近頃の学生は勉強しない?
「海外の学生は真面目に勉強している」
「それに比べて今の大学生は、遊んでばっかでけしからん。」
――ネットでもリアルでも、私たち大学生はずいぶんと手厳しい評価を受けることが多い。
講義中に居眠りをしたり、課題を忘れたり、バイトやサークル活動を優先したり……確かに、そう言われても仕方のない行動が多々あるのも事実だ。
確かに遊ぶ学生が多いのは事実だけど、熱心に取り組んでいる学生もたくさんいる。だからこそ、「今の学生はダメだ」「海外を見習え」という言葉を耳にするたびに、どうにも引っかかるものがあった。
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隣の芝は青く見える
そんな折、私はある学会に参加することになった。私自身、20時間くらいかけてスライドを作って、その学会に望んだ。
発表自体はなんとか無事に終わり、私がほっと胸を撫で下ろしていると、どこかの国立大学の教授らしい初老の男性が話しかけてきた。
「君は…あみさんだっけ? 素晴らしい発表だったよ。非常に分かりやすくて、準備に相当時間をかけたんじゃないか?」
「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」
すると教授は深いため息をつき、やや声を落として言った。
「まったく、うちの学生ときたら真面目に勉強をしない。遊びやバイトにばかり精を出して、学業に対する意欲が薄いんだよ。僕も学生のころは遊んだりしてたとはいえ、もう少し主体的に学んでいたと思うんだけどね……。他大学の学生を見ていると本当に感心させられるのに。うちの連中にも、その姿勢を見習ってほしいよ」
正直ちょっと大げさにいっているだけではないかと思ったけれど、口には出さなかった。
私は適当に相槌を打ちながら、「どこの大学でもそう思うものなんだな」と心の中で苦笑いした。
プライドは高いのに
学会から戻った数日後、研究室の教授といっしょに飲みに行った。
「ポロロン♪」
飲んでいる時、教授のスマホから通知音が鳴った。
教授はメールを開いた。穏やかな表情の裏には明らかな苛立ちがあった。
「うちの研究室の学生は、どうしてこんなにも主体性がないんだろうね」
教授は学生からのメールを見ながらため息をついた。
「論文提出の前日というのに、『やっぱりわかりません』って学生からメールが来てるんだ。いったい今まで何をやっていたのか。もう少し早く報告してくれればアドバイスもできるのに。ギリギリになって言い訳ばっかりして……。」
「そもそもこの大学の学生はプライドばかり高くて主体性に欠ける学生ばかりだ。」
教授は怒りを抑えきれず続けた。
「私が海外で研究員をやっていた際に周りにいた学生はもっと自発的だった。もっと真面目に研究に取り組んでいる。日本の学生も少しは海外を見習ってほしいものだよ。」
教授は空のグラスをカウンターに打ち付けるように置き、深いため息をつく。私は慰めるように笑顔を返した。
やります、任せてください!
数ヶ月後、幸運にも私はヨーロッパの大学に招かれ、講演する機会を得た。
講演は滞りなく進み、その夜は現地の講師と飲みながら歓談することになった。初めは研究の話が中心だったけれど、やがてその講師は私の耳に馴染み深い言葉を口にした。
「うちの学生ときたら、本当に酷い奴ばかりだよ」
講師は愚痴をこぼしながら続けた。
「課題を与えると、すぐに『やります』と返事する。この時は何も考えずにとりあえず受けるんだろうね。
でも、結局、期限ぎりぎりになって『やっぱり無理でした』と言ってくる。期限ギリギリどころか過ぎてから、平気な顔で謝ってきたりするんだよ。」
「尻拭いするの大変ですよね。」
私は同情して慰めるように言った。
するとその講師は呟いた。
「うちの学生も海外の学生を見習って、受けた課題にはもっと責任感を持って取り組んで欲しいんだけどね。」
※このストーリーはフィクションです。
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