痛いのは嫌だけどダンジョンに挑みたい系男子の英雄譚


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作:しおんの書棚
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第1章 若すぎる冒険者志望の歩み
冒険者になりたい


プロローグに向けて、まずは幼少期です。



 この世界には多くの英雄譚があって、彼らは必ずといっていいほど特別な冒険をする。俺は物心ついた時から数多くの英雄譚を婆ちゃんから聞いて、母さんと一緒に本を読んで、冒険がしたいと思った。初めて聞いた物語はなんだったかな……。ああ、始まりの英雄アルゴノゥトだ。印象的だったのは剣の覇者アルバートかな、他にも色々とあったけどとにかく冒険に凄く憧れたんだ。

 

 そして知ったのは、現代の英雄達が集う迷宮都市オラリオとファミリアに所属する冒険者達の存在。俺の憧れを実現できる場所はそこだと思った。

 

 冒険者。彼らは様々な武器を操り、魔法を唱え、モンスターを倒しながら迷宮の探索(冒険)するのが仕事であり、最も厳しいけれど裕福になるのも現実的な職業らしい。なら目指す地はオラリオ。まずは、そこで冒険者になって、迷宮(ダンジョン)で生計を立てる。そのためには強さが必要だ。

 

 神の時代といわれる現在、神の恩恵(ファルナ)を刻むだけで強さを得られる。経験値(エクセリア)を得てステイタスを鍛えればさらに強くなれるけど、それは冒険者なら誰でも同条件で、本当の強さじゃないって母さんに教えられた。必要なのは古代のような能力、つまり神の恩恵に関係なく発揮される技術を身につけた戦士になることなんだって。

 

「戦士にはなる。でも痛いのは嫌だから、できるだけ痛くない方法で迷宮を探索したいな」

 

 防具をつけていても殴られれば痛いものは痛いから、攻撃されないで一方的に攻撃したい。それだと弓や魔法みたいな遠距離攻撃になるけど回数制限があるし、攻撃されたら鎧がない分もっといたい。

 

「遠距離は向いてないかな」

 

 じゃあ相手の攻撃を躱して、攻撃するとか。全部躱せればいいけど、ミスしたらすごく痛い。躱し続けるのも現実的じゃないから、躱せなかった時の保険があればいいのかな。ということは、防具以外で攻撃を防げればいい。

 

「盾だ」

 

 そうと決まれば武器は軽めで取り回しのいい物にしよう。棍棒とか短槍とか短剣・片手剣あたりかな。

 

「短槍はないかな」

 

 大きい盾なら守りながら槍で突けば痛くないけど、小さな盾だと凌ぎきれないし、短槍はいろいろと中途半端になりそうだ。突く攻撃は点だから当てるのも難しいし、投擲できるのはメリットだけど凄く難しいよね。

 

「ショートソードとメイスでいこう」

 

 切った方がいい相手と、殴った方がいい相手がいるって英雄譚に書いてあったのを思い出した。これで装備は決定。

 

 戦い方は、回避してから攻撃すれば当てやすいと思う。けど、絶対当てられるわけでもないから、盾で防ぎながら隙を狙うのが安全確実で一番よさそうだ。なら、そういう訓練をしよう。

 

「盾と剣の代わりを準備しなきゃ」

 

 それに冒険もいいけどなによりも大切なのは、俺の家族を守ること。将来はオラリオに移住して楽させてあげるにしても、それまで守られてるだけじゃダメだよね。今すぐは無理でも狼やゴブリンくらいは倒せるようにならないと。

 

「婆ーちゃーん!」

「どうしたんだい?」

 

 婆ちゃんはニコニコしながら俺の話を聞いて応援するといってくれたのが嬉しくて、それが4才の俺が立てた初めての目標だった。

 

 ◇◆◇

 

 最初に手にした装備は壊れた鍋蓋の盾と枝の剣。そして最初の訓練は、木の枝にロープで吊るした的を叩き、戻ってくる的を盾で防いではまた叩く。そんなゴッコ遊びのようなもの。

 

 日に日に的を増やし、工夫して複雑な動きをする的と戦った。力の入れ具合や抜き加減を学び、目の使い方や体の動かし方を身につけていくと、俺の本気が伝わったのか元冒険者の母さんが色々協力してくれるようになった。

 

 盾は鍋の蓋から、それを修繕した木の盾(バックラー)になり、板を貼り付けて年々厚みと重さを増した木の盾。それをさらに加工して壊れた鍋を貼ったラウンドシールド。剣は木の枝から木剣になり、重さと強度を増した的に合わせて刃の潰れた折れた剣で訓練を続けて、実戦用に刃渡りの長いナイフも常備するようになった。

 

 訓練の成果も上々で、盾での攻撃(シールドバッシュ)盾での突進(シールドチャージ)を自然と身につけて、ナイフの扱いも上手くなった頃、イノシシと戦い初めて奪った命は忘れられない。

 

 そして家畜を守るために狼と戦い、何度もイノシシを仕留め、稀に現れるゴブリンを倒した。母さんからは対人戦も含めた冒険者としての多くを学び、日々精進していた俺だったがとある事情から予定よりかなり早くオラリオへ向かうことになる。

 

◇◆◇

 

「冒険者になるなら、ファミリアに所属してから神の恩恵(ファルナ)を受けて、ギルドに冒険者登録するのよ」

 

 そう母さんから教わっていた俺は、ギルドの場所を確認した後、オラリオの象徴とも言える50階建ての摩天楼施設バベルに向かう。その地下にダンジョンを抱えるバベルを見ておくのと同時に、ファミリアを探すある方法を試すために。

 

「おい、坊主。一人で潜るつもりか?」

「いいえ、今オラリオについたばかりで、場所を確認していました」

 

 ダンジョンから出てきた冒険者の一団。その中で一番前を歩いていた男に声をかけられる。

 

 俺の年齢は9才で、身長は135セルチ。そんな明らかに子供とわかる俺が、一端の装備をしていれば気にもなるはずとここにきたけど正解だった。パーティーメンバーと思われる全員がなんともいえない表情で俺を見てるけど、それを狙ってた俺は気にしない。

 

「随分整った装備だ」

「母さんのお下がりです。山で狩猟生活してたので、少しだけ使える程度ですが」

 

 ほーとか、へーとかいいつつ誰も納得していない。そしてガリガリと頭を掻きながら、苛立ちを隠す気もなく最初に話かけてきた男が吐き捨てるようにいった。

 

「何考えてんだ、その親はよ!」

元冒険者に殺されました(・・・・・・・・・・・)

 

 思わず口走った言葉、そこには少なくない失望と悲しみ、激しい怒りが籠っていたと後で教えられたんだ。

 

◇◆◇

 

 元冒険者の母親が現役時代に使用していた装備を、サイズ調整できるように加工した物で、母親の形見。同じスタイルに辿りついた息子が可愛くて仕方なかったらしく、これらの装備を前提とした重さの訓練着すら与えていた。

 技術向上の妨げにならない配慮がされており、母親から告げられるまでその存在すら知らなかった。

 

《装備》

【ショートソード】

 ミノタウロスの角で作られた黒い剣。耐久力増加効果あり。

【ボディプレート】

 中層で取れる素材を用いた一般的な装備。レザーアーマーの上に装備する。

【アームガード】 

 同上

【レッグガード】

 同上

【ラウンドシールド】

 中層で取れる素材のうち耐久力に秀でた素材で作られた盾。ノックバック耐性あり。

【レザーアーマー】

 中層で取れる革素材で作られた一般的な装備。

【グローブ】

 同上

【バックパック】

 同上

【ナイフ】

 祖母からのプレゼントで形見。オラリオ外の店売り品であり、迷宮での戦闘には向かない。




燃料(高評価や感想)が投下されて勢いよく一万字くらい書いたのですが、誰得の内容だったので、ほぼ消して書き直したら、思いのほか短かったけど更新します。

次は、謎の冒険者視点の予定。

marbleπさん、飛翔蝸牛さん、坂本真人さん、高評価ありがとうございます。
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