経団連次期会長に日本生命の筒井氏、十倉会長が正式表明
経団連の十倉雅和会長は17日、自らの後任に副会長の筒井義信・日本生命保険会長を起用する方針を正式に表明した。成長と分配の好循環の実現を託す。金融機関から経団連会長を選ぶのは初めてで、新たな経団連像を映し出す。
十倉氏は「公平・公正で持続可能な社会を目指して経団連活動を推進いただける方という観点から、最終的に筒井氏にお願いすることになった」と述べた。
筒井氏について「驚くほど同じ考えだなということが何度かあった」と評した。「社会課題に偏ることなく目を配らせ、中長期的な視点で解決に取り組める人」を選んだと説明した。都内で記者団の取材に答えた。
これまでは製造業の出身者が会長に就くことが多かったが、十倉氏は「製造業・非製造業はあまり意識せず、人物本位で選んだ」と語った。2025年1月14日の会長・副会長会議で内定し、5月29日の定時総会で筒井氏が新会長になる。
筒井氏は17日夕、取材に応じ「機関投資家としての経験を社会性の視座というベースのなかで生かしていきたい」と述べた。
十倉氏が21年6月に経団連会長になって以来、一貫して掲げてきたキーワードは「社会性の視座」だ。かつてノーベル経済学賞に近いと目された経済学者の故・宇沢弘文氏の市場経済のなかに社会性の視点を入れる考え方が経団連に必要だと訴えてきた。
それに基づいて40年に目指すべき姿を示したのが9日に発表した政策提言「フューチャー・デザイン2040」だった。現役世代の社会保険料の負担増を抑える税と社会保障の一体改革や原子力を最大限活用するエネルギー政策を柱にした十倉氏の集大成だ。
デフレから完全脱却し「成長と分配の好循環」を軌道にのせるには社会保障改革やエネルギー政策を見渡す、個別の産業政策にとどまらない視野が要る。そうした識見を兼ね備え、十倉体制での基本的な政策を継承できると評価したのが筒井氏だった。
かつてのように自動車などの製造業が輸出で稼ぐ時代から、サービス業やコンテンツ産業、金融業など幅広い業種が日本経済の柱になる時代へと変わった。製造業の生産拠点も国内から海外に移った。製造業偏重ではない経団連像を映す人事になった。
筒井氏は生保の経営者として税や社会保障に詳しいだけでなく、機関投資家として様々な企業に目配りし、全国の営業拠点を通じて地方経済にも精通してきた。
金融機関は政官との太いパイプを生かし、これまで様々な要望や提言を政府に伝えてきた。
日本生命は活動を支えるスタッフも充実しており、三笠裕司副社長が25年5月から関西経済同友会の代表幹事となることも内定した。財界活動の経験は豊富だが、経団連の会長ポストは初めて。社内からは「大変な名誉だ」との声も出ている。
銀行や保険会社は幅広い企業と取引がある一方、金融庁から免許を受けて業務を行っている立場でもある。
政府の影響を受けやすいとの見方から経済団体のトップにふさわしくないとの指摘もあったが、19年に経済同友会の代表幹事に桜田謙悟氏(当時はSOMPOホールディングス社長)が就任。個人の資格で参加する同友会とは単純に比べられないが、経済団体のトップに金融機関の出身者が就く前例はできていた。
筒井氏は神戸市出身で1977年に京大経済学部を卒業後、日本生命に入った。旧大蔵省や業界団体との交渉役を担う企画・調査畑を中心に歩み、2011年に社長に就任した。18年に会長になった。23年から経団連副会長を務め、24年にはGX(グリーントランスフォーメーション)推進機構の初代理事長に就任した。
現在の経団連副会長には有力な会長候補が多くいた。十倉氏は「人格、識見とも大変優れた経営者の方々がそろっているので非常に悩んだ」と話した。
かつて経団連会長を輩出した企業では日立製作所の東原敏昭会長や日本製鉄の橋本英二会長がいた。両氏はいずれも周囲に経団連会長就任への意欲はないと漏らしていた。橋本氏は米鉄鋼大手USスチールの巨額買収計画が難航している事情もあった。
ソニーグループの吉田憲一郎会長も有望視されたが、24年に経団連副会長になったばかりで時期尚早との見方が強かった。NTTの澤田純会長も経営手腕に定評があったが、国が筆頭株主の企業が民間の経済団体を率いることになる点がネックになった。
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