フレディと2人きりになっていたら……
本当のことをいえば、僕はクイーンのことをそれほど好きではなかったし、水戸でレコード店をやっていたとき、やたらに売れるグループだなとは思っていましたが、それほど彼らの曲にくわしくなかったんですよ。
それでとっさに、フレディが尊敬しているエルビス・プレスリーの「好きにならずにいられない」をリクエストしたのです。少し高くなったステージで、フレディはじっと僕の顔を見て、思い入れたっぷりに歌ってくれました。
その後、イギリス人二人のリクエストがあって、それが終わるとフレディから「ホーム・ツアーをしたい」と誘われました。家の中を案内したいというわけです。その様子を見ていた美佐さんが、ダーっと駆け寄ってきた。「ダメよ、ひとりで行っちゃ」そう言って付いてきたのです。まったく意味がわかりませんでした。
それで三人で家の中を見て回ったのですが、バスルームの中は三方が鏡張りになっていて、正直悪趣味でした。このときの髭面のフレディの、ニヤッとした顔は忘れられません。
それでクイーンを僕が日本に呼べたかって?それは実現しませんでした。なぜなら、91年11月に、フレディはエイズが原因で亡くなってしまったからです。僕らが観たウエンブリーのコンサートが最後のツアーになったんですね。それから体調を崩すようになって歌えなくなったのです。後年、渡辺美佐さんから言われたものです。
「あのとき、あの部屋にふたりで行っていたら、宮崎君もこの世にいなかったわよ」