総額3億8000万円をかけて起業家育成を目指す東京都と法政大の共同事業が、2025年度からの本格実施を前に中止となった。事業に絡む研究資金の不正使用が疑われるため継続が困難になったとして、大学側が昨年末に辞退を申し出た。だが、事業担当の大学教授は不正を否定し、中止決定の経緯を明らかにするよう求める異例の事態となっている。(原田遼、押川恵理子)
中止となった事業は「東京の未来を拓(ひら)く起業家教育循環システム」。2024~2026年度、小中高生向けに起業家教育を実施し、メンター(助言者役)の大学生も教えながら成長する仕組みをつくる計画だった。
◆大学は「内容は調査中で言えない」
2024年度は予算3000万円で、教授らが調査研究を進め、2025年度に起業のイベントを開く施設のオープンを予定していた。都と大学との協定では、都が事業を実施して、大学が調査や研究、助言を担い、事業費は都が負担すると定めている。
大学広報課は取材に「内部監査機関の調査で、教授に事業に絡む研究資金不正の疑いが強まった。内容は調査中で言えない。確定次第、ホームページなどで公表する」と答えた。支出済みの事業費は大学が全額負担するという。
◆教授側は「不正利用の事実はない」と声明
一方、教授側は2月26日に報道機関に声明を発表。「研究費の不正利用の事実はない。定期的に都に事業報告をし、これまで研究資金の使途について指摘もなかった」と反論した。教授の代理人の福田健治弁護士によると、事業打ち合わせのために教授は昨年8月以降、都の担当課長に面会を求めるメールを複数回送ったが、返答がなかった。
その後、都の担当部長を介して同11月の面会が設定されたが、直前でキャンセルされた。教授は声明で「都が夏以降、協議に応じず、最終的に事前に申し出なく、都と大学が合意を解約したことは研究の自由を阻害する。極めて遺憾」としている。
◆東京都は「大学とは適切に協議」
今回の事業を所管する都スタートアップ・国際金融都市戦略室は「不正の内容は詳細に把握していない」と回答。連絡の打ち切りについては「教授からのメールはイベントの案内に関するもので、すべては返していなかった。面会のキャンセルは大学から『不正の調査をしており、教授との接触を控えてほしい』と伝えられたため」と説明した。問題は2月26、28日の都議会で取り上げられ、都幹部は「大学とは適切に協議している」などと答弁した。
今回の事業は、都が大学研究者からアイデアを募り、事前審査や都民のインターネット投票で選ばれた事業に予算を付ける「事業提案制度」で2023年度に採択された。この制度は小池百合子知事の肝いりで2017年度に始まった。
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