北の果て、竜の谷と呼ばれた地で下界の命運をかけた戦いが“全滅”という名の終わりを迎えようとしていた。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!」
「─────────────────!!!」
今だ動ける戦天使が翼を羽ばたかせ、亀裂が入った自身より大きな大剣を振るい勇猛果敢に黒き終末へと挑む。
「─────────────────!!!」
「ぐっ!?」
だが、ただの咆哮で剣を砕かれ飛んでいた戦天使は地に落ちる。
「もうよせ!お前まで死ぬぞ!!」
「だけどッ!?」
戦天使は武器は砕け、地に落されても片目の
「ここは私たちに任せて逃げろ!!」
「でもッ!?」
「おまえだけは
「ッ!ごめん皆!!」
彼女は逃げる覚悟を決めたのか、身体を残された力で光速を越えるスピードと化し、次元の彼方へと跳躍した。
「─────────────!!!!!!!」
獲物を失った
「……皆、すまない。最後まで付き合って貰うぞ」
「いいんですよ団長。何処までもお供します」
「俺たちもいるぜ」
「ゼウスの……すまんが付き合って貰うぞ」
「おうよ!!」
今日この日、ゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアの主力陣営全滅によって世界が絶望に落とされた。
ただ一人、時空の彼方に転移して帰還することも出来ずに彷徨っている眷属を除いて……
────────────────────
時は過ぎ、暗黒期。オラリオは絶望の時代を迎えていた。
「しかし、本当に残った眷属は君たちだけなのか?」
とある廃教会で一柱の邪神が目を閉じた女性と、黒鎧の男性に問いかける。
「何度も言わせるなエレボス。俺のファミリアは当時動けた全員で討伐に向かったんだ。今残っていて戦えるのは俺くらいだろうよ」
「私もほうも同じだ。……だが、一人生きているかもしれない人物がいる」
「ほぅ……その人物は今何処に?」
「知らん」
「は?」
「だから知らんと言ったのだ」
「…………まさか、
「あぁ、ヘラが悲しみにくれる前にこう言った『恩恵がなくなったのではなく切られた。恐らく
その言葉を聞いた
「んん~?どういうことだいアルフィア、恩恵がなくなったのではなく切られた?もしかしてその
「いや、通常は無理だ。彼女……ルシアートが使う奥の手はデメリットとして発動終了後恩恵が途切れてしまう諸刃の剣なんだ」
「マジかよ。そんなの聞いたこともないぞ」
「当然だ。あいつが奥の手を使ったことはほぼないからな」
「そうかー。しかし何処にいるのやら……」
「それは………ッ!?」
「ッ!?なんだ!?」
突如、
その穴からボロボロになった金髪の女性が落ちてきた。
「────ッ!!」
目を閉じていたアルフィアが落ちた女性を見た瞬間驚きで目を開き、目にも留まらない速さで女性を空中で救出する。
「ルシアート!しっかりしろルシアート!!」
「……ルシアート?それって……」
「ッ!?傷が深い……エレボス、ザルド!急いでエリクサーを!!」
「ッ、ああ!!」
ザルドは廃教会を飛び出し、
「……ぅ、アル、フィア…?」
「気がついたか、待ってろ今エリクサーを……」
「……近くに………信用できる神はいる………?」
「ッ!?」
アルフィアは言っている意図を察し
「ん?どうしたアルフィア?」
「……業腹だが、救済を夢見る邪神が一柱そこにいる」
「……そう……ねぇそこの邪神様」
「何かな?」
「恩恵を………刻んでくれる?」
「……なるほど、そういうことか。いいだろう背中を見せたまえ」
「アルフィア……お願い」
「…………わかった」
動けないルシアートの代わりにアルフィアがボロの
「……本当に恩恵が消えている」
「とっとやれ」
「イエスマム!」
アルフィアに睨まれながら、エレボスは手早い手つきで恩恵を刻む。
「………ハハ、なんだこのステータス」
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ルシアート・セファル
Lv、7
力∶SSS1205
耐久∶SS1050
器用∶SS1032
敏捷∶SSS1506
魔力∶SSS1674
発展アビリティ
飛行∶S 耐異常∶E 魔導∶D 神秘∶B 斬光∶E 跳躍∶B 占術∶C 天撃∶F
《スキル》
【
・背に翼を展開可能。翼の数によって全ステータスへの補正が高上昇。翼の数はLv、意志によって変動する。
・発展アビリティ『飛行』の獲得
・自身が飛行する際、外的効果を全て無効にする。
…………………………………………
…………………………
……………
……
────────────────────
急いで恩恵を刻んでいたため、全てのステータスを読むことが出来なかったが、パラメーターの時点で既にデタラメであった。
「恩恵は刻み終わったよ」
「……ありがとう…ございます。【呼び出すは……この世の真理、形作られた運命。我は占う者……万象を見定め、ここに未来を示せ】────【カレイド・アルカナム】タロット20〈
ルシアートが魔法を唱えると22のカードが空中に召喚され、そのうちの1枚[天使が笛を吹いている絵柄のカード]を手に取る。すると、そのカード以外のカードが全て霧散し、手に取ったカードも消え失せた。すると彼女の傷が瞬く間に塞がり、呼吸も安定した。
「え、すごっ!?」
「おまえ……それは……メーテリアに使っていた……」
「ふー………死ぬかと思った」
「おい!エリクサー持って……あれ?」
「え、ザルドだ……ここどこ?」
さっきまで死にかけていた人物とは思えないほど能天気な彼女にアルフィアは呆れる。
「はぁ……ここは私達のお気に入りだった教会だ」
「……ていうことはオラリオ?」
「あぁ」
「よかったー帰ってこれた!」
「だが、何年も行方不明になっていたのは何故だ?」
「──────────は?」
アルフィアの質問を聞いたルシアートは驚愕で体が硬直した。
「あれ?……彼女固まったけど?」
「─────え?ちょ、ちょっと待って!!……もしかして私がいなくなってから何年も経ってる?」
「約8年だね」
「えぇ!?……マジかー……っていうことはファミリアは……?」
「ゼウスもヘラも追放。今はロキとフレイヤがオラリオの2大トップだ」
「ですよね~」
その後もルシアートがいなくなった後の事と今アルフィア達が行っている事を説明していく。話を聞き進むに連れて彼女の目はどんどん死んでいった。
「……っということで、私達はオラリオを滅ぼす」
「何してんだよオラリオ……とにかく、事の経緯は理解した。それで?私に恩恵を刻んでくれたそこの神様がこの事件の黒幕かな?」
「お初にお目にかかるヘラの眷属。俺はエレボス、原初の幽冥にして、地下世界の神だ。君のステータスは見させてもらった。その上で主神として命令を出そう………どうか
「………あれ?手を貸してほしいじゃないの?」
「違うぞルシアート、俺たちにはもう時間がないんだ」
「ザルド、貴方毒が……ッ!!」
「よせ、もういいんだ」
ルシアートは〈
「なんで!?まだ助かる可能性も……」
「いや、ここでいい」
「アルフィアまで!?なんで!?」
「………メーテリアが死んだ。子供を産んでな」
「え……?嘘そんな……」
「元々お前の
「……ッ、でも──「それに」──!?」
「「死に場所は自分で選びたい」」
二人の言葉にルシアートは涙を堪えながら静止していた手を下ろす。
「……そっか、そうだね!確かに死に場所は選びたいよね!なら……仕方ない」
「……すまないな」
「いいの、その選択に悔いはないんでしょう?」
「「あぁ」」
「なら止めない」
三人の会話を挟むように手拍子が教会に響き渡る。
「話は済んだかな?」
「えぇ、ありがとうございます神エレボス」
「君は俺の眷属になったがそれはあくまで一時的だ。君は終末に再び挑む資格がまだ残っている。だからだ、君にはウラノスの所に行ってほしい」
「え?」
「どうせあの老神のことだ。これらから俺が何をしたいのかなんてお見通しだろうからね」
「ウラノス様の元で何を?」
「見届けてほしい。オラリオの戦いを」
「………わかりました。決着がついた時、また再び貴方の前に姿を見せます」
「………もう行くのかい?」
「えぇ、これ以上話していると引き留めたい気持ちが勝っちゃいそうなので」
ルシアートは苦笑しながら身なりを整える。
「……アルフィア」
「なんだ?」
「メーテリアの子は今何処?」
「メーテリアがゼウスに託した。今はどこぞの山奥で暮らしているだろう」
「そっか、じゃあ……ばいばい」
「あぁ、また会おう」
ルシアートは一粒の涙を落としながら廃教会を後にした。
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「うわー、これは壮観だねぇ〜。とと、危ない危ない」
神々の一斉送還を上空から見ていたルシアートは送還の光を避けながら、まるで劇を観ているかのように呟いた。
「神エレボスは策士だね〜。一体いつからこの計画を練っていたのやら……」
炎に覆われたオラリオには阿鼻叫喚の悲鳴、ルシアートはその悲鳴を聞いて少し退屈そうな顔をする。
「『脆き者よ、汝の名は【正義】なり』ねぇ……脆いのはどちらなんだろうか……それに……」
ルシアートはバベルを見る。そこには多くの神と眷属が集合していた。
「まだ諦めていないだろうしねぇ……さて、あのチビ【勇者】と色ボケ猪はどうするのやら。ま、とりあえず