●かんべえの不規則発言



2025年3月 






<3月2日>(日)

〇この週末は何だか力が入らない。土曜の朝に報じられた、ワシントンの「トランプ劇場」にいささか唖然としてしまったのである。あれではゼレンスキーが気の毒過ぎる。というか、やっぱりトランプ/ヴァンスコンビはとんでもない。

〇そしてそのとんでもないコンビが選ばれたのは、昨年の米大統領選挙という「民意」による。それがどんなに馬鹿げたことであっても、民主主義の結果だと言われればその通りである。その後にどんな愚行が続いても、文句のつけようがない。

〇たまたま土曜朝にアップされた拙稿が下記の通りであった。タイミングがよかったのか、ありがたいことに拙稿にしてはよく読まれている。


●ついにアメリカと欧州の「文化大戦争」が始まった ~ヴァンス副大統領演説の衝撃度は計り知れない


〇最後の部分で以下のように書いている。いや、ホントにこの国が「関税」の心配ばかりしているのは、どこかピントがずれているんじゃないかと思えてなりません。もっとほかに心配することがあるでしょうが。


ということで、今の世界では信じられないような事態が進行中である。われわれは今まで「欧米」とひとくくりにしていたけれども、「米と欧」が反目し合う時代が始まっている。そんな中で、トランプ大統領がウクライナ戦争への調停工作に着手している。

日本では「トランプ関税」の話ばかりが飛び交っている。所詮はお金で済むことで悩んでいるのだから、思えば贅沢な話かもしれない。いや、「明日はわが身」かもしれないのだけれども


<3月3日>(月)

〇トランプvs.ゼレンスキーの口論を「全部」見て、ああだこうだ、ああすりゃよかったのに、などと細かいことを論評している人が居る。あほか、と言いたい。

〇攻め込まれて、やむなく戦っている国の首脳に対し、自分たちの軍事援助に対する感謝の念が足りない、などと説教するような国だったのか、アメリカは。

〇ホワイトハウスに招かれたら、戦時の宰相であってもスーツを着ていかないとマナーにもとる、というほど格式の高い国だったのか、アメリカは。

〇大統領の機嫌を損ねたから援助を止められても仕方がない、などというくらいトップがお偉い国だったのか、アメリカは。大統領は専制君主ではない。任期が終わればタダの人になる。それがジョージ・ワシントン以来の矜持ではなかったのか。

〇こんな言葉は英語にはないけれども、「義を見てなさざるは勇なきなり」という心意気を持っていたのがアメリカではなかったのか。手ぶらで帰っていくゼレンスキーに対し、「済まない!」と感じるのが本来のアメリカ人ではないのか。

〇それから代償として地下資源を寄こさないと、これ以上は支援を続けられないなんて、どの口が言っているのか。まったくもう情けない。

〇前にも書いたと思うけど、レアアースって別にレアな存在じゃないんです。必要な量がレアなだけで、買えないほど高い値段になったら、ユーザーが代替手段を開発しちゃうまでの哀れな運命なんです。だからレアアースでがっぽり儲ける、なんてことは本来が不可能なんです。

〇そんなこともわかってない人が、アメリカの国益を第一に考えているとは片腹痛い。「MAGA」という掛け声の下で、どんどん卑小になっていく旧・超大国の姿は見るに忍びないものがあります。


<3月4日>(火)

〇驚きましたが、トランプさん、明日からカナダ、メキシコ関税をやっちゃうんですね。USMCAにはちゃんと「安全保障上の問題が生じた際に、関税をかけてもいい」という条項があるので、例のフェンタニルの流入というネタを使って発動するのでしょう。

〇ただし、これをやるとアメリカの自動車会社が最大の被害者になると思います。北米内でサプライチェーンを作っていますから。それも部品がカナダ、米国、メキシコ内で移動するので、下手をすると往復ビンタで関税を課せられてしまう。彼らはトランプ政権に対して思い切りロビイングしたはずなんですが、うまく行かなかったようです。

〇トランプさんは1月31日に対カナダ・メキシコ関税を言い出し、2月4日から25%だと宣告した。ところが2月3日になって、「発動の1か月延長」を宣告した。ああ、こりゃディールが目的なんだな、と多くの人が考えた。しかしそこはトランプさんのことなので、1か月後にどうするかは決めていなかった。その辺は常に出たとこ勝負。そして3月になった時点で、やっぱりゴーサインを出した。

〇なんで予定を変更したのか。3月4日には議会合同演説が行われるので、そこで説明してくれるのでしょう。日本時間では明日の午前11時からになります。一般教書演説が行われるのは火曜日が多いので、日程的には自然な選択です。ただし3月4日というのは昔々の大統領就任式の日程(今は1月20日)でした。それにかこつけて、何か言いたいのかもしれません。

〇ただし関税を上げた結果がどうなるかといえば、アメリカ経済が全身で受け止めることになるでしょう。今日見たらアトランタ連銀の「GDP Now」では、1-3月期GDP成長率が▲2.8%になっていた。ちょっと前まではプラスだったはずなんですが。関税を上げれば消費は落ち込むし、景気が悪くなるのは当然の理というもの。はてさて、どんなことになりますか。迷惑な話ですけど、返り血を浴びるまではこのまま行くのでしょうね。

〇明日は中国では全人代が始まるし、日銀総裁と副総裁の講演会が同時にあったりもする。なかなかに大変な一日になりそうです。不肖かんべえは「WBS」に登場いたします。


<3月5日>(水)

〇今日のトランプ演説はとにかく長かった。日本時間の午前11時15分ごろに始まって、正午を過ぎても終わらないから、「あれっ?これは史上最長を狙っているのでは?」と思ったら、本当に100分もやっていた。お陰で昼飯を食うのが午後1時過ぎになりました。

〇ドナルド・トランプおじいちゃん78歳。最後まで息切れもしないし、滑舌も悪くないし、途中で水も飲まずに完走してしまう。この間、立ったり座ったりしている後方のヴァンス副大統領とジョンソン下院議長が、まるでコメディアンのように見える。

〇それにしてもトランプさん、徹頭徹尾、民主党をコケにしている。民主党側も最初からけんか腰で、途中で退場を命じられたり、プラカードを掲げて抗議したり、途中で帰ってしまったりする。全体のスタンディングオベーションは1回も無し。長年見ているけど、こういうこともめずらしい。

〇あの「小児がんのサバイバーで、警官になるのが夢の13歳の少年」が出てきたときには、「ここぐらいは立って拍手してやれよ、民主党」と思ったけど、ダメだったですなあ。「警官」ってのが気に障ったんでしょうか。

〇それにしてもトランプさんの理屈はとんでもない。「関税を上げたお陰でTSMCが対米投資を決めてくれた。それに比べればCHIPS法なんて馬鹿らしい。わざわざ補助金をつけて工場を作ってもらっている。関税さえ上げれば、彼らは勝手に投資してくれるのに」。おいおい、TSMCのはらわたが煮えくり返っていることに、なぜ気がつかないのか。

〇あいかわらずトランプさんらしいのは、「ゼレンスキーから手紙が来た」と明かしていること。なんだ、やっぱりディールかよ。朝令暮改が多過ぎて、ついていけません。

〇ところでピクテ・ジャパンさんのユーチューブ(前編:米国政治)に登場しました。これ、結構面白いんじゃないかと思います。糸島さんと掛け合いをやってます。


<3月7日>(金)

ピクテ・ジャパンさんのユーチューブ(後編:日本政治)もアップされました。よかったら見てやってくださいまし。

〇こうしてみると、今週は楽な方だと思っていたのだが、WBSには出たし、溜池通信も書いたし、いろいろ大変だったのではないか。よく頑張ったぞ、俺。

〇今月は月末に締め切り日が集中していて、来週は少ない。だったら今のうちに書き溜めておけばいいのであるが、それがなかなかそうはいかない。難しいのである。








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編集者敬白




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by Kanbei (Tatsuhiko Yoshizaki)