東海道線「快速アクティー」廃止! 神奈川県の「支離滅裂」要望で鉄道弱体化? 鉄道行政のプロ不在が招いた悲劇を考える
京葉線廃止問題が浮き彫りにする鉄道行政の課題
交通行政には道路や土木計画の専門家が多くいても、鉄道行政に携わる人々のなかで、鉄道の線路配線や列車ダイヤといった運輸計画の本質的な議論を行える専門家は少ない。 【画像】「えぇぇぇ!」これがJR東日本の「平均年収」です! 画像で見る(15枚) そのため、自治体は 「鉄道に関する情報の非対称性」 によって、発言力を失っていると筆者(北村幸太郎、鉄道ジャーナリスト)は京葉線通勤快速廃止問題を通じて感じている。結果として、地域全体のグランドデザインを描き、鉄道事業者と意見交換を行うことができず(またはできていたとしても、本質的な議論には至っていない)、交通技術的な議論なしに要望をそのまま鉄道事業者に渡していることがよく見られる。このような状況を象徴する例が、2023年春に起こった 「東海道線快速アクティー廃止」 だと筆者は考えている。今回は、神奈川県の鉄道要望をまとめる団体とJRとのやり取りの流れ、および快速アクティー廃止後の状況について取り上げる。
議論なき鉄道要望の実態
「神奈川県鉄道輸送力増強促進会議」という団体を聞いたことがあるだろうか。この団体は行政の関与のもと、県内の各市町村からの要望を取りまとめ、県内の鉄道事業者へと伝える役割を担っている。しかし、その要望内容を見る限り、議論や精査が十分に行われているようには感じられない。むしろ、そのリストがそのまま鉄道事業者に渡されているだけのようにも見える。 この団体は快速アクティー廃止前、少なくとも2016年以降、毎年以下のような要望リストをJRに手渡していた。 ・快速アクティーの1時間あたりの本数の増加 ・快速アクティーの運行時間帯の拡大 ・快速アクティー等の辻堂駅への停車 ・快速アクティー等の大磯駅への停車(2019年追加) ・快速アクティー等の二宮駅への停車 ・快速アクティー等の鴨宮駅への停車 これらの要望は、快速アクティーの増発や運行時間帯の拡大を求めつつ、当時の快速アクティーの 「通過駅全駅に停車を求める」 という矛盾した内容だった。もしすべてが実現すれば、普通列車に変わってしまうだろう。なぜ、どれか1駅に絞るという議論がなかったのだろうか。