原発事故から14年。「放射線による死者はゼロ」健康被害を科学的に検証すると #知り続ける
では、具体的にどのくらいの放射線を浴びたら危険とされるのか。国際放射線防護委員会(ICRP)の2007年勧告によると、累積の被ばく線量が100ミリシーベルトを超えると、がんの発症率が増加することが確認されている。長年の調査研究から世界的に信頼されている基準だが、もとはといえば、広島と長崎の原爆による被ばくの研究が土台だと安村氏は言う。 「広島・長崎の原爆データから推計された線量効果関係は、線量が増えると健康影響の確率が上がるということでした。もちろん、100ミリシーベルト以下なら確実に安全と言い切るつもりはありません。それでも、100ミリシーベルトを超えると集団の中で影響が検出されるレベル、という理解でいいと思います」 前述の県民健康調査では約210万人いた県民全員を対象にしたが、調査に回答したのは約47万人。2ミリシーベルト未満が93.8%で、5ミリシーベルト未満では99.8%、15ミリシーベルトを超えた人は323人だった。 「私たちが調査した範囲では最大でも25ミリシーベルトで、100ミリシーベルトを超えて浴びた人が一般県民の中にいたという報告はありません。国際機関もその点を認めています。外部被ばくについては直接的な健康影響は考えにくい状況です。内部被ばくについても、いろいろな推計を行っていますが、100ミリシーベルトを超える線量の被ばくがあったという報告はないと理解しています」(安村氏)
国のほうも調査や評価を進めてきた。国は福島第一原発事故後の健康管理について、医学的な見地から検討が必要として、2012年に調査をするよう法的に整備した。2013年、環境省に「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」を設置し、医師や放射線など17人の専門家により、14回にわたって会議を開催した。 この会議では、2014年12月に「中間取りまとめ」が発表されたが、そこではこう報告されている。 <今回の事故による放射線被ばくによる生物学的影響は現在のところ認められておらず、今後も放射線被ばくによって何らかの疾病のリスクが高まることも可能性としては小さいと考えられる>