今回ダンジョンへ一緒に潜る冒険者は、全員LV2。メンバーは、前衛兼回復役の俺、サポーターのクラネルさん、鍛冶師のクーリエさんの三人で、純粋な戦闘職は俺だけだ。
そんな俺は、即席パーティーならダンジョン内で組んだことがあるけど、それ以外の経験はない。とはいえお互いにできることを把握しておかないと、何も決められないことぐらいはわかるから、自分から申告して確認を始めた。
「俺は盾を使った戦闘が得意で、守ることにかけては特に自信があります。あとは一応回復魔法も使えます」
「僕は鍛冶師だからね、力は強いよ。けど、戦闘技能といえるほどじゃないかな。ハンマーで叩くだけだよ」
「俺は素早さに自信があるし、この辺ならナイフでそこそこ戦える。得意なのは、道具を使った立ち回りだな。ちなみにだ、逃げ足なら誰にも負けないぜ?」
クラネルさんの話でひとしきり笑った後、お互いの得意分野を考慮して、このパーティーで可能な戦術を相談した結果、一つの方針に落ち着いた。俺が前衛としてすべて倒すのが基本で、場合によってはクラネルさんがフォローし、余裕のある状況だけクーリエさんが追撃する。そういう風に意思統一してから、中層を目指して降り始める。
「とりあえず上層を潜ってきたわけだけど、12層にくるまでは特に問題なかったな」
「戦いながらダンジョンを下る程度のスピードなら、僕もついていけるからね」
「そうですね」
笑顔で返事しながらここまでを振り返ると、いつも通りの見敵必殺で侵攻してきただけだ。出会い頭に殲滅する俺を見て、二人はドン引きしてたけど、安全第一だからね。念のため背後に湧いた場合の対応をお願いしてあったけど、それも余裕がない時だけって決めて俺が対処してきたというのが実情だ。
とはいえ二人の動きは凡そ把握したので、多少のトラブルに見舞われても問題なく対処できるメンバーなんだと十分理解している。
それはそれとして、これからのことを考えると、一度休憩した方がいいかな。
「13層に入る前に少し休憩しましょうか」
「だね、ついていけるっていっても疲れないわけじゃないし」
「ま、休めるときに休んどくもんだよな」
こうして俺達は休憩を取り、備えをしっかり確認してから中層へと足を踏みいれたのだった。
◇◆◇
冒険者は、誰しも最低限の自衛手段を持ってるし、ダンジョンに潜るなら想定した状況には当然備える。そして13~14層で備える物といえば、ヘルハウンド対策の耐火装備である
さて、二人は俺より先にダンジョンを訪れたことのあるLV2冒険者。念のため確認したけど、過去に購入した
俺も今回に合わせて購入したので装備してはいるけど、スキル【拒む者】があるから本来は不要。じゃあなぜ準備したかといえばスキル秘匿のためで、必要以上にステイタスを晒さないのは冒険者の鉄則だし、ゼウス様の助言もあったからね。
「随分前に中層で採掘して以降、まったく潜って無かったんだよね。最初に中層素材を鍛えた時、使ってみて自分の未熟さがよくわかったからさ、上層素材で鍛えてたんだ」
「ということは、扱える自信がついたってことか」
「パーシアスとの付き合いのお陰で、技術が追いついた感じかな。念のため中層素材の在庫を使って鍛えてみたけど、予想以上にいい結果が出た。そうなると量を確保する必要が出てくるわけ」
人に歴史あり、そういう話を含めて色々と会話しながら、クーリエさんの案内で鉱脈を目指す。
「で、鉱脈だろうとダンジョンである以上、モンスターは湧く」
「一人だと作業効率悪そうですよね」
「そうなんだよ。うちのファミリアは鍛冶師ばっかりだし、採掘のためだけに冒険者を雇うとコストが嵩むから」
「こういうのは、いい機会って訳だ」
そして着いた先には、ダンジョンの壁面から突き出し煌めく鉱石。メインルートから外れた場所にはなかなか訪れないから気にしなかったけど、こんな奇麗な場所があることに驚く。
「じゃあ、早速採掘を始めるよ」
「クラネルさんは、クーリエさんについていてあげてください。周辺警戒は俺が」
「任された」
ツルハシの音が響き、掘り出された鉱石がクラネルさんのバックパックを埋めていく。その間、モンスターの一匹や二匹湧こうとも瞬時に殲滅。壁に埋まったまま倒した奴までいたけど、ここ数日で慣れたモンスターが相手だから余裕だった。
「パーシアスが先に進むなら、やっぱり後衛が必要だよな」
「えっと、突然どうしました?」
視線を感じてたから、何が気になってるのかと思えば、突然脈絡のない話が始まる。
「いやなに、ファミリアでダンジョンに潜ってきた俺からすると、お前は前衛として必要な要素は揃ってると思うわけ。でも、深くなると一人の限界があって、その時になってからじゃ遅いんだ」
「だろうね。希少種が出ることもあれば、予想外の事態も起こるのがダンジョン。
確かに、それはそうだろうと思う。実際、インファントドラゴン強化種なんていう希少種にも遭遇したし、少数であれば
「後衛というと、弓とか魔法ですか?」
「できれば魔法がいい、それも広範囲の強力な魔法も持ってる奴。大量のモンスターに囲まれても、詠唱時間さえ凌げれば切り抜けられるからな」
「あとは自衛できる方がいいよね。完全な後衛は、少人数パーティーだと前衛の負担が大きそうだし」
前衛に及ばないまでも自衛できて、広範囲の強力な魔法が使えるって、かなりの腕利きなのでは? まあ、理想はわかるけど、そうそう知り合える条件だとは思えないなあ。
「うーん。たくさんの冒険者に会いましたけど、心当たりはありませんね。15層以降、潜る時に捕まえられるかどうか」
「まあ、しばらくはこの辺で装備更新だよね」
「そういう予定なら、しばらくは安心だな。それはともかく、先輩冒険者のありがたーい助言だから、覚えておいてくれよ」
「はい、お二人ともありがとうございます」
そうこう話してるうちに、クラネルさんの所持限界が近づき、俺達は鉱脈を後にした。
◇◆◇
「稀にしか潜らないのに、なんでやられるかなあ!」
噂をすれば影が差す。その言葉の意味を真に理解させられる。
「まさか本当に
「上層への最短ルートを走ってください! 必然的に通路が細くなります!」
炎が飛んできた時、一瞬だけ【不動要塞】を発動して防ぎながら最後尾をひた走り、追いついてきた奴は切り捨てる。とはいえ上層までは連れていけない以上、どこかで殲滅しないと。なら、そこの曲がり角で!
「ここで殲滅します! クラネルさんは荷物を置いて抜けた時だけフォローを! クーリエさんは自衛で!」
「なるほどな! 曲り角なら一気には襲ってこれない!」
曲がり切った後、少し進んだ先で壁際にバックパックを放り投げたクラネルさんの準備が整い、射線が通らない場所で盾を構える。
視界に飛び込んできたヘルハウンドを下段から一閃、その陰に追従してきたもう一匹は反動を利用した振り下ろしで叩き潰す。その瞬間、殺到するブレスを【不動要塞】で防ぎ、範囲拡大した
「仕切り直します!」
後続に備えながら、チラリと振り向き状況を確認。二人に脅威は迫ってないけど、念のため伝えておこう。
「壁や後ろの注意も怠らないように!」
「一匹ならワザと抜かせろ! 俺がやる!」
「わかりました!」
ここは信頼するところだ。
現れた一匹目を後ろに蹴り飛ばし、二匹目の嚙みつきをカウンターで両断。後続は【不動要塞】で範囲を拡大した
「ま、転がされてる奴にやられはしないさ」
「チャンスがあったから、僕も殴ってみたよ」
「折角ですから、経験値稼いでみますか?」
そんな冗談とも本気ともとれる会話で気を落ちつけつつ、さらなる後続を見て方針を変更する!
「ヘルハウンドはある程度任せます! アルミラージは俺が!」
再びヘルハウンドを蹴り飛ばし、飛んできた斧を盾で防いだ瞬間、絶妙なタイミングで飛び掛かってきたアルミラージの斧ごと
「ふう。それじゃあ、あとは経験値にしましょう」
追いついてきた個体のようで、散発的に襲ってくるヘルハウンドを適当に蹴り飛ばしながら、混ざっているアルミラージを含めた残敵を掃討。宣言通りクーリエさんの経験値を稼いだ俺達は、モンスターの全滅を確認した後、しっかり魔石やドロップアイテムを回収すると、上層へ移動して一時休憩にはいった。
「いやあ、随分久々に戦闘経験値なんて貰ったよ」
「もしかしたらステイタス更新でスキルが得られるんじゃないかって思ったんですよね」
「なるほど。鍛治師向けのスキルが出れば、パーシアスにもメリットありそうだ」
息を整え、会話しながら程々の休憩を取った後で、ゆっくりと帰路につく。それ以降イベントらしいイベントは起きることなく、さっきまでのはなんだったのかと思うほど、あっさりとダンジョンを出ることに成功。正直なところ