なくならない論文捏造 あなたはどのタイプ? 「研究公正」で考える

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瀬川茂子
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 捏造(ねつぞう)などの研究不正がなくならない。「不正はダメ」というだけの研究者教育では、限界があるのではないか。誠実で責任ある研究を行うことが、研究の質の向上に不可欠だととらえる「研究公正」という考え方が注目され、組織的な環境整備をめざす取り組みも始まっている。

 2月7日、大阪大の元助教による7本の論文の捏造・改ざんを同大調査委員会が認めたことが公表された。動機の一つは、任期付き教員で、次の職を探すにあたり、より質の高い雑誌に採択されるよう、望ましいデータを出したいと考えたことだという。

研究公正

研究者が守る倫理・規範の基本概念。信頼され、責任ある科学を実践するために、研究の提案、実行、評価において誠実に証明可能な方法を使うことなどがあげられる。

 昨年は産業技術総合研究所の上級主任研究員の42本の論文で捏造や改ざんが認められたと発表があった。調査報告によると、論文の数をかせぎたいという気持ちがあり、不正を繰り返すうちに、不正をしている認識が希薄になったとしている。

 いずれの研究者も研究倫理教育を受講しており、教育効果の限界を示した。

報告された不正は実態の一部?

 お茶の水女子大名誉教授の白楽ロックビルさんは、報告されている不正は実態の一部にすぎないとみる。大学・研究機関が研究不正行為を隠蔽(いんぺい)したり、告発しないよう説得したりする例を見聞してきた。調査したとしても甘い判定や、結果を公表しない例もある。事実や背景を詳細に把握しないと改善策を立てることはできない。

 そこで、白楽さんは疑惑を通報し、大学などの対応を公開している。

 研究不正の影響は大きい。科学への信頼を損なうだけでなく、研究費が無駄になる。不正調査にかかわる人の時間も奪われる。

 「不正した論文による評価で…

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この記事を書いた人
瀬川茂子
科学みらい部|大阪駐在
専門・関心分野
生命科学、災害、科学全般
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    三浦麻子
    (大阪大学大学院教授=社会心理学)
    2025年3月9日8時0分 投稿
    【視点】

    朝日新聞にしては珍しく?研究不正への対応の現在地を詳しめに比較的ご紹介くださった記事です.ちょっと見出しが内容と合っていない気がしますが… 阪大や産総研の事例にあるように,望ましいデータを得る/どんどん論文を書くが良いというわかりやすすぎ

    …続きを読む