作:レベルの高い合格点をオールウェイズ
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1年目(8歳)
「やーっとあのメシマズ島から脱出できたわ。ん〜、風が気持ちぃ〜」
「......否定は出来ませんが、一応は私の生まれ育った国ですから何とも複雑な気分ですね」
「どんな世界でもあの島国はメシマズだって因果からは逃れられないのよ。気にするだけ無駄無駄」
「どんな世界でも.......?」
「こら、アルト。ぼーっとしてたら置いていくわよー」
2年目(9歳)
「先生......この黒い塊はなんでしょうか」
「肉の串焼きよ」
バキンッ!
「先生......
「.......いくら完璧な私にだって欠点くらいはあるの。そんなに嫌なら自分で作り直せば?」
「わかりました」
ーーーーーーーーーー
「ねえ、ちょっと何それ。メチャクチャ美味しそうじゃない」
「良ければ一口食べますか?」
「どれどれ......っ!いや、マジで美味しいわね。材料同じもの?」
「はい」
「........ねえ、他の料理も作れたりする?」
「作り方さえわかれば一通りのものは作れると思います」
「なら────とか作れる?材料と大雑把な作り方はわかるんだけど」
「期待に応えられるかはわかりませんが、全力は尽くしましょう」
ーーーーーーーーーー
「うまーーー!!!」
「それは良かったです」
「まさかこの世界で現代料理が食べられるなんて......!いや、こんなに美味しいものはあっちでも食べたことがないわ」
「そんなに喜ぶようなら、これからは私が食事当番をしましょうか」
「アルトさいこー!」
3年目(10歳)
「おいしー!」
「お兄ちゃんありがとう!」
「喜んでもらえたようで良かったです」
「こらー、私にもお礼は無いのかー」
「だってお姉ちゃん何もしてないんだもーん」
「お兄ちゃんしか料理作ってないもんねー」
「カッチーン。ガキンチョだからって甘く見てたのが裏目に出たみたいね......そんなあなた達にあげる料理はもうここにはありません!」
「先生、そんな子供みたいな理屈を捏ねないでくださいよ.......」
「ふんだ。そもそもアルトがこんな村で炊き出しをしたいなんて言い出さなきゃこんなことになってないんだから」
「まあそのことに関しては本当に感謝していますが、もう少し余裕というものを────」
「あー!私が大事に育ててたお肉とったなー!」
「先生.......」
4年目(11歳)
「ハァ......ハァ.......」
「そろそろ休憩挟む?」
「いえ、もう少しお願いします」
「根を詰め過ぎても良くないんだけどねー。ほい、脇腹がら空き」
「ぐぅっ.......!」
「おっ、目が覚めたかしら。体調はどう?」
「ええ......体はまだ痛いですが、気分はだいぶ楽です」
「ん。そういえば、そもそもなんで急に強くなりたいなんて言い出したの?」
「色々な街を見て回って────何となく昔のことを思い出したんです。私はもう二度と、あんな思いはしたくない」
「そっか」
5年目(12歳)
「それにしても、先生の魔道具は本当に素晴らしいものが多いですね」
「ま、私が作ったものは反則みたいなものよ。この世界で作れるのは私だけだろうしね」
「だとしても凄いですよ。特にこのポーチなんかは本当に便利です。一体どれだけの量のものが入るのか.......」
「さあねー、私も限界まで入れたことがないからわからないわ」
「作ったのは先生なんですよね?」
「も、もちろん」
「.....先生、私の目を見てもう一度答えてください。本当に先生が作ったものなんですよね?」
「.........」
「ハッ!ま、まさか盗んだものじゃ────」
「違うわ!借りてるだけよ!」
「借りてるって.......もう5年近く一緒にいますけど、そんな素振り見たことないですよ?」
「ふんだ。そのポーチ以外は正真正銘私が作ったものなんだし別にいいでしょー」
「いや、だとしてもそのポーチが問題なんじゃ......」
「あー、うるさいうるさい。そもそも先に仕掛けてきたのはアッチなんだから、魔道具の1つや2つ勝手に持って行っても私は何も悪くないわよ」
「はぁ......」
6年目(13歳)
「先生、先生。もう昼ご飯の時間なんですから流石に起きてください」
「う゛あ゛あ゛.......頭痛い」
「調子に乗って酒を飲みすぎた自業自得です」
「.......たまにはいいでしょー。お偉いさんたちが飲むような日本酒なんて早々飲めないんだから」
「はいはい、お味噌汁出来てますからどうぞ。熱いので火傷には気をつけてくださいよ」
「ありがと.....あ〜、染みる〜。ん?これ味噌変えた?」
「ああ、はい。この前
「うん、前まで使ってたお店の味噌より断然美味しい.......貴方のレパートリーどんどん増えていってるわね」
「先生に教えてもらったメニューもまだ全部試せてはいませんから」
「ふふ。そんなに楽しそうなら出し惜しみせずに教えて正解だったわ」
7年目(14歳)
「うわ、ついにあのウミヘビ倒したんだ。流石に名のある大神のファミリアなだけあるわね」
「先生。食事中は余所見をしないでくださいと何度言ったらわかるんですか。行儀が悪いですよ」
「なによ、別に新聞くらい良いでしょー......わっ、見なさいよアルト。この子貴方と同い年らしいわよ」
「"静寂".....?」
「凄いわね、この歳でもうLv.7ですって。今じゃ恩恵持ちも珍しくないけど、オラリオはやっぱ別格ねー。世界中の国vsオラリオとかやっても普通に勝つんじゃないかしら」
「そんなに凄いところなのですね」
「なんせ世界の中心なんて呼ばれてるくらいだからね。ま、あと1ヶ月くらいで着くだろうから精々楽しみにしておきなさい」
◇◇◇◇◇◇
「ここがオラリオ.......」
「賑わってるわねー。あら、あの屋台の串焼き美味しそう」
「ちょ、あまり勝手に動かないでください先生」
「おっ、いたいた。おーい!アルトこっちぃ!」
「先生!急にいなくなったので心配しました。何かあったのですか?」
「いやあ、デートを覗き見してくる無粋な奴がいたからね?すこ〜しだけ釘を差しといたわ」
「デート.....?先生と私がデート.....?」
「疑問に思うのそこなのか......しかも相手を目の前にして心の底から不思議そうにするな、失礼だぞー」
「私の尊厳は一体何処へ.......」
「うんうん、予想通り貴方にピッタリのドレスね。店員さーん、この3着貰いまーす」
「お買い上げありがとうございます。今ご試着のものはどうなされますか?」
「そのまま着て帰りま────」
「持ち帰りで!持ち帰りでお願いします!!!」
「酷い目にあいました......」
「はっはっはー。見てるこっちは楽しかったわよ」
「はあ。もういい時間ですし、そろそろ今晩の宿屋を探しましょう」
「........」
「先生?」
「ねえ、アルト。この8年、世界を回ってみてどうだった?」
「そうですね.....やはり、楽しかったというのが一番最初に思い浮かびますね。それに何となくやりたい事も見つかりましたし、本当に充実した日々でした」
「そっか。それなら良かったわ」
「突然どうしたんですか?」
「ん〜、いや何となくね?私がこの世界に来た意味はあったのかな〜って思っちゃって」
「...........もう元の世界に帰ってしまうのですか?」
「そうね〜、この世界には長く干渉し過ぎたからそろそろ帰ろうかと.....え、なんで知ってるの!?」
「いや、8年も一緒にいれば流石にある程度は察しますよ。ただでさえ先生はわかりやすいんですから」
「ガ、ガーン。最後は黙ってクールに去ろうとしたのに、計画が台無しじゃない」
「私たちらしくて良いじゃないですか。私は好きでしたよ、先生との生活」
「........それはちょっとズルくない?」
◇◇◇◇◇◇
「それじゃあここでお別れ。元気でね、アルト」
「先生こそ。私がいなくても夜はちゃんとお腹をしまって寝るんですよ」
「最後までうるさいわねー。ほれっ、それは選別よ」
「わっ、ちょっと投げないでくださいよ.....って何ですかこれ?」
「ちょこっとだけ特殊な効果がついてる折りたたみナイフよ。ダンジョン内のモンスターを解体する時に便利だから大事にしなさい」
「わかりました、ありがたくいただきます。お守り代わりに常に携帯しておきますね」
「元は只の安物のナイフだから、壊さないように気をつけなさいよ?」
「はい」
「よし!なら最後に私からありがたーいお言葉を授けよう!」
「喜びも悲しみも、弱さも強さも知ってる君なら────きっと素敵な男の子になれると私は信じてる。じゃあね、アルト。いつかまた、どっかの片田舎で貴方の料理を食べられる日を楽しみにしているわ」
「ついに私も一人ぼっちか........ダメだ、心を強く持てアルト・シーズリア」
「よし、まずは今日の宿屋探しと夕食の買い出し。後は私でも入れるファミリアを探さなければ.....」
「パン一つでこの値段だとすると、一食だけでこれだけ費用がかかるのか。やはり外と比べると物価が高い────なんだ?あちらの路地裏から声が聞こえたような......あの人か」
「────大丈夫ですか?」