米政府、コロンビア大への助成中止 リベラル偏向と主張
【ニューヨーク=西邨紘子】トランプ米政権は7日、米コロンビア大学に支払う総額4億ドル(約600億円)相当の契約や助成金を取り消すと発表した。ユダヤ人学生への嫌がらせなど、キャンパスでの反ユダヤ主義的活動に対する大学側の取り締まりが不十分なためだと説明した。
打ち切り措置は司法省や保健福祉省など4省庁が合同で発表した。コロンビア大に対し、以前からキャンパス内でのユダヤ人学生への「嫌がらせや暴力行為」に対する対策を求めてきたが、大学が「行動を起こさなかった」と強調。リンダ・マクマホン教育長官は「連邦政府の補助金を受け取るためには、連邦の差別禁止法を順守しなければならない」と述べた。
米政府によると、コロンビア大学は連邦政府から50億ドル以上を受け取る契約を持つ。政府は今後、追加の取り消しも検討するとしている。
コロンビア大の発表資料によると、2024年の収入は66億ドルだった。その約2割に当たる13億ドルを政府の助成金が占めており、打ち切りの影響は大きい。同大広報担当者は米メディアに対し「連邦政府の助成金を再開してもらうため、当局と協力していく」とコメントした。
トランプ大統領はかねて教育機関に対し、政権が推進する方針に従わなければ、連邦政府の助成を打ち切ると警告してきた。反ユダヤ主義的活動への取り締まり強化のほかに、人種に基づくプログラムなどDEI(多様性、公平性、包摂性)関連の取り組みも差別禁止法に反するとして排除を求めている。
有名校であるコロンビア大への助成打ち切りを「見せしめ」に、他の大学に圧力を強める狙いがある。
米国では、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘によって生じた人道危機を巡り、反イスラエル運動が活発化した。24年4月、コロンビア大のキャンパスで起こった学生の抗議活動は各地の大学で運動が広がる契機となった。
米国の保守派層はリベラル的価値観に偏った教育を進めているとして米大学の指針を問題視してきた。イスラエルへの抗議運動では、大学が学生の反ユダヤ主義的な言動を取り締まらなかったことがユダヤ系学生やスタッフへの嫌がらせ行為を広げたと主張。米連邦議会が調査に乗り出し、ハーバード大やペンシルベニア大、コロンビア大など米名門校の学長(当時)が相次ぎ辞任に追い込まれる事態となった。
ハーバード大学は1月、反ユダヤ主義的行為の取り締まりを強化する指針の採用を発表した。
2025年1月20日(現地時間)にドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に就任。政権の行方など最新ニュースや解説を掲載します。