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シカゴハウスのコンピレーション(長文記事)

この前から書いているハウス関連の記事の続き。

このあたりの曲は主にTraxやD.J. Internationalみたいなシカゴのローカルレーベルから12インチ盤メインでリリースされているから、昔からCD化の際にはコンピレーション形式の販売がほとんどで、僕自身もそうしたコンピレーションとディスクガイドで勉強しながら色々聴いてきた。

ただコンピレーションの種類が多すぎるから、聴きはじめの人だとどこから手を付ければいいのか分からないという人も少なくないと思う。

そこで今回は自分が聴いてきたコンピの中で、これはオススメというものをまとめて紹介してみよう。あんまり他にまとめてくれてるようなウェブサイトとかないみたいだしね。

結構長文の記事になるから、興味がない人はスルー推奨。目次を読んで気になる人だけ読んでくれればよいです(笑)

ピート・トングが始めたHouse Sound of Chicagoシリーズ

まず始めに紹介するのは、シカゴハウスが80年代後半にはじめてヨーロッパへ紹介された時期に作られたもので、イギリス人DJのピート・トングがTraxとD.J. Internationalから楽曲の使用権を買い取って1986年にLondon Recordsなどからリリースしたコンピシリーズ。

シリーズには単体作品もいろいろあって当時は国内盤も発売されていたみたいだけど、今手に入れるのであれば、本命はドイツのBCMからリリースされたHISTORY OF THE HOUSE SOUND OF CHICAGOというセットだと思う。

こちらは15枚組(!)の超大型ボックスセットと3枚組の抜粋版があって、僕が持っているのは3枚組でコンパクトにまとまっている方。

収録曲のメインどころはこの後で紹介する2010年代以降のコンピにも入っていて、そちらはデジタルリマスタリングされた音源が入ってるんだけれど、このセットにボーナストラックとして収録されているメガミックス3曲は近年の作品では聴くことができない。

まぁたぶん著作権の絡みなんだろうと思うけど、このメガミックスは当時の雰囲気をそのままパッケージしたものになってるから、これをまとめてCDで聴けるという意味で今も価値があるシリーズだと思う。

他にもセローンのSupernatureのシカゴハウス風リミックスとか、近年のリイシューではスルーされがちな曲が入っているのもポイント高いかな。

ビル・ブルースター選曲のSOURCESシリーズ

次に紹介するのは、「そして、みんなクレイジーになっていく」の著者として知られるイギリス人DJのビル・ブルースターがHarmlessレーベルから2015年にリリースしたアンダーグラウンドディスコ〜シカゴハウスのレーベルコンピシリーズ。

コンピはそれぞれ3枚組構成で、収録曲が当時の12インチバージョンそのままで収録されていることがシリーズの特徴になってる。

シカゴハウス系としてはTrax、D.J. International、それからD.J. International傘下のUndergroundの3セットがリリースされてるんだけど、Trax以外は他にレーベルコンピがほとんどないから、このコンピの存在は貴重。

一応P-VineからもD.J. International / Undergroundというくくりで音源をまとめた1枚モノのコンピが出てるけれど、そもそも収録曲が少ない+盤起こし収録と思われる曲があったりとイマイチなので、素直にこちらのHarmless盤を探した方が良いと思う。

主要曲は全て網羅してる上に、デジタルではこれでしか聴けない曲やバージョンもあるので、資料的価値も高いんじゃないかな。

D.J. Internationalならタイリー・クーパーのThe House Music Is My Life (Deep House Mix)とか、同じくタイリーがリミックスしたスティール・グレイのDo You Want To Dance、Undergroundならハウス・ファミリーによるThe King Of Houseあたりは多分このシリーズ以外ではデジタル化されていないはず。

唯一残念なのはロリータ・ハロウェイのSo Sweetがシカゴハウス・バージョンじゃなく、オリジナルのガレージ・バージョンで収録されていることくらいかな。シカゴハウス・バージョンは一応先ほどのP-Vineの方に入ってるけど、これが正に盤起こしと思われ音が悪いからね。

ちなみにTraxについてはこのあとで紹介するボムの方が強力で、そっちを抑えられればこのシリーズは買う必要はないのでここでは割愛。

テリー・ファーリーが手がけるACIDシリーズ

こちらは前のビル・ブルースターのシリーズの少し前に同じくHarmlessからリリースされたものでテリー・ファリーの選曲によるもの。

タイトルにはアシッドが前面に押し出されてるけど、副題はDEFINITIVE ACID AND DEEP HOUSEとなっていて、実際にはアシッド以外の曲も多数収録。こちらは2作品各5枚組の合計10枚で、収録曲は85〜91年の初期ハウス。一部デトロイトやUKの曲もあったりするけど、基本的にはシカゴの曲が中心の構成になってる。

さっきのビル・ブルースターのコンピと選曲被りも多いんだけれど、こっちはレーベルコンピじゃないからTraxやD.J.International以外のマイナーレーベルの曲なんかからも一部選曲されているのが特徴。

たとえばテン・シティ前身のラグタイムによるI Can't Stay Awayだったりナイト・ライターズによるフランキー・ナックルズ絡みのLet The Music (Use You)みたいな美味しいところもしっかり入ってる。

当然デジタルではこれでしか聴けない音源もあって、Chicago Connectionから出てるリブラ・リブラのI Like ItのDub Mixや、D.J. Internationalからのリリースなのに何故かビル・ブルースターのコンピではスルーされたパリス・ブライトレッジのソロ名義曲Learn To Loveあたりはかなり良い。

しれっと入ってるけどモデル500(=ホアン・アトキンズ)によるThe Chaseのデリック・メイ・バージョンとかも他にデジタル化音源ないんじゃないかと思う。

マニアックな曲がありつつも、いわゆる定番曲もかなり抑えてる好選曲なので、初心者からマニアまで広く勧められる作品と言えるかもしれない。

ジェロム・デラージのStill Musicから発売されたシカゴハウスコンピ

先ほどまで紹介していたTraxやD.J. Internationalから更に踏み込んで、マニアックなシカゴ・ハウスの世界に踏み込みたい人にお勧めなのが、ジェロム・デラージが自身のレーベルStill Musicから出しているこの3枚。

122 BPMがChicago ConnectionとMitchbal、Kill Yourself DancingがSunset、Bang The Box!がAKA Dancingとそれぞれマイナーなレーベルのコンピレーションになっていて、シカゴハウス黎明期~全盛期にかけてのよりマニアックな曲を楽しむことが出来るようになっている。

Birth Of House Musicと大きくフィーチャーされてるZ Factorの曲は後にジェシー・サンダースの自伝発売に合わせてCD化されたので希少性が薄くなってしまったけれど、122BPMに入っているデズ&グラントのThe Chicago FireやKill Yourself Dancingに入っているカイサのTry, Try, Againなど、やはりここでしかデジタル化されていない佳曲が収録されているので、好きな人は一聴の価値ありだと思う。

あいにく122BPMは未配信だけれど、Kill Yourself DancingとBang The Box!に関してはitunesを始めとしたデジタル配信もあるので、そっちで聴いてみてもいいかもしれない。

ちなみに一部の曲はテリー・ファリ―のコンピと被ってたりするけれど、例えばリブラ・リブラのI Like Itにしても、それぞれ別ミックスが収録されてたりもするので、被り感はそれほどない印象。

Harmlessレーベルの大作Traxbox

そして最後に紹介するのがこれ。ビル・ブルースターやテリー・ファリ―の作品と同じく英Harmlessから2013年に発売された、脅威のCD16枚組ボックスセット。

記念すべきレーベル第一弾となるカタログ番号TX101からTX179まで、当時欠番となっていたTX143とTX161~163を除きAB面フルサイズで全曲収録というとんでもなく豪華なセットで、後にも先にもシカゴハウス界隈ではこれより豪華なものがリリースされることはないはず。

おまけに全曲デジタルリマスタリング済み。オリジナルのTraxレーベルは盤質が悪いことで有名なので、クリアな音質で当時の音源すべてが聴けるのは奇跡みたいなもの。

なにせ全曲収録なのでメジャーどころはもちろん、マイナー曲やB面に入ってる微妙なミックス違いまでフォローされてるのが素晴らしい。今となってはかなりの曲が個別にデジタル配信されているものの、発売時系列に合わせ網羅的に聴けるという点ではかなり価値があるし、勉強にもなるかと。

ちなみにTraxのこのTX100番台のシリーズはDiscog情報によると、この後も205番まで続くようだけれど、この頃になるとUK作品も多くなってくるから、シカゴハウスという観点で言うと正直聴くべき盤はそれほど多くない。

ただTX202だけはフランキー・ナックルズ名義のYour Love / You Got The Love (Remix)が入っていてるから、これだけはチェックしても良いかも。これはイギリスでブートレグとして発売されたソース feat. キャンディ・ステイトンのYou Got The Loveとジェイミー・プリンシプルのYour Loveをブレンド曲の正規盤にあたるもの。一応ブートそのままではなく、アイデアだけ拝借しながらボーカルもオケも録りなおしてるようだ。

もっとも正規盤とは言ってもTraxだし、実際にはフランキーは制作に絡んでないような気もするけどね。元々のYour Loveだって勝手にリリースしちゃってるくらいだしさ(笑)

他にはラリー・ハードのCan You Feel Itのキング牧師演説ブレンドやチャック・ロバーツ演説ブレンドも未収録。ただ、これらは実はもともとTraxからではなくUKのJack TraxからDesireから出てた曲だったりもするので、このTraxboxには入ってない。

デジタルだと日本クラウンから2000年に出たラリー・ハードの編集盤に入ってるから、気になる人はそっちを手に入れるといいと思う。


ちなみに以前は酷い音質の音源がTraxからitunesにアップされてたんだけれど、数年前の訴訟でラリー・ハードとロバート・オーウェンがTraxに勝訴したからか、今は配信から消されてるみたいだ。

まぁそんな例外はありつつも、Traxレーベル初のメインどころの曲の95%くらいはこのボックスセットがあれば全て聴けるから、山ほどあるTrax関連のCDはこれがあれば他は買わなくて大丈夫。


さて、そんな感じで今回は久しぶりに長文でシカゴハウス関連のコンピの紹介をしてみた。

あいにくどのコンピも発売されたのが10年以上前で、デジタル配信でもあるStill Music以外はアマゾンで売り切れちゃってたり、価格が高騰してしまってたりするけれど、逆に言えばここに紹介したボックスを全て揃えればシー・シー・ロジャースやテン・シティみたいにメジャーレーベルから出てる曲以外の初期シカゴ音源はかなり広い範囲でカバーできると思うから、好きなら思い切って集めてみるのも悪くないと思う。

あと不足してる部分だとDance Maniaレーベル関係くらいかな。これについてはStrutから2014年に出た↓の2枚組コンピでフォロー可能。これもCDは高くなっちゃってるけれど配信があるから、興味のわいた人はここから聞いてみてもいいかもしれない。

これらのコンピを中心に選曲したコンピレーションを今作っている最中で、もうじき完成予定なので、出来たら久しぶりにここにもアップするつもり。


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