痛いのは嫌だけどダンジョンに挑みたい系男子の英雄譚


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作:しおんの書棚
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冒険者の卵と都市最強ファミリア


出会った相手が良かったのか悪かったのか。
そういえば、まだオリ主の名前出てませんでしたね。


元冒険者に殺されました(・・・・・・・・・・・)

 

 その言葉には、冒険者という存在に幾分失望し、肉親の死を悲しみ、それ以上に守れなかった自分への激しい怒りが籠っていやがった。こりゃ、母親が亡くなったのはごく最近だな。そう思わせるほどに生々しい感情の発露が俺の胸に届きやがる。

 

 そのうえでだ、小僧は冒険者を目指してオラリオ(ここ)にきたわけだ。まさかと思うが……。

 

「復讐とか考えてんのか?」

「元冒険者は母さんが倒してますから復讐する相手がいませんよ」

 

 倒しはしたが深傷を負ってそのままってところか? ポーションを常備してる一般家庭なんかそうそうないだろうしな。それにしてもなんて表情しやがる。関わってしまった以上、さすがに放置できねえな。とりあえずさっきの詫びぐらいはしねえと寝覚めが悪い。

 

「そうか、事情も知らんのに悪かったな。詫びってほどじゃねえが、しばらく俺のところでオラリオに慣れるとこから始めるってのはどうだ?」

「いいんですか?」

「おう」

「それじゃあ遠慮なくお世話になります」

 

 小僧は誘った時点でその気に見えたが、確認をとるだけの常識はあるか。ただのガキって感じじゃねえな、いよいよもって見極めが必要そうだ。

 

「じゃあ行こうか。俺達のホーム、ゼウス・ファミリアへ」

「よろしくお願いします」

 

 おいおい、俺達がゼウス・ファミリアだって知っても態度に変化なしか。このガキ、面白い(・・・)。そう思ったのは俺だけじゃなかったと、後日わかったわけだが。

 

◇◆◇

 

 まあ、普通に驚くだろうとは思ってたが、そこまでか? そう思うほどに小僧はしばらく固まっていた。

 

「どこのファミリアもこんな感じですか?」

「んなわけあるか。うちとヘラ・ファミリアは、オラリオ最強を競ってる派閥だから眷属も結構多くてな、結果としてこうなったってわけだ」

 

 俺にとっては見慣れた景色だが、まあデカすぎだろうよ。そんなうちのホームを見て、やっとガキらしい表情を見せたな。

 

「最強ですか?」

「おう、最強だ」

 

 なにやら考え込んでいるが、刺激になりそうなとこにでも連れてくか。そう思った俺は、練武場へと足を進める。近づくにつれて剣戟が聞こえてきたが、小僧も気になるようだな。

 

「そういえばお前、名前は?」

「パーシアスです」

「いい名前だな、俺はマキシムだ」

 

 少し表情が明るくなる。名前を褒められて気分を害する奴は、親がゴミだったケースくらいだ。あれだけ想えるなら、普通は誇りに思ってるだろうよ。それにしてもパーシアスときたか。こりゃ、ここに来るべくしてきたか?

 

「さて、ここが最強の眷属達が鍛錬する場だ。おう、調子はどうだ?」

「「「「団長! お疲れ様です!」」」」

「続けろ」

「「「「はい!」」」」

 

 さすがに俺が団長とまでは思ってなかったらしく目を白黒させてたが、鍛錬という名の戦闘を食い入るように見てる。さて、どうするか……。そうこう考えていた俺に小僧が向き直ると話しかけてくる。

 

「我儘をいっていいですか?」

「なんだ」

神の恩恵(ファルナ)の力を体験させてください」

 

 あれを見て怖気づかない度胸、外でそれなりにやってきた自負。本当に面白いガキだ。ここはルーキーとやらせてみるか。

 

「装備はどうする?」

「借りれるなら訓練用装備でお願いします」

 

 それからルーキーを呼び出し、訓練中の奴には場所を開けさせる。これがいい経験になるかどうか、それはパーシアスの力量にかかっていた。

 

 どちらにとってもな(・・・・・・・・・)

 

◇◆◇

 

 パーシアスは、訓練用装備からラウンドシールドとショートソードを選び、若干重そうにしながら開始に備える。対してルーキーは、ロングソードを肩に担いで余裕の表情だ。

 

「いいか、ルーキー。相手は神の恩恵(ファルナ)もない一般人だ、殺すなよ?」

「わかってますよ、団長」

 

 そんなやり取りに団員が大笑いする中、パーシアスを見れば苦笑。萎縮してるように見えるが、さて。

 

「やれるか」

「……勿論です」

 

 考えはあるわけだ。ならあとは見るだけでいい、ヤバくなったら俺が止めればいいだけだしな。

 

「じゃあ、いくぞ。はじめろ!」

 

 歩きながら間合いを詰めていくルーキー、パーシアスは盾を構えて亀になっている。ステイタスからいって当然ともいえる状況だが、冒険者じゃない人間の行動としてはどうだろうな。

 そうこうしてるうちに間合に入ったルーキーは無造作にロングソードを振い、盾に叩きつけると嫌な音が響く。剣撃に押されたのかパーシアスが下がり、また歩いて間合を詰めたルーキーがもう一度叩きつけ、再度パーシアスが下がる。

 

「なるほど、よくわかりました」

「わかったか、じゃあ終いにしようぜ」

「いえ、続行です」

 

 ハッ、あのガキ、誘ってやがる。ルーキーにしたら舐められてると思っただろうよ、だから次は今まで以上の一撃になるはず。

 

「守れてると勘違いしてるのか? 加減してやれば調子に乗りやがって!」

 

 そういった瞬間、ルーキーは今まで以上の一撃を叩きつけた、かに見えた。だが、剣は盾に逸らされ地面に刺さり、盾の攻撃(シールドバッシュ)でルーキーの顔面をぶっ飛ばす。そして、そのまま……。

 

「そこまでだ!」

 

 ルーキーの腕を持って、パーシアスの体重(・・・・・・・・)を支える。なぜなら、パーシアスは顔面を殴られて倒れようとしてるルーキーの腕に全体重をかけて壊そうとしたからだ。確かに不意の関節技なら力が抜けて、ステイタスを無視できることもあるだろうよ。だが、実際にやれるかといえば、普通は無理だ(・・・・・・)。しかし小僧はやってみせた。つまりそれを実現できるだけの戦闘理論と技術がすでに存在してる証拠。

 

「いい経験なったな、ルーキー。神の恩恵(ファルナ)を得て、強くなった気でいたか?」

「油断しなければ「勝てたとでもいうつもりか? 最初から罠に嵌められてたと気づかないお前が?」え?」

 

 装備をまともに扱えないフリで油断を誘う。

 受け止められるのに衝撃を殺すため態と大袈裟に下がる。

 冷静さを発揮させないように挑発する。

 誘導された強撃を捌くことでバランスを大きく崩す。

 剣を捨てて腕を引きながら顔面に盾で攻撃する。

 引いた腕を掴んだまま飛びつき腕十時(関節技)で腕を壊しにいく。

 

 そうやって一つ一つ説明してやれば、馬鹿でもわかる。自分がいかに愚かだったか、調子に乗っていたかが。そして、その逆をいく者の強さも。

 

「お前……、普通に扱えたのか?」

「ええ。狼や猪、外ではありますがゴブリンも倒してますから」

「つうことでだ、神の恩恵(ファルナ)もステイタスもいいが、純粋な技術が無けりゃこういうことが起きる。全員覚えとけよ」

「「「「「はい!」」」」」

 

 期待に応えたか。それもこれも師匠の存在と本人の努力があってこそだ。そういえば最初に気になったのは年齢だったな。

 

「パーシアス、お前いくつだ?」

「9つです」

「いい師匠をもったな」

 

 そういった俺に今日一番の笑顔で返事をしたパーシアスをみて、俺は少し安心した。まだ引き返せるときに出会えたのも、ここにいてもいい想像以上の強者だったことも、神の思し召しというやつかと思いながら。

 

◇◆◇

 

 元冒険者の母親を師に持ち、教えに従って技術の独自改良・進化を続けるパーシアスは、4才より始めた訓練を5年継続する努力の天才。今後も継続する気満々である。

 痛いのは嫌だといいつつも、痛みのある訓練すら続けてきたため、それなりの痛覚耐性を持つ。無手で戦えるのがその証拠。

 

《戦闘技術》

【ショートソード】

 重点的に鍛錬

【ナイフ】

 上記に次いで鍛錬

【ショートボウ】

 先制攻撃特化

【ラウンドシールド】

 受け、捌き、攻撃技能あり

【無手】

 突き、受け、捌き、投げ、関節技、歩法




さらに燃料(高評価)が投下されたので、早々に更新します。
頭ゼウス・ファミリアなら弱さは許さないので、フレイヤ・ファミリアほどじゃなくてもシゴキはあるかなという私見。

次は、オリ主パーシアス君視点の予定。

アクルカさん、凰牙さんは高評価、路徳さんは評価ありがとうございます。
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