痛いのは嫌だけどダンジョンに挑みたい系男子の英雄譚


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作:しおんの書棚
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プロローグ
最後の三大クエスト『隻眼の黒竜ジズ』


ダンまち、初投稿です。
お手柔らかにお願いします。


 迷宮都市オラリオが誇る2大ファミリア、ヘラ・ファミリアとゼウス・ファミリアは、千年以上もの間、最強を誇っていた。

 

 レベル9に至った我らがヘラ・ファミリア団長【女帝】。

 レベル8でありながら強さでは【女帝】を上回るゼウス・ファミリア団長マキシム。

 

 彼女らが率いる数人のレベル8冒険者と私を含むレベル7冒険者。そして多くのレベル6以下冒険者というオラリオ最大戦力をもって最後の三大クエストであり人類の悲願『隻眼の黒竜』討伐に挑んだのだが、激戦の最中、【女帝】を失った我らは絶体絶命の危機に瀕していた。

 

「マキシムさん! アルフィアさん! 引かないと全滅する!」

 

 災禍の怪物だの【静寂】のアルフィアなどと呼ばれ、戦闘においては上から数えた方が早いどころか【女帝】とも渡り合える私だが、事ここに至っては可能な範囲を助け他は見捨てる以外に撤退する術を持たない。相手が黒竜ほどの力を持った存在でさえなければまだ救えただろうが、マキシムがいようとも焼け石に水だ。

 

「チッ、これ以上はさすがに持たねえか。気に入らんが……」

 

 現状の過酷さは、片腕を失ったマキシムが身に染みてわかっているはずだ。たしかに引き時ではあるだろうな、このままではどうあっても勝ち目はない。

 

 序盤で危険になった者が数人退避してはいる。しかし、なんとか命を繋ぎ戦っている冒険者を率いて撤退するにはあまりにも厳しい。誰かが撤退すれば、バランスが崩れて誰かが死ぬ。それほど過酷な戦況を手負のマキシムが鼓舞し、辛うじて凌いでいるのだ。

 

 悔しい限りだが撤退を受け入れるよりないと、堅牢な防御を誇る彼の背に降り立った私は、黒竜を牽制しながら訪ねた。

 

「……手があるのか?」

「俺の魔法で黒竜を一時的に止めます!」

「アレか、確かにアレなら……」

 

 思わず目を見開いた。これだけの戦力をもってしても想像すらしなかった被害を受け続けている黒竜を、一時的にとはいえ一人で止める。そんなことが可能なのか。いや、効果を知るだろうマキシムが可能だと判断しているあたりできるのだろうが……。とはいえ、なぜ今まで使わなかったのか。私の雰囲気を察したのだろう彼は話を続ける。

 

「一度使ったら、24時間のインターバルが必要なんです」

「だが、効果は絶大という訳か」

「仕方ないか、状況は作ってやる!」

 

 頷く彼。

 それだけの制約があるならば、想像を容易く超える効果なのだろう。当然、今のような最悪の状況に備える意味で簡単には使えんし、消費する精神力も相当なはず。先のベヒーモス戦でレベル7に至った護ることにかけてはオラリオ一の彼らしい魔法、そのような運用になるのも納得できる。

 

 なぜなら彼の配置は前衛最後尾。いかなる状況であろうとも彼の後ろは信頼できる安全圏であり、前衛の危機に割り込み、場合によっては前線が崩壊しかねない状況からでも立て直すための時間を作るのが彼の役目。

 

 【女帝】が倒されたのは何某か理由はあったのだろうが、それでも不可解と感じるほどの隙を見せ、そこを黒竜につかれた結果だ。最低でも長文詠唱であろう魔法では時間的に間に合わなかったし、効果範囲だったかも怪しいところだしな。

 

「スキルで防御しつつ、詠唱を始めます!」

「では魔法が発動次第」

「撤退だ!」

 

 私は彼への信頼に加えて、マキシムの言葉もあり納得した。いや、言い訳はすまい。自分の意志で、その策に乗ったのだ。

 

「頼んだぞ」

「任せてください!」

「野郎ども! 死にものぐるいで時間を稼げ! クソ竜に一泡吹かせるぞ!」

 

 マキシムの一声に奮闘している前衛が士気を向上させ、私達が戦闘に復帰すると同時に詠唱が始まる。

 

「我は護る者、我は阻む者、我は選ぶ者」

 

 黒竜の気を引いて少しでも被害を減らし、彼には絶対に近寄らせない。

 

「汝を護り、汝を阻み、汝を選ぶ」

 

 詠唱を妨げられぬように全力でフォローしていた私の目にうつったのは、淡く光る魔法円。それを起点に半透明のドームが現れ、彼と黒竜を覆うように展開される。

 

「空間は閉じる。導かれし庇護者は外にあり」

 

 詠唱が進む中、気がつけば私を含めた冒険者達がドームの外にいた。そこから見れば半球上の結界魔法に見えるが、詠唱中であるにも関わらず効果を発揮する魔法など聞いたこともない。数多くの魔法を知る私が、まったく聞き覚えがないなどあまりにも特殊すぎる。

 

「隔離せよ、幾重にも隔離せよ」

 

 詠唱ごとにドームの透明度が落ちていく。この魔法は、準備段階で対象を選び、望んだ状況を作り出す結界なのか?

 

「縮小せよ、我が意に従い縮小せよ」

 

 透明度を落とした結界は縮小し、黒竜の動きを妨げているようだ。結界の中はほとんど見えなくなったが、彼の詠唱と暴れているらしい黒竜の咆哮や大地の砕ける音が響く。

 

「時、来たれり」

 

 術者が許さぬ限り何者も通さず、何者も出られない結界。ならば今の私達の状況からいって、彼が簡単に解除することはないだろう。いや、そもそもの話、これだけ強力な結界にリスクがないなんてことがありえるのか?

 

「隔絶せよ! 加護宿す主神の盾(ブレッシング・アイギス)!!」

 

 音が消えた。中は見えず、何も聞こえてこない。完全に遮断された結界の完成に気づくのが遅すぎたと自責する。月のように淡く輝き、何者をも通さない白き結界を前にして、しばし唖然としたが思い出す。そうだったな、魔法が発動したら……。

 

「結界が維持されている間に撤退する、急げ!」

「てめえら、引くぞ! 時間を無駄にするな!」

 

 後悔するのは後にしろ。彼の献身に応えるためにもこれ以上の被害だけは出すまいと誓った私は、後髪引かれる思いを必死に堪えながら撤退したのだった。

 

◆◇◆

 

 我らは負けた。彼のいうとおり、いつ全滅してもおかしくないほど圧倒的だった黒竜に、これといった痛手すら与えられずにだ。

 

「よくもここまで生き残れたものだ」

「アイツが命張ってんだ、当たり前だろうが」

 

 振り向けば、片腕を失ったマキシムの姿が。こんな時だというのに相変わらず腹立たしい態度の男だが、先程の発言は純然たる事実。

 

「そうだな……」

 

 我らを逃がすために一時とはいえあの黒竜を足止めする、それも一人でという難行にして偉業。それを確実なものとするため彼は命を捧げた……。いや、待て。何か違和感がある。なにが原因だ? 情報が足りんな、そこを埋めるべきか。

 

「マキシム、あの魔法の効果は?」

「あれは加護ありきの結界ってやつだな」

「なに?」

 

 マキシムから語られたありえないほどの効果。まあ、精神力消費が尋常ではなく、相手に応じた技量がなければ無用の長物ではあるが、発現したのが彼なら話は別だ。ともかく、それが意味するのは。

 

「生きてるんだな?」

「ああ、生きてるぜ。護衛付きでキャンプまで出張ったゼウスの爺のお墨付きだ」

 

 彼の盾捌きや耐久性能はオラリオ一。我らが戦っていた間、彼は怪我といえるほど大きな傷は負っていない。であれば加護により格段に能力向上した彼が、幾分とはいえ能力低下した黒竜を抑えることは可能なはずだ。

 

「迎えに行きますかね、団長」

「クラネルか」

 

 妹のメーテリアに付きまとう男、クラネル。知らぬまにメーテリアはコイツの子供を身籠っていた。今も戦っているだろう彼のおかげで姉妹共々、病を克服しつつあるが無理をさせおって!

 

「役に立つのか、お前が」

「黒竜の巣まで戻るにしても人数は連れてけないでしょう。マナ系ポーションの在庫はあるんで精神力回復し放題ですよ?」

 

 なるほど、怪我人は可能な限り早くオラリオに戻して、少人数で迎えに行くのが最適解か。

 

「黒竜以外なら俺と【静寂】、オマケにクラネルがいてもいけるだろ?」

「合流できれば、彼が加わってバランスも取れるな」

「準備はできてますよ」

 

 その後、我らを除いたメンバーへ準備でき次第帰還するようにマキシムが指示したあと、疲弊していた彼らは重い足取りで帰還準備を始め、それを確認した我らも再び黒竜の巣を目指して歩き出したのだった。

 

◆◇◆

 

 竜の巣を再び踏破するのは、それほど難しいものではない。クラネルは足が異常に速く、逃げ回るだけならオラリオ一。マキシムは隻腕となったが、その程度で戦えなくなるほど柔な男ではない。当然、私はまったく問題ない。さらにいえば我らの移動速度は極めて速く、そうするために選んだ最小人数のメンバーだ。

 

「リハビリにはちょうどいいな!」

 

 そう語るマキシムは、崩れたバランスを逆用して邪魔な飛竜を切り捨てる。さほど心配していなかったが、早々に慣れたこと自体はいいことなのだろう。

 

「相変わらず無茶苦茶な男だ」

「団長ですから」

「どういう意味だ?」

 

 彼の無事を早く確認したい。その想いが竜の巣を下る速度に現れてはいたが、適度な緊張感と精神の安定を図るために会話しながら進む。不安がまったくないわけではないのだ。

 

「撤退してからキャンプまで鈍足で1時間、下り始めて30分といったところだが……」

「いつまで結界の中にいたか、今もいるのかわからんが、一人ならあいつは撤退できるはずだ」

「ここは一本道だし、行き違うなんてこともないでしょうしね」

 

 確かに。そうこうしながらも高速で下り続けることさらに10分。

 

「噂をすれば、だぜ?」

「なに担いでんだ、あいつ」

「ふっ、まさに難攻不落(アンビータブル)、その二つ名ですら不足か」

 

 大きく手を振りながら駆け寄ってくる彼を見つけた私達は、その元気そうな姿にようやく安堵したのだった。

 

◇◆◇

 

「それで、黒竜はどうなっている?」

 

 非常に気になる物を担いでいるのだが、まずは黒竜の状況から尋ねるべきだろう。

 

「黒竜の左半身をすぐには使えないくらい破壊してから、隙を見て撤退しました」

「なっ、それが切り札か?」

「はい」

 

 唖然とした。切り札があるとは聞いていたが、そこまでのものか。そんな感想を抱くも、私より魔法の効果を詳しく知るマキシムが続ける。

 

「ありゃ、マジでヤベーからな。一騎討ちで使われようものなら死ねるぜ、当たればの話だが」

「団長でも死ぬって、どんな切り札なんだか」

「状況が限定されますし、当たりませんよ」

 

 苦笑いしながら彼はそういうが、黒竜に甚大なダメージを与えたのは事実。

 

「つまり担いでいる素材は……」

「はい、翼爪に大きな翼膜がついてたので」

「マジか、そいつはシャレにならん素材だな」

「で、さっきの話の証明にもなると」

 

 素材それだけで、翼を切り裂き相当の痛手を負わせたことは証明できる。聞いただけでは信じがたくとも、一部とはいえ漆黒に染まる巨大な素材は見るものを圧倒するだろう。

 

「あの黒竜とタイマン張って、そこまでのダメージを与えたのは世界でもお前だけだ。確実にランクアップできるだろうよ」

「それより一人でも多く生き残ってくれたことのほうが嬉しいです」

 

 ああ、彼はそういう人間だったな。普段は態度の悪いマキシムが、破顔して彼の頭を撫で回す。それを見ていた私とクラネルもその輪に加わった。その後、予定通り4人パーティとなった我らはあっさりとキャンプへ辿り着き、なぜか残っていたゼウスと合流してオラリオへと帰還したのだった。

 

◇◆◇

 

ステイタスの一部公開

 

 ゼウス・ファミリアに所属する16才の男性で、二つ名は難攻不落(アンビータブル)。盾による防御に秀でており、極めて高い耐久性能を誇るため、集団戦闘において生命線を担うことが多い戦士。

 陸の王者ベヒーモス戦はゼウス・ファミリアとして、海の覇王リヴァイアサン戦には耐久性能に目をつけた【女帝】の要請を受け参加。最後となる隻眼の黒竜ジズとの戦いにおいては、全滅しかねない状況を打破するため結界に閉じ込めたジズと一騎討ちを敢行。左半身に甚大なダメージを与えるも、討伐は不可能と判断し撤退した。ある意味では冒険しない冒険者の鑑、ギルドの受付嬢もニッコリ。

 

LV.7

《基礎アビリティ》未公開

 

《発展アビリティ》

【狩 人:E】

【堅 守:D】

【魔 防:F】

【精 癒:G】

【治 力:H】

【治 癒: I】

 

《魔法》

【加護宿す主審の盾】(ブレッシング・アイギス)

 発動時、敵対者の脅威度に応じた精神力を消費(最大50%)し、時間が経過すればするほど術者が有利になる結界を構築する。

 

・詠唱式

 始節 「我は護る者、我は阻む者、我は選ぶ者。汝を護り、汝を阻み、汝を選ぶ」

 二節 「空間は閉じる。導かれし庇護者は外にあり」

 三節 「隔離せよ、幾重にも隔離せよ」

 四節 「縮小せよ、我が意に従い縮小せよ」

 終節 「時、来たれり。隔絶せよ、加護宿す主神の盾(ブレッシング・アイギス)

 

・詠唱段階効果

 始節 初期範囲設定。

 二節 空間閉鎖。結界内外の対象選択は任意。

 三節 結界を多重展開し、強度超向上。

 四節 結界を縮小し、消費精神力抑制。縮小範囲は任意。

 終節 空間を断絶し、結界完成。

 

・効果

 結界が維持される限り、下記の効果を得る。

 ①自身のステイタス、超高補正。結界維持経過時間に応じて、さらに上昇。

 ②敵対対象の能力、超低下。

 ③未公開

 ④未公開

 

・追加効果 未公開

 

《スキル》未公開




楽しんでいただけましたでしょうか?
感想などお待ちしております。

PS.アルフィアはもちろん、マキシムのエミュも怪しいですがご容赦ください。
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