原発事故から14年。「放射線による死者はゼロ」健康被害を科学的に検証すると #知り続ける
「放射線での死者はゼロ」
「単刀直入に申し上げて、(原発事故で放出された)放射性物質からの放射線による直接的な死亡が発生していないのは間違いありません」 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センターの安村誠司センター長はこう語る。 「原発事故直後だけでなく、その後の十数年間を考えても、放射線が原因で亡くなった方は、私の知る限り、ゼロです。このことはしっかりお伝えしたいと思います」 安村氏も事故発生当初は放射線に対して恐怖を感じていたという。 「放射線は目に見えないため、精神的な不安を引き起こしやすい。私自身(居住する)福島市内で線量が高くなっていると知ったとき、恐怖を感じました。『ここにいて本当に大丈夫なのか』と悩んだこともあります。その恐怖は、見えず、においもしない放射線の特性によるものです」
放射線量を広域でモニタリングすると、単純な同心円状ではなく、飯舘村などの北西部で比較的高い線量が検出された。事故当時、事故現場では東南東の風が吹いていたためだ。当時の報道記事では、福島市役所前で3マイクロシーベルト(毎時)、飯舘村役場前では8マイクロシーベルトを超えており、森の中の山道では100マイクロシーベルトを超える場所も見られたという。 「放射能汚染」報道は過熱し、その不安は首都圏に住む人々にまで及んだ。雨や風で放射性物質がたまり、高い線量を発する場所「ホットスポット」が、首都圏にあることも報じられると、さらに不安が増強された。当時、首都圏を離れ、西日本や海外に移住した人も珍しくなかった。 放射能に汚染された食品や飲料を摂取することでの内部被ばくの危険性も盛んに報じられた。原子力発電所の事故の指標「INES(国際原子力事象評価尺度)」で、福島第一原発事故はレベル7とされたことも不安を高めた要因だった。レベル7は1986年旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じ水準だった。
政府の対応もさらに不安を招いた。当時の枝野幸男官房長官は連日の会見で、放射能の影響について「直ちに人体(健康)に影響はない」と繰り返した。文部科学省が20〜30キロ圏のモニタリング調査の結果を発表した3月16日の記者会見でも枝野氏は、「365日、24時間屋外でこの数値の場所にいた場合に、問題が出るかもしれないといったレベルで、こうした地域に数日いて人体に影響を及ぼすといった数字ではない」と語っている。だが、こうした発言を素直に信じる人は多くなかった。 あれから14年、放射線による影響はどう評価されてきたのか。