。その半分の5%だとしてもあまり現実的ではない」とし、「利益が出る事業に集中すべきだ」と話した。
DICは、外部の専門家や投資家との対話をきっかけに、直営するDIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)の移転・縮小を決めた。4月から現在の美術館は休館する。保有する美術品は段階的に売却し4分の1に減らす。売却で2025年12月期中に100億円以上の現金収入を見込む。
フィッシャー氏は美術品の保有で維持などに資金が流れることに懸念を示し、「売却してそのまま株の買い戻しや配当、中核事業や人への投資に回すべきだ」と話した。
オアシスはDICの株式を約11.5%保有し、27日に予定する定時株主総会に向け、ガバナンス体制の改善を求めている。創業家が関わる企業との関連当事者取引を取締役会で監視するように求める株主提案をしたほか、DICの猪野薫会長の取締役再任案に反対するよう、ほかの株主に呼びかけている。DICは関連当事者取引について、現在でも適切な監視・監督を実施していると反論している。
フィッシャー氏は「DICは一定の改善をしているが、一定の事柄で止まってしまっている。(DICの池田尚志)社長は会長の縛りから解放されるべきだ」と述べた。DICの今後の成長戦略については「明確に答えることはできないが企業価値は非常にある。赤字を出している資産を売却し合理化することで価値を生み出せる」と話した。
オアシスは創業家が議決権の過半数を実質的に所有する関連会社との間の不動産取引などに疑いがあると指摘している。DICとの対話の中で「関連当事者取引をやめる承認を得られなかったことの不満もあり、今回のキャンペーンに踏み切った」と明らかにした。
DICの業績は回復途上だ。23年12月期は欧州の顔料事業で減損損失を計上し最終赤字に陥ったが、24年12月期は最終損益が213億円の黒字となった。株価はオアシスの大量保有が明らかになった23年末から2割弱上昇している。ただ、時価総額は3100億円程度で、PBR(株価純資産倍率)も0.8倍弱に沈む。
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