昨夜は、回復魔法にスキル効果を拡大して病の治療を試みた結果、体力消費が信じられないくらい激しかった。しかもそんな体調をアルフィアさん達にバレないように合流してから騒いだので、疲労困憊の俺は帰って早々に休んだ。結果、朝寝坊してしまったけど必要経費なのかな。そんな騒がしくも温かく、予想外の出会いもあったお祝いの翌日。
「母さんと同じランクか」
成り立てというのもあるけど、足元に及んだとすら思えない。それくらいあの5年間の輝きは、俺の記憶に焼き付いてる。だからこそ、修練には絶対に手を抜けない。勿論、その気はさらさらないんだけど。そうなるとランクアップの弊害が出てくる。
「さて、困った」
鈍い鋼色の重装備。鍛え続けて上層ではほぼ限界といえる重さなんだけど、今着てみれば軽すぎる。そういうことであれば訪ねる先は一ヶ所のみ。色々相談してみようと向かった先は、勿論クーリエさんの工房。
「今日、何かあったっけ?」
「いえ、相談に乗って欲しいなと。実は……」
ランクアップしたこと、装備が体感で一気に軽くなったこと。それらを説明するといつも通り、うんうんと頷き。
「一応、準備はしてあるよ。中層素材が集まるまでの繋ぎだけど」
「ホントですか!?」
そして、出されたのは……装備の一部?
「キミは、二の腕と腿が生身だったでしょ? あれはね、わざとなんだよ。冒険者の筋力が発達したら、力を込めた時に隆起しやすいのが、この部位でね。初めから窮屈にしちゃうと成長を妨げたり、締め付けることで余計な力みが生まれたりと、あまり良くないんだよ」
腕を曲げて力瘤を作る、確かに隆起するかも。とはいえ他の部位だってそれなりには起きると思うんだけど。聞いてみようかな?
「腕と足は?」
「そこは末端だから守らないわけにいかないし、
成長度合いは、俺にもよくわからないところだ。それにしてもそんな調整まで受けてるとは思ってなかったな。
「とはいえキミが僕の装備を更新しながらずっと使い続けてくれたお陰で、僕自身の新しい技術が生まれてね。これからは最初からでも全身鎧を提供できるようになったんだ。ということで、コレはその試作品だからキミにあげる」
「それはさすがに」
そう告げると、チッチッチッとかいいながらクーリエさんが指を振る。
「君の素材を、僕の技術力底上げのため勝手に使った結果できた物なんだから、遠慮なんかいらないんだよ」
「そうですか? ではお言葉に甘えて」
そういって受け取った俺は、早速装備してみる。確かに腕と足の軽さはほとんど無くなり、さっきよりはいいけど、まだ足りない。
「大分良くなりましたが……」
「だろうねー。まずはさ、今の身体能力と13層に慣れておいでよ。ついでに色々と中層素材を持ってきてくれると次の方針が決められる」
上層の限界を突破するには、やっぱり中層の素材が必要だよね。ここはアドバイスに従って、13層で慣れることにしよう。そうだ、アレも伝えておこうかな。
「そうします。それと別の相談があるんですけど……」
思いついたことをあれこれと話してみる。
「へー、面白そうだね。やってみるよ」
こうして頭部以外全身重量装備となった俺は、一度ホームに戻って練武場で調整。その後、ギルドに申請してからダンジョンへと潜ったのだった。
◇◆◇
いつも通り上層を最短ルートで駆け抜けつつ、身体を装備とダンジョン環境に最適化していく。基本的にはいつもより軽く、どちらかといえば捌く技術を磨き、器用を鍛えるのに向いている状況だ。
「縦穴のことを考えれば、これで良かったかも。さすがクーリエさん」
母さんの本にも書いてあったけど、中層は縦穴で繋がってる階層がいくつもあり、運が悪ければ一気に何層も下ってしまうらしい。
とりあえずは出会うモンスターを撫で斬りにしつつ上層を侵攻。ただでさえランク上昇の恩恵があるのに、取得した発展アビリティ【狩人】の効果で、一度倒したモンスターと戦うと能力に補正がかかってさらに有利。これで苦戦するとしたら、上層から出るべきじゃないだろう。
「さて、13層に着いたけど……」
上層より通路が広くて天井が高い洞窟型のダンジョン。であれば通路の片側によって歩きながらの探索と修練で、基本的には12層と変わらないけど、出現するモンスターが一新されている。
「アルミラージとヘルハウンドか」
13〜14層で冒険者パーティーが全滅する最大要因、通称放火魔バスカビルことヘルハウンド。コイツは、火炎を吐く子牛ほどの大きさの犬型モンスターで、準備無く訪れようものなら火だるまにされ終了だ。とはいえ、以前10層に潜る前に教えて貰ったスキル【拒む者】の効果で、危険な火炎攻撃は無効化されている。少なくてもインファントドラゴンのブレスより危険ってことは無いだろうし、それだけでも安心材料になるかも。
「無理しない様に秘密にしてくれてたらしいけど」
インファントドラゴン戦では、後ろに守るべき人いたから安全を考慮してわざとブレスを受けたけど、知らなかったら知らなかったでブレスのモーションを見極めて吐かせないように戦ったと思う。
「まあ、無謀な行動は今まで通り控えるだけだね」
信頼を裏切るのは本意じゃないし、一人で潜る許可は信頼からくるもの。どちらにせよ、深く潜るにはパーティーを組む必要があるんだろうけど。
「とりあえずは」
ブレスの脅威が無ければただの超大型犬であるヘルハウンドが現れたので、あっさり倒すこと数匹。
次いで、二足歩行であることを除けば、ツノの生えた可愛い白と黄色のモフモフ兎。そのくせ武器の手斧を投擲したり、素早く斬りかかってくる凶暴さ。強化型ゴブリンともいうべきアルミラージは、対人戦闘技能を駆使して駆逐していく。ちなみに身長が、小人族や俺と同じくらいなので、見た目以外は何気にやりやすかったりする。
「ランクアップ効果が高いな」
おそらくランクアップ前のアビリティが振り切った結果も影響してるんだろうけど、中層の脅威は今のところ皆無だ。ただし、油断だけは絶対にしない。油断から階下に落ちたり、窮地に陥るのは冒険者失格だと思うから。
「いつも通りの修練をしよう」
こうしてモンスターの変わらない13〜14層をテリトリーと決めた俺は、しばらくの間、器用と敏捷をメインに鍛えることにしたんだけど……。ピンチから逃走する冒険者を救援・回復して回った結果、予想以上に魔力も上がることとなる。
◇◆◇
13〜14層に潜るようになって数日、もう一つの相談事について準備ができたと聞き、クーリエさんの工房へ伺った。
「おっ、きたね? 相談されたアレ、準備できたよー」
そして手渡されたのは、
「早速試してみますね」
手持ちの盾を手放して、スキル【不動要塞】を発動。
「しっかり認識してますね」
「うん、効果が出てる。使えるね」
盾の物理防御範囲から外れた空間をハンマーで叩いて、しっかり防がれているのを確認したクーリエさんからのお墨付き。これで装備重量を増やすと同時に防御手段を新たに得て、俺達は決断する。
「じゃ、相談を受けた通り、次は僕も一緒に潜るよ」
「はい、モンスターは俺が。鉱石採掘はクーリエさんですね」
そして、荷物はサポーターとして同行してくれるというクラネルさんとパーティーを組んで、一度試しに探索することとなったのだった。
◇◆◇
ステイタス
パーシアス LV2
生身の鍛錬や技術向上を重視し、重量装備で身を固めた盾の扱いを得意とする剣士。
経験からか守護寄りのスキル・魔法を得ていたが、ランクアップによる獲得はなし。
耐久性能に裏付けされた堅実な戦闘を好み、無理無茶無謀は避ける傾向にある。
現在は、ステイタスに装備重量が追いついていないため、より慎重に鍛錬中。
《基本アビリティ》
力 I0
耐久 I0
器用 I0
敏捷 I0
魔力 I0
《発展アビリティ》
【狩 人:I】
《魔法》
【
・詠唱式
・超短文詠唱
・怪我を治し、精神を安定させる特殊階位魔法。
・消費する精神力に応じて効果上昇。
・拒む者による効果拡大可能
《スキル》
【
・望まぬ外因を拒み、影響を受けない。
・現在の対象:病・毒・集中阻害・方向感覚麻痺・炎
・新たな対象:即座に拒み、癒し、対象に加える。
・精神力などを消費し、拒む者の対象を任意でスキル・魔法に拡大する。
【
・消費する精神力に応じて盾の守備範囲を拡大する
・ノックバックを無効化する
・盾を装備している時、装備全体に不壊属性付与する
・拒む者による効果拡大可能