原発事故から14年。「放射線による死者はゼロ」健康被害を科学的に検証すると #知り続ける
「県民健康調査」で見る健康への影響
福島県では2011年から「県民健康調査」を実施してきた。同年3月11日から同7月11日まで「いつ」「どこに」「どのくらいいたか」という問診票によって外部被ばく線量を推計する「基本調査」をするとともに、必要に応じて一般健診の「健康診査」、18歳以下の「甲状腺検査」、「こころの健康度・生活習慣に関する調査」、「妊産婦に関する調査」(2020年度まで)という詳細な4調査を行うというものだ。 2024年度版の同「報告」で、回答率は27.7%。放射線業務従事経験者を除いた約46万7千人の外部被ばく線量の推計で99.8%の人が5ミリシーベルト未満、最高値は25ミリシーベルトだったと公表。次のように評価している。 <この結果については、これまでの疫学調査により、100ミリシーベルト以下での明らかな健康影響が確認されていないことから、4か月間の外部被ばく線量推計値ではありますが、放射線による健康影響があるとは考えにくいと評価されています>
この県民健康調査を疫学的な観点で担当してきたのが、前出の安村氏だ。安村氏も放射線による直接的な健康被害はないとしつつ、次のように語る。 「放射線による直接的な影響で重大な事例はありませんが、事故による間接的な影響はあります。原発事故の影響で、福島県では二十数万人が避難しなければならなくなりました。この避難の過程で、もともと病気を抱える方や高齢者など県民の方々には多大な影響がありました。放射線による健康影響はありませんが、原発事故による影響はそれなりにあったということです」
県民健康調査で2ミリシーベルト未満が93.8%
そもそも、原発事故で大気中に放出された放射性物質は人体にどのような影響を与えるのか。環境省や各種医学的知見によると、こういう仕組みだ。 セシウムやヨウ素といった物質は放射線(ベータ線、ガンマ線など)を出す。その放射線が一定の線量で生体を通過すると、細胞内のDNAに影響を及ぼす。DNAが放射線の電離作用で直接的に広範囲に切断されたり、放射線のせいで発生した活性酸素によって間接的に損傷されたりするのだ。DNAは自然に修復されるものもあり、自然現象としての細胞死で健康に影響を与えない場合もあるが、不完全な修復のまま異常な細胞がつくられると、がんなどの原因となることがある。