ゼウスとヘラの最後の眷属がダンジョンに舞い戻るのは間違っているだろうか


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作:ヒーラー
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1 眷属


 フィリオは一応の礼儀としてヘルメスの元を訪れていた。ファミリア辞めますと伝えて、最後の上納金を納めた。これで義理はなくなって新しいファミリアに所属できる。

 用事が済んでフィリオはバベルに向かう。ベルもそこに居て、目的地もバベルの頂上だ。ヘファイストス・ファミリアのテナントに向かい、白髪という珍しい髪色の少年を探し、そこで一式装備を整えたベルと合流できた。

 ベルの装備は胸当てに冒険者用のブーツ、それに手甲と軽装備ながら守るべき場所は守っているような装備だった。不安なのは頭だけだが、頭装備は中途半端に壊れると視界が奪われるのでなくても良いとフィリオも判断した。

 

 装備が揃ったらやるべきことは一つ。恩恵を貰うことだ。今回相手の女神がファミリアの本拠(ホーム)ではなくバベルの頂上にいると視線でわかっていた。正確には豊穣の女主人で食事をした後にそこにいるとわかったのだが、そこまでフィリオはベルに伝えない。

 ベルには事前に相手の女神がどんな神格か伝えてあったことと、ファミリアの性質と一般的なファミリアや神のこと、そして冒険者にとっての常識もある程度は詰め込んである。

 だからここから先はベルの運次第だろう。どこまで強くなれるか、魅了に陥るのか。

 アポイントはヘルメスを通じて取っていた。そのため本来は護衛のはずの猫人が舌打ちをしながら招き入れる。

 

「帰ってきたと思ったらまた拾い物をしてんのかよ」

 

「そう言うな、アレン。アーニャは元気か?」

 

「知らねえよ」

 

「そうか。悪いことを聞いたな」

 

 そんな短いやり取りをして中に入る。最上階の奥には数段高いその神専用の在り処として玉座が鎮座していた。

 その玉座に腰を掛け、足を組んで座っている存在は彼女しかありえない。

 女神フレイヤ。

 武の意味でも最強のファミリアを率いる君臨者。その上、美の女神としても最上級の格と美しさを兼ね備えた存在。

 老若男女、人間も神も問わず魅了する存在。その美しさにベルは耐えることができるのかフィリオは見守ることとした。

 フィリオは敬意を示すように片膝を着く。ベルも慌てて同じように膝を着いて頭を垂れた。その様子にフレイヤは微笑む。

 

「ようこそ、フィリオ。そして兎さん?あなたの名前を聞かせてくれるかしら?」

 

「は、はい!ベル・クラネルと申します!フレイヤ様‼︎」

 

「あら?あなた、初見の私の魅了にかかってないわね。私は美の女神失格ということかしら?」

 

「い、いえ⁉︎とても美しいです!僕が出会った女の方の中で、一番に!」

 

 ベルはフレイヤのからかいに馬鹿正直に答える。

 魅了にかかっていないのは事実だが、顔を赤らめて照れているのは事実だ。

 フレイヤはその(かんばせ)もそうだが、豊かに育った双丘も腰の細さも肌の白さも力強い瞳も感じるカリスマさえも、何もかもが究極だった。これ以上の傑物はいないだろうというほどの神格。

 その存在が放つオートの魅了に、ベルは耐え切った。

 

「フィリオ。あなたが何かをしたわけではないのよね?」

 

「ええ、特には。おそらく神ヘラのお節介でしょう」

 

「……そう。それは喜ぶべきなんだか、悲しむべきなんだか。じゃあその子がヘラの最後の眷属なのね?」

 

「はい。恩恵こそ貰ってはいませんでしたが、アルフィアが死んだ以上血縁としても彼が最後の眷属です」

 

 ベルは母親がヘラ・ファミリアに所属していたと聞いていた。そしてその母を除きヘラ・ファミリアは全滅したと。子供もいなかったことからベルは正真正銘最後の眷属だった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ヘラの子を私の元に連れてくるなんてどういうつもりなの?ゼウス最後の眷属(フィリオ)

 

「あなたの責務です。この都市で最強なのでしょう?黒龍討伐はあなたの両肩にかかっている」

 

「ロキは頼らないの?」

 

「今はあなたの方が強い。それに()の体は一つです。ベルも育てなければならない以上、二つの派閥に手を貸す余裕がありません」

 

「そんな理由で改宗しに来た子供は初めてだわ……。まあ、あなたという戦力が手に入ったことを喜びましょうか。背中を見せて?」

 

「はい」

 

 フィリオは戸惑うこともなく上半身の服を脱ぐ。そのまま背中をフレイヤに晒し、フレイヤは神の血(イコル)を流して更新を始める。

 これでもうフィリオはフレイヤの物だ。

 

「ステータスは書き出す?」

 

「いいえ、結構です。神ヘルメスに見せていただきましたから」

 

「そう。じゃあ次はベルね」

 

「は、はい!」

 

 ベルもここで服を脱ぐべきだろうかと思案するが、それをフィリオは止める。もう彼はフレイヤの眷属だ。

 なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「待て、ベル。()()()はとても大事なことだ。繊細なことだし、私のように血を流すだけでは終わらない。うつ伏せになる必要があるからソファやベッドの上が適している。神フレイヤから()()もあるだろうからそう急くな」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「ふふ、謝らないで?じゃあベル。私の部屋に行きましょうか」

 

 フレイヤが手を取ってベルを奥の部屋に連れて行く。

 そこでナニがあるかフィリオはわかり切っているが、わかっていてフィリオはフレイヤにベルを捧げた。

 恩恵ももらえる。美味しい想いもできる。良いことづくめだろう。

 今は可愛い兎が美の女神に食べられてしまうだけだ。フィリオはベルが強くなればどんな存在と情愛を紡ごうが気にしない。

 フィリオはそのまま団長であるオッタルの元を訪ねる。これからの方針を話し合うためだ。

 

「君達は不服に思うかもしれないが、正義を名乗ってもらう。殉職した正義の意志を仮初めでも良いから住民に見せつけてもらうぞ」

 

「……あのお方はお前の言葉を聞き入れると仰った。だが、お前がたとえ()()()()だとしても団長はオレだ。最終的な判断ではオレに従ってもらう」

 

「ああ、それで良い。私はあくまで支援者だ。君達の上に立つ気は毛頭ない。……だが、アルフィアを倒した正義の眷属の代わりくらいは果たしてもらう。今も残っている不和の種、それくらいは消し去ってもらうぞ」

 

「闇派閥か。そこで力を奮えと」

 

 五年前に最悪の時代と呼ばれた暗黒期は終わったが、闇派閥全てが消えたわけではない。今もこそこそと何かしらを企んでいるとはヘルメスから聞いている。

 そこに潰しても良いそこそこに強い練習台がいるのだ。それを糧にして何が悪い。

 強くなるついでに名前が売れて、ダンジョン攻略に注視できるのであればやらない理由がない。

 

 ゼウス・ヘラが台頭していた時は戦争遊戯一歩手前の沙汰なんていくらでもあった。目の前のオッタルもよくゼウス・ファミリアに襲撃を仕掛けていたものだ。そうやってランクアップした者が多かった時代を知っているからこそ、フィリオは躊躇わない。

 むしろ闇派閥を壊滅させればギルドからも民衆からも讃えられ、最強派閥を引きずり落とそうなんて考えるような輩を牽制できるのだ。フィリオが参戦する以上デメリットがなく、約束された成長の場を逃す意味はない。

 

「私がいる限り誰も死なんよ。好きに暴れて好きに強者を貪り尽くせ。そして新たな高みに至れ。それが私の唯一の願いだ」

 

「良いだろう。それに貴様が入るメリットはそれだけではあるまい?」

 

「もちろんだ。ゼウス・ファミリアで培ったダンジョンの知識、深層のマップ情報。そして君達がやっている団員同士での殺し合い。ああ、存分に殺したまえ。私が死の淵の一歩手前から必ず救い出してやる。もはや私に治せない傷はない」

 

「傷は、な。病は無理なのだろう?ザルドの毒もアルフィアの持病も、どうにもできなかったと聞く」

 

「ああ、今でも病は命を賭さねば治せん。だがそんな重病者がここにいるか?」

 

「いないな」

 

 フィリオがいくらランクアップしようと、病だけはスキルを使わなければ治すことができなかった。風邪や喘息程度ならステータスにも変化はないが、命に関わる病はフィリオもステータスを犠牲にしなければ治せない。

 レベル三だった頃は瀕死の傷にかなりのステータスを持っていかれたが、今のフィリオならステータスを持っていかれることはない。オッタルが瀕死になったらステータスを持っていかれるだろうが、それも精々3やそこらを持っていかれるだけ。

 自身が重傷になって治してもステータスの伸びはあまり変わらないことからそう判断していた。

 

「ゼウスとヘラの生き残りが正義を求めるのか。おかしな話だな」

 

「神は関係ない。私はただアルフィアに勝った事実を再認識してほしいだけだ。命を賭してまでして託したものが失われて、私はこのオラリオに価値などないと思っていたが。──まだ君がいる。君の率いる最強のファミリアが成長途中だ。ゼウスとヘラを喰らい、ザルドも喰らった最後の希望。君は頂点に立つ()()がある」

 

「良いだろう。オレはあのお方に、これ以上のない最強を捧げよう」

 

 オッタルのその宣言を聞き、フィリオは外で調べた情報とヘルメスに調べさせた情報を元に駆逐すべき害虫の在り処を共有する。

 真っ先に潰す対象は、オラリオの歓楽街を取り仕切るもう一人の女神の根城。

 

 

 ベルがしっかりと恩恵を貰って。

 ベッドの上にいるベルもフレイヤも一糸まとわぬ姿のまま、()()()が終わってからのお話(ピロートーク)が続いていた。

 

「じゃあベルはヘラに会ったことはないのね?」

 

「はい……。お母さんの主神だったとしか聞いてなくて。もしかしたら小さい時に会っていたのかもしれませんけど……」

 

「それにしては変なスキルが現れているわ。でもこれってどちらかというと……。ゼウスにも会ったことはないのよね?」

 

「はい。フィリオさんの元主神だとは聞いていますけど、フィリオさんは一人で村にやってきましたし、改宗する前はヘルメス様の眷属だったって……」

 

「そうなのよ。ヘルメスはゼウスの小間使いみたいなものだったけど、そのヘルメスにも会ったことはないのよね?」

 

「ないです。お爺ちゃんもお母さんから僕を任されただけみたいで」

 

 ベルが初めて会った神はフレイヤだと言う。この言葉はベルの主観では嘘ではなかった。神の持つ嘘を見抜く力でも真と出たためにフレイヤは余計に困惑する。

 フィリオが連れてきたヘラの最後の眷属。恩恵を持っていた眷属は五年前のアルフィアが最後だ。そのアルフィアが死に、ヘラも後を追うように天界へ去っていった。

 

 そして現れた人物がヘラの眷属の一人息子。恩恵を貰ったわけでもないただの少年。

 世界最強のヒーラーであるフィリオがわざわざ連れてきた、ヘラの眷属を名乗らせる子供。

 確かにこんなスキルがあれば将来有望だろう。それをフィリオは見抜いていたのか。フィリオならそれくらいできてもおかしくはないとフレイヤは納得する。

 アレをただの冒険者と同一視してはいけないのだ。

 

 その辺りの事情は、横に置くとする。

 フレイヤはベルを手に入れられた時点で満足していた。

 英雄を目指す強く気高き魂。純真無垢を示すような純白の色。可愛らしい顔立ちに素直な性格。一目見た時から欲しくて欲しくて仕方がなかった。フィリオが連れてきて、しかも自分のファミリアに入れようとすると知った時に軽く絶頂したほどだ。

 

 先程初めてを頂いた時のあまりのウブっぷりにフレイヤは鼻血が出るのを我慢していた。それくらいに何もかもがドストライク。

 色々とした後なのに今だに裸の自分の体を恥ずかしそうにチラチラと見ては真っ赤になっている子兎が愛おしくて堪らなかった。

 だから話もそこそこに自慢の豊かな胸でベルの頭を包み込む。

 

「ベル。明日からダンジョンに行くのでしょう?なら今日はゆっくり休みなさい。あなたはお母さんが早くから居なかったから、ちょっと寂しかったんじゃないかしら?私にならいくらでも甘えて良いのよ?お母さん扱いは嫌だけど」

 

「あっ……」

 

 ベルは包まれる柔らかさに。暖かさに。蕩けるような甘い声に。

 魅了には掛かっていないものの、自分の意思でフレイヤに惚れていた。

 

「あら?休むよりもシタイことがあるのね?」

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

「良いのよ、ベル。じゃあ今日はたっっぷり、愛し合いましょう……?」

 

 その日、女神の寝室では。

 女神と兎の艶声がずっとずっと、響いていた。

 

 

ベル・クラネル

LV.1

種族:ヒューマン

 

力 :I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力:I0

 

スキル

十二の栄光(ディア・ヘラクレス)

・勇猛

・神の試練を乗り越えた際、成長補正

 

 

フィリオ

LV.8

種族:??

 

力 :I22

耐久:E437

器用:C677

敏捷:S976

魔力:SS1124

 

神秘:S

魔導:D

治癒:S

魔防:E

耐異常:S

精癒:A

 

魔法

全て、あなたに捧げます(アウロラ)

・超短文詠唱

・魔力を込めた分だけ範囲、回復量上昇

 

スキル

この身を灰に、(メラキ・)地上に灯を(アガペー)】。

・回復魔法による効果増大。効果はスキル使用者のステータスに()()()

・殉じたステータスは回復魔法対象者の傷・病が()()()()()()()()()()()()()

 

【精霊の■■】

・精霊の力の行使

・自分の存在を偽る。ステータスを更新した存在のみ、自己の存在を開示可能。

 

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