AI使用による退学処分は全米初。
「試験の論文でAIを使った」として米ミネソタ大博士課程を退学処分になり学生ビザ剥奪となった研究助手のHaishan Yangさんが、「AIは使ってない」として大学側に処分撤回を求める訴えを起こしました。
教授陣が挙げたAI使用の証拠
問題の論文はYangさんが昨夏モロッコを旅行中、試験をリモートで受けたとき提出したもの。持ち時間8時間で3本の論文を書く課題が与えられ、参照していいのはノートとレポート、書籍で、AIは含まれていませんでした。
すると後日、論文の内容に「授業でカバーされていない概念が含まれていた」ことが4人の教授から成る審理会で問題になり、YangさんはAI使用を理由に大学を退学になってしまったのです!
AI使用を裏付ける証拠は次のとおり。
・この分野ではあまり使われないが、ChatGPTで生成した回答では頻出する略語が出てくる
・課題文をプロンプトとして使用してChatGPTから返ってきた回答と提出された論文を比べると、構成と内容が酷似している
これに対し、Yangさん側は「そんなのたまたまChatGPTが同じ資料を参照したから回答が似てしまっただけだろう」「そもそも似た回答が返ってくるようChatGPTを誘導した教授側の姿勢にも問題がある」と疑惑を真っ向から否定しているというわけです。
プロンプトを消し忘れたチョンボ1回
ただYangさんには1年前にも類似のケースがありました。宿題にうっかり「もっと砕けた文体に書き直して。AIではなく留学生が書いたみたいな文章に」というプロンプトを削除し忘れて提出しちゃったんですね。そのときは「英語のチェックで使っただけで、回答そのものは自分で書いた」という主張が通って警告だけで済んで、それ以上の処分は免れたんですが…。
生意気と教授に干されていた
さらにここに至るまでには別の伏線もあって、Yangさんは「成果の上がらない扱いにくい助手だとして大学から奨学金をカットされ、大学院ディレクターから大学を辞めるよう圧力を受けていた」ようなのです。そちらの件はYangさん側の抗議が認められ、大学側から奨学金停止の撤回と謝罪を引き出すことができたのですが、このことで大学側との関係はこじれにこじれて、アドバイザーもドン引きするくらい険悪化していた、その矢先のAI退学事件というわけです。
退学となって留学が途中で中断となったYangさんではありますが、KARE11のニュースに出て「訴状を書くときはChatGPT使ったよ」と言っています…。
まあ、大学でAIが使いまくられている今、教授が本気出して証拠探せば埃の立たない学生はいないんじゃないかな…という怖さは感じますよね。
AI使用が誤認されたテキサスM&A大学の場合
AIのカンニングといえば、テキサスM&A大学では1年前にAI使用のカンニングが大量に疑われたものの、事実無根であることがわかって謝った例もありました。
こちらは教授がRedditの掲示板でバズった「AIの回答完コピのカンニングを洗い出す方法」を実践したのが発端です。
「学生の回答をChatGPTに読ませると、ChatGPT生成コンテンツかどうか教えてくれるよ」とだれかが書いてるのを読んで、あらゆる提出論文を読み込ませてチェックしたら、あれもこれも全部ChatGPTが生成したとChatGPTが言うので、教授、みんなに「0点」つけたんです。でも、よくよく調べてみたら、あれもこれも全部ハルシネーションだったってオチでした。
原作者が完コピを疑われる危うさも
ChatGPTといえば、無断で著作物を読み込ませてトレーニングした件で、NY Timesと米大手新聞8社に著作権侵害で訴えられてる最中。カンニングしたのは自分(AI)なのに、原作者のほうがカンニングしたって言い出しかねない危うさも内包しています。
AIのカンニングは疑うほうも疑われるほうも立証がすごくたいへんですね。コロッと騙されないようにしなくっちゃ…。
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